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歩速の選択

今回、いよいよ3部作(になってしまいました・・・)の完結編(笑)
広げた風呂敷は畳めたのでしょうか?
何しろ 見切り発車で開始した素人の初書き超大作です。
温かい目で見守ってくださいね。(^^;

このお話は
「ガールズ・トーク」
「心を占めるもの」
に続く3本目になります。
通して見ていただけますと嬉しいです。

では 以下からが本文です。
ご興味を持ってくださったかたへささげます(^^)

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歩速の選択
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このままじっとしていると泣きそうな気がしたから。
野明はそっとハンドバックを引き寄せ緑に「悪いけど先に帰らせて」と小声で告げた。
緑は野明と遊馬を等分に見やって眉根を顰める。「ごめん・・・」と申し訳なさそうに続けた「こんなつもりじゃなかったのよ」
「わかってる、大丈夫だよ」
野明が入り口の障子戸をそっと開ける。
部屋を出ようとすると、後ろから肩を捕まれた。
「何だよ、帰るのか?」先刻までの穏やかな顔ではなくて ちょっと不貞腐れたような顔をしていた。
「俺が来たからか?」小さな声で畳み掛けるみたいに耳元で話す。
トクン・・と心臓が跳ねる気がした。
「違う 遊馬が来たからじゃないよ」
「じゃ なんだよ」
「遊馬の所為じゃない。でも遊馬 怒ってるでしょう?先刻だって黙って向こうに行っちゃうし。」
野明は俯いたまま目線を合わさずに話し、話しているうちに涙がぼろぼろと落ちてきた。
「あ? あー・あれはさ・・お前の所為ってばかりじゃないし、ちょっと気が立ってたから・・・て・・・おい、泣くなよ?」
遊馬が来てくれた、気に掛けていてくれた、それだけで嬉しくて涙が出てきた。
遊馬は困った様に野明の顔を覗き込むと大きく息を吐いて「当たって 悪かったよ」といって髪をくしゃくしゃっと撫でる。
心地のいい大きな手、その感触が気持ちよくて思わず目を瞑る。
「あんまり泣くと化粧落ちるぞ」
「うん、そうだね」
化粧しているのにも気づいてくれてたんだ、と思うと嬉しかった。「取り敢えず 席に戻ろうぜ?」促されて席まで戻る。
目が合うと緑はほっとした顔をして「折角のお化粧が台無しね」といってバッグを引き寄せ直してあげるからいらっしゃい、と私の手を引いて立ち上がった。

パウダールームで緑が手際よく化粧を直す。
「さてと こんなもんかな」そういうと自分もリップを少し塗りなおして道具を仕舞う。
「ところでさ、篠原君 何だって?」
「何って 何が?」
「いろいろ。何であんなに機嫌が悪かったのかとか、その格好についてとかさ」
「なんにも。」
「なんにも?」
「うん。私が1人で泣いて有耶無耶になっちゃった」
「なんだかなぁ・・・」緑は不満気に頬を膨らませた。
「でも 一つわかった」野明はにっこり笑って言った。「遊馬って特別なんだなぁって」
緑は小さく肩を竦めると「今頃 何言ってんだか・・・」と大きく息を吐いた。

個室に戻ると座敷の様子が一変していた。まず 遊馬がさっき武田が座っていた野明の隣席にいた。
遊馬は仏頂面で胡坐をかき頬杖をついていて、女性陣二人はくすくす笑いながら顔を見合わせている。
残る4人の男性陣はニヤニヤと人の悪い笑みを浮かべて遊馬を見ていた。
事情が飲み込めない 緑と野明は入り口で立ち止まって「どうしたのよ?」と問いかけたが皆が一様に顔を見合わせてくすくす笑うだけで、遊馬も「何にもねぇよ」とぶすっとした様子で答えるだけだった。
なんだか妙な具合だなぁと思いつつ遊馬の隣に野明、その横に緑が座る。
こういう時の遊馬に何を聞いても無駄なのは良くわかっていたので野明は正面に座る女性陣に話を振ることにした。
「ね 何かあったの?」
「それがね・・・」二人で顔を見合わせてくすくすっと笑い話し出そうとすると、遊馬が鋭い視線を投げてそれを制する。
それを受けて二人は肩を震わせて笑いを堪える。「・・・話しちゃ駄目だって」余程 面白いことがあったんだろう。
今度は緑が男性陣に物問いた気な目線を送ると武田と小池がふき出すように笑い出した。
するとそれまで我慢していた女性陣と残り二人の男性陣も盛大に笑い出し、女性二人にいたっては「篠原君 可愛いわ~」「ん~ 頑張れぇ!」といって机越しにぽんぽんっと頭を叩いたりし始めた。
遊馬は体を震わせて黙っていたが遂に、「勘弁してくれよ」と言って机に突っ伏してしまった。

「遊馬ぁ?」顔を覗き込むようにして野明が声を掛ける。
「・・・なんだよ・・・」脱力したような声が返ってくる。
「どうしたのさ?」
「・・・・お前が悪いんだからな」そういうとフイッとそっぽ向かれてしまった。
「私?ね 私何かした?」
遊馬はそれっきり何も答えずに不貞腐れていて、その間に武田と小池から大まかに状況を聞いた緑は「ふ~ん」と言いながら他の男性陣同様、人の悪い笑みを浮かべて遊馬を見遣っていた。
困り果てた野明が緑を見ると、彼女は「努力って結構報われるものみたいよ」笑った。
「さて これ以上篠原を虐めていても何だからこの話題はここまでな!」と武田が宣言し、他の者もひとしきり笑った後「了解~」と応じた。
野明だけが事情を全く把握できないままだったので「え?ちょっとまって、どうして?」と訊いてみたがみんな一様に、「この話題はもうおしまい!」といって誰も質問に答えてはくれなかった。

その後は皆で談笑しながらの飲み会になったのだが野明達が化粧直しをしていた間に起きた何かがすっかりこのメンバーを打ち解けさせたらしくかなりざっくばらんな雰囲気になった。
野明も始めのように氷が解け切るまでマドラーをまわし続けることも無くグラスを空ける。
空になったジョッキに気づいた野明がビールを注ごうとピッチャーを持ち上げようとすると武田が「重いからやるよ」と声をかけた。
「この位 大丈夫ですよ」
「いいから いいから、女の子は重いもの持たない」とピッチャーを取り上げると武田が悪戯っぽく笑った。
こういう扱いに慣れていない野明は「じゃ、お願いします」というと照れたように笑う。
その横で遊馬は 面白くないぞという顔をして武田と野明を見遣っていた。
「泉さんって 可愛いですよね~、そういうところ。」と小池が声を掛ける。
「確かにね、野明って女の子扱いされるのに慣れてないから弱いのよね、こういう扱いに」緑が応じ、「新鮮な反応よねぇ」と女性陣も話に加わる。
「女の子扱いされないんだ?こんなに可愛いのに。勿体無いなぁ」と武田。
野明はなんだか居た堪れないような気分になって「やめてくださいよぉ」と手元のグラスで顔を隠すようにして言った。
黙ってその様子を見ていた遊馬が意外だなという風に目を丸くして野明に問いかけた。
「・・・して欲しかったのか? 女の子扱い」
「え・・・?! あの、えっとね。」真っ赤になってどもる野明を見て、「ふーん」と呟く。
「お前そういうの嫌がると思ってた」少し考え込むような顔をしてぼそっと言う。
「なんで?」
「なんとなく」
今度は野明が考え込む。
「ま、いいけどな」遊馬はあっさりとこの話題を切り上げると残っていたビールを呷った。

3時間余りが過ぎた頃 場所を変えようと言うことになって皆で店を出た。
ひんやりした空気が酒の入った身体に心地いい。
機嫌の直った遊馬に安心した野明は上機嫌でスカートをヒラヒラさせながら緑と遊馬の少し前を跳ねるように歩く。
時折くるっと振り返って二人の顔を確認するとまた跳ねる様に歩いていく。
周りから見ればほろ酔い加減で浮かれているようにも見えるが 緑と遊馬は野明があれくらいのサワーで酔っ払うなどとはサラサラ思っていなかった。

「ところで篠原君?」前を見ながら緑が口を開く。「来た時 随分機嫌が悪かったじゃない?」
「小池が嵌めたからだよ、俺、合コンとか出ない主義なの」遊馬もまた前を見て答える。
「それは生い立ちの所為? 野明の所為?」さらっと言いにくいことを訊いてくる緑を一瞥して視線を前に戻すと「黙秘権は?」と返す。
「使いたい?」そう言うと一瞬強い視線を送って来た。
遊馬は小さく肩を竦めると軽く溜息を吐きながら「今は両方、だな」と答えた。
「両方、ね」緑は小さく笑う。
「野明も合コンとかには出ない主義なのよ、知ってた?」
遊馬は一瞬目を瞠ると「なるほどね」と呟いて空を仰ぎ大きく息を吐き出した。
緑はやれやれ、というように溜息を吐き遊馬の腕をポンっと叩くと「ま、上手くやって頂戴よ?」と言い捨てると野明の更に前を行く他の面々に合流していった。

緑が自分を追い越していったのに気づいて野明が後ろを振り返り、複雑な顔をした遊馬がゆっくり歩いているのを見ると走り寄る。
「みんなと結構離れちゃったね」そういうと遊馬の腕を取って「急ごう」と促した。
腕をとられた遊馬は少し考えてから「いいよ」といいそのままのペースで歩き続けた。
「見失っちゃうよ?」野明が小首を傾げるのを見ながら、ああ言ったということは後は緑がなんとかするんだろうと漠然と考えて「平気だよ」と答える。
遊馬の腕を取ったまま少しづつ距離が開いていく皆の後ろ姿と遊馬の顔を不安そうな瞳で交互に見つつも野明は決して1人で走って行こうとしない。
『面白いもんだなぁ』とゆっくりと歩を進めながらしみじみ野明を観察する。
大体そんなに不安な顔をしなくても合流したいなら今からでも走ればいいし、見失ったとしても携帯で連絡をつければいい。
それはこちらからがそうであるように 向こうから見ても同じことだ。
けど、このまま逸れても向こうからこちらに連絡は来ないだろうと思えた。先刻のはそういうことなんだろうと。緑に上手く乗せられたような気がしなくもなかったが『まあいいか』と思うことにした。

考え込み黙ってしまった遊馬に野明が不安そうな顔を向けていた。少し間をおいて遊馬が口を開く。
「なぁ 飲みなおさないか?」野明は驚いて目を丸くする。
「今から?」
「そ。殆ど飲んでないだろ? 折角めかし込んで来たんだし居酒屋じゃなくてバーとか行くか?」
顔をほんのり朱くした野明が小さな声で「あ・・えと・・皆が・・・」とごにょごにょ呟く。
「あっちは心配要らないさ。大丈夫だよ」軽く笑うと野明が不思議そうな顔をした。
その様子が可笑しくて悪戯心がふっと沸く。
「女の子扱い、してやろっか?」と耳元に囁くと野明が何か言うより早く膝の裏側と背中に手をまわし、ひょいっと抱き上げる。
「え? あ ちょっと、遊馬ぁ?」
真っ赤になりながら動揺してじたばたする野明を面白そうに見ながら「あんまり暴れると落ちるぞ?」と呆れた様に言った。
ファイル 9-1.jpg
「あの・・・降ろして貰える?自分で歩く」
「やだね」
遊馬の胸元に腕を突っ張って一生懸命降りようとする野明に苦笑しながら、再び楽しそうに耳元で囁く。
「ちゃんと女の子扱いしてやるから、大人しく抱かれてなさい」
顔色も変えずにしれっと言い放つ遊馬に、野明は呆気に取られて腕を突っ張る気力をなくし、朱に染めた顔をぽすんっと遊馬の肩口に伏せた。
その様子を確認して遊馬は満足気に笑い、顔を覗き込んで「どこに行きたい?」と訊く。
顔を上げられない野明は額を遊馬の肩口にきゅっと押しあてたまま「お任せします」と小さな声で答えた。
遊馬は軽く目を瞠ると「了解」と返事をしてすこし考えてからゆっくりと歩き出した。

遊馬の腕の中で思い返す。今日 寮を出るときに思ったこと。
かわいい服を着て、綺麗にメイクをして、甘い香りを纏うことで周りの反応は変わるのか?
勿論それだけで変わるわけではないだろうけれど。
先刻聞いた緑の言葉を思い出す。「努力って結構報われるものみたいよ」

END

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追記

何とか風呂敷畳んでみましたが 結構強引に畳んだので綻びだらけです(^^;
壮大な処女作ってことで笑って許してください(^^;

突っ込みどころ満載ですが今はこれが精一杯かなぁ。文才が欲しいです(T∇T)
折角なのでお姫様抱っこさせてみたんですが絵にすると成人男女に見えないですねぇ。補導されそうですよ、夜中歩いてたら(笑)

長い駄文でしたが最後までお付き合いくださった方々、本当に有難うございます。
また コメントもすごく励みになりました。これに懲りずにまたお付き合いくださると幸いです。

コメント一覧

ツッジー 2009年05月21日(木)11時20分 編集・削除

素敵ー(≧∀≦)
処女作でここまで書けるのは本当素晴らしい!!!!

野明も遊馬も1歩進みましたね!!
この合コンがきっかけだけど(≧∀≦)

お姫様抱っこだなんてヾ( 〃∇〃)ツ キャーーーッ♪
挿絵も可愛いし、もうドキドキですよヾ( 〃∇〃)ツ キャーーーッ♪

素敵なお話ありがとうございました(≧∇≦)

さくら 2009年05月21日(木)11時37分 編集・削除

>ツッジー様~
早速のご訪問とコメントを有難うございます!
ドキドキしてくださいました?
嬉しいなぁ♪

本当に ツッジー様をはじめコメントくださる皆様に支えられて何とか風呂敷畳みました(笑)
一歩進んだかな~? 後は本人達の行動力に寄ることでしょうけど・・・(*^m^*)
お姫様抱っこは絵を描いてて楽しかったです。
けど 顔幼いですよね~。
時間的には二課なので 野明だって二十歳過ぎのはずなのに・・・顔、高校生で通りそうですね(^^;
最後までお付き合い本当に有難うございました!

そおた。 2009年05月21日(木)13時41分 編集・削除

こんにちは☆
遅ればせながら、当方でもリンクさせていただきました。
ありがとうございます〜。

SS、初めてとは思えない素敵なお話で続きをどきどきしながら待ってました。
やっぱり遊馬のほうがちょっぴり余裕ですかね?
緑ちゃんGJです!
2人のガールズトーク、もっと聞いてみたいですvvv

さくら 2009年05月21日(木)14時21分 編集・削除

>そおた様
リンクの件 有難うございます~(^^)
今後とも 仲良くしてくださいね!

SS、ガールズトークしたくて見切りで始めた結果、収拾つかなくなるところでした(笑)
初めてなので おや?! という所や言葉回しが不自然なとことも多々あるとは思いますが読んで頂けて嬉しいです♪

遊馬が余裕。。。単純に開き直ったんだと思います(笑)
野明の知らない空白の数分に何があったか・・ですよね☆

緑ちゃん GJですか?!嬉しいです♪ 
彼女使って何か・・・思いつくかなぁ・・・(^^;
長いお話にお付き合いくださって有難うございました!

ASAKI 2009年05月21日(木)22時58分 編集・削除

ここにも投稿できるようになったのだ(^◇^)
で、感想です。

お姫様だっこ最高!!
幸せそうなのあすま最高!!
頑張れ遊馬~!!この先も試練はまだまだあるぞ!!
って感じでした(^_-)-☆

さくら 2009年05月21日(木)23時29分 編集・削除

>ASAKI様
良かった~ 書き込めましたか(^^)
コメント有難うございます♪

お姫様抱っこ、良かったですか?
ASAKIさんのところは同じお姫様抱っこでも色っぽいのに・・・うちは何か高校生みたいです(笑)
この先の遊馬の試練、ありそうですよね(^m^)
でも 思いつかない~
このカテゴリに追加するネタがあるのか・・・
真剣に疑問です(笑)

tera Eメール 2009年05月22日(金)01時58分 編集・削除

野明と緑がパウダールームにいた時間の個室の様子を、もし書かれる機会があればお願いします。
ほかの皆と遊馬との間にどんな会話があったのか、興味があります。(ふて腐れた態度の遊馬も、余裕な遊馬も、皆にいじられる遊馬も私は好きです)
ああお姫様だっこ・・・いいですねぇ。
緑もいいキャラですね(^^)
今後も楽しみにしております!!

さくら 2009年05月22日(金)02時18分 編集・削除

>tera様
あの時間、何があったのか(^m^)
興味を持ってくださって有難うございます(笑)
そう言ってくださる方がいらっしゃると・・・書こうかなぁ・・と調子に乗ってしまいます☆
お姫様抱っこ気に入っていただけましたか?
私も好きなんですよ、挿絵を描いていたときも文章書いていたときもお姫様抱っこはとても楽しかったです(^m^)
気合が入りすぎて 何故か野明の年齢が縮んでしまいましたけど(笑)
緑を気に入ってくださった方が多くてホッとしました!
オリジナルって入れるのに勇気が要りますね。
コメントをいただけるとやる気も倍増します(^^)
是非 また来てくださいね~!!!

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