3 使徒教父の時代

紀元1世紀が終わるころには、イエスと直接交わった弟子たちは姿を消し、教 会は第2世代目の時代に入る。各地の教会共同体の指導者に立てられた人々は、 最初の使徒たちの按手によって信仰とあかしを受け継ぎ、信者の群れを導いてい った。使徒教父と呼ばれる彼らの代表的な人物として、ローマのクレメンス、ア ンチオケのイグナチオ、スミルナのポリカルポなどの名があげられる。またこの 時期、信仰共同体のなかには司教、司祭、助祭など種々の奉仕職が分化し、定着 しつつあった。

2世紀半ばまでには、キリスト教固有の信仰生活の形が整えられた。第一にキ リストの復活の日(日曜日)は主日と呼ばれ、その日には復活を記念して感謝の 祭儀が行われた。そこでは、旧約聖書や当時編集されつつあった「イエス語録」 、使徒たちの手紙が朗読され、会衆は賛美の歌を歌い、司祭の説教に耳を傾けた 。さらに、キリストの最後の晩餐が十字架のあがないと復活の記念として祝われ た。第二に信者の群れに加わるしるしとして洗礼が定められたが、それに先立っ て洗礼志願者には一定期問の信仰教育がほどこされた。第三にキリスト者たちは 、当時の社会の腐敗から身を清く保ち、物心両面にわたって互いに助け合い、キ リストにおける兄弟的な交わりを深めた。しかし、こうした生き方は周囲に秘密 結社的な印象を与え、人々の敵意と警戒心を招く結果になったことも見逃せない 。