今度は出発の野明サイドです。
最初は別行動ですものね(笑)
というわけで 軽井沢編第二弾。
皆様の暖かいお言葉に支えられて書いてます(笑)
どうぞよろしくお願いします!!
以下本文です
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お出掛け
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野明が寮に戻ると 11時半を少しまわっていて人気疎らなコモンスペースを抜けるとまっすぐ自室に向かった。
部屋の前で鍵を出していると、これから出かけようとしていた緑が野明に気づいて声を掛けた。
「野明、今帰り?」微かに含みのある笑顔で問いかける。
「うん、だたいま、これから出勤?」答えながら鍵を開けて扉をひらく。
「今日は夜勤。お昼食べに出ようかと思ったの。野明は?」
「とりあえず着替えて このあと出かける」
「そうなんだ? 篠原君も一緒?」
「後でむかえに来るっていってたよ」
「そうなんだ~」とにこにこと笑う緑の顔に野明は少し怯んだ。
「な、なに?」
「い~え♪ お昼、買いに行こう。話聞かせてもらうわよ?」そういうとさっさと野明の手を引いて近くのコンビニに向かった。
コンビニで弁当と飲み物を購入し野明の部屋にやってきた緑は含みの笑顔を見せながら手早く買ってきたものをテーブルに並べた。
野明がアンサンブルを脱いでTシャツとホットパンツに着替え緑の向かい側に座ると、弁当をつまみながら徐に緑が口を開いた。
「ね、あの後、どうしたの?」興味津々といった様子の緑に野明は気圧される様に身を引いた。
「どうって・・・飲み直そうって遊馬が。それで東口のバーに行った」
「へぇ? 良かったじゃない。で?」楽しそうに後を促す緑に野明はバツが悪そうに続けた。
「酔っ払って、寝ちゃったの」
「誰が?」
「私が。」恥ずかしくなってちょっと目を逸らす。
「・・・嘘でしょう?」緑は目を丸くして言った。「あんた 蠎(うわばみ)じゃない?」
「蠎って・・・。でも そうなの。注意されたんだよ、飲み方に気をつけろって。・・・でも寝ちゃったの」
野明は ほうっ・・・と息をついた。
「そう。それで どうなったの?」目を眇めて緑が先を促す。
「どうやっても起きないし電車もないからって 遊馬がホテルに運んでくれたの」
こういうことを普通に話せるようなタイプではないとおもっていただけに、さらりという野明に緑は少なからず驚いた。
「え? じゃぁ・・・」一線を越えたのか、と聞こうとする前に野明が続けた。
「で Tシャツとか買ってきてくれて、着替えてシャワー浴びて、酔いが醒めるまで面倒見てもらちゃった」
「・・・・・・それで・・・?」
「それでって、それだけだよ。其々 ベッドで朝までねてて起きて帰ってきたらこの時間に・・・って 緑?」緑の眉間に小さく皺が寄っている。
「其々って シティホテルに泊まったの?」
「うん、ツインの部屋を取ってくれて。」
緑は まじまじと野明を見た。
「で? よもや何もなかった、とか言わないわよね?」
「何もって、何もないよ。叱られたけど。 『一応 年頃の娘なんだから行動に気をつけなさい』って・・・」
緑は呆然とした顔で野明を見て、その後天井を仰ぐと はぁーっと大きく溜息をついた。
上手くやってねと言っておいたはずなんだけど・・・そう思い眉間に人差し指を添えるようにして軽く目を閉じる。
「それで 手も出されることなく帰って来れちゃったわけね?」
そういうと野明の顔を覗き込んだ。「そういう言い方しないでよ」と野明は拗ねたような顔で答える。
「遊馬は 『酔っ払いには手を出しません』って。そういうの嫌なんだって」
緑は『へぇ、意外に生真面目なんだ、篠原くん』と思い軽く目を瞠る。
「大事にされてんじゃん、野明」
「・・・そうかな・・・?」野明は小首を傾げる。
「じゃないの? だから素面でないときに手を出して後悔したくないってことでしょ? 何も拗ねることじゃないわね。」
「別にそういうことで拗ねてるわけじゃないって」
「そういわれるのが嫌なら せめてほろ酔いで済む程度にしとくのね。」
「だから そうじゃなくて・・・」
「はいはい いいわよ、何でも。で 今日これから出かけるって?」
「あ うん。そうそう、軽井沢行こうって。」
「軽井沢って今から?」時間を見るともう1時を過ぎている。確かに日帰りできない場所ではないがそれでは 大して遊ぶことも出来ずに疲れに行くようなものだろう。
「もしかして 泊まり?」
「今週、準待機だから」野明は目を少し逸らすようにして答える。
「そっか」緑は含み笑いを見せた。
「じゃ 荷物の用意とかあるか。私、一旦部屋に戻るわ、後でお化粧してあげる♪」
そういうと食べ終わったお弁当の容器をテキパキと片付けて「後でね~」と手をヒラヒラ振りながら部屋を出て行った。
部屋に残された野明は一息置くと「さて」と声を出して立ち上がり荷物を纏めるべくクローゼットを開けた。
ボストンバッグに着替えや洗面道具などを詰めると寮の受付に降りて外泊届けを提出する。
部屋に戻ると再びクローゼットを開いて『何を着ていこうかな』と端からハンガーを滑らせるようにしながら中身を物色していき、悩んだ末に麻で出来た生成りのワンピースを手に取った。
いそいそと着替えて姿見の前でくるりと回ったりしているとコンコンと扉がノックされて緑が顔を出した。
「どう?用意終わった?」
「うん、大体ね」
野明が答えると、緑は野明の格好を見て「ふーん」と言いながら口の端に笑みを浮かべる。
「いい心がけじゃない?」というと野明の頭をぽんぽんと叩いた。
「じゃ お化粧しましょうか♪」というと楽しそうに野明に化粧を施す。
昨日とは違う色のパレットを使って手際よく色を乗せていくと最後にリップの上にグロスを重ねた。
「うん、完成!」といって満足そうに頷くと手鏡を取り出す。
「どう?」
「ありがとう」野明は暫く鏡を覗いてから「色で雰囲気って変わるんだねぇ」としみじみ呟いた。
昨日はピンク系の色が多かったのでどちらかと言えば甘い感じのメイクだったが 今日はグリーンやブルーが入っていてちょっと凛とした感じの仕上がりになっていた。
「今日は服が生成りだからね」と言いながら緑は小さなメイクパレットを2つ野明に差し出す。
「使い方教えてあげるから座って」というと野明にメイクの方法をレクチャーし始めた。
一通り説明すると 小さなポーチに寒色系と暖色系2種類のパレットと小さなグロスとリップを入れて「はい」と野明に手渡した。
「ちょっと使っちゃってるけど、あげるわ。私はこの色あんまり使わないし。」
「え、でも・・・」
「頑張ってらっしゃいって意味込めて。取り敢えずもって行きなさいよ。中身はトライアルキットの寄せ集めだから気にしないでね」というと にっと笑って言った。
「リップの色は薄いのにしてあるから、ついちゃっても目立たないように」
「なっ・・・・!」野明が顔を真っ赤にして緑の方を見ると、緑は楽しそうにケラケラと笑った。
暫くして 野明の携帯電話が軽やかな音を立てた。
遊馬が自分で設定して行った着信音なのでディスプレイを確認しなくても相手は彼だとわかる。
「はい、もしもし」
「あ、俺。今から車でそっちに行くけど大丈夫か?」
「うん どのくらいかかる?」
「30分見といてくれ」
「わかった、気をつけてきてね」
野明が電話を切る。
「すぐ来るって?」
「30分くらいで来るみたいだよ。」
「そっか、忘れ物ない様にね。楽しんでらっしゃい♪」」緑は笑顔で野明の肩をぽんと叩いた。
30分もしないうちに再び携帯が軽やかな音を立て、遊馬の到着を知らせると野明はボストンバッグとハンドバッグを手に部屋を出る。
寮の玄関を出たところで ハザードを出して止る車を見つけた。
遊馬が降りてきてボストンバッグを受け取ると「荷物、これだけか?」と声を掛け、助手席の扉を開けた。「先 乗ってろよ」と促し手にしたボストンバッグをトランクに仕舞う。
運転席につくと遊馬が「出るぞ」と声を掛けとゆっくりと車が走り出した。
走り出してすぐ「交通情報検索してくれ」といって遊馬は野明に自分の携帯を手渡した。
「えと、どうやって?」困った顔でそれを受け取ると一応ディズプレイを開いてみる。
そもそも機械が苦手な野明は基本的な通話とメール以外の機能を殆ど使いこなすことが出来ない。
レイバーに乗れることと機械が得意なことは全く別問題なのだ。
遊馬がアプリケーションの使い方を説明したが野明は結局理解することが出来ず 車が関越に乗ったこともあり携帯での検索を諦めてラジオで情報を取得することを選択した。
ハイウェイ・ラジオの電波を捕まえると交通情報に耳を傾ける。
道中大きな混雑は報じられておらず順調なドライブが出来そうだった。
「碓氷軽井沢I.C.まで ノンストップで一時間半ってとこだな」
遊馬が前を見ながら口にした。
それは野明に語りかけたというよりもラジオの情報を分析した結果が口をついて出ただけ、という口調だった。
「そんなもんで着くの?」意外な近さに驚く。
「でないと、準待機中に出かけられないだろ?」呆れたような顔で言われ、準待機であることを忘れかけていた野明は惚けたように「そっか、準待機・・・」と呟いた。
『途中、寄りたいところはあるか』と訊かれたが、まるで土地勘のない野明にはまったくわからず、苦笑した遊馬はそのまま運転を続けた。
隣でハンドルを握る遊馬の顔を何とはなしに眺める。
いつも見慣れた遊馬の横顔。
初めて会った頃より少し精悍さを増した顔、シャープさを増した顎のライン。
今まであまり意識してみることがなかったその顔をまじまじと見ていると心臓の鼓動が早くなる気がして少し落ち着かない。
一度目を逸らして目線を前方に向けたものの、すぐに遊馬の方が気になってまた目線を戻した。
『どうしてこんなに 落ち着かないんだろう?』
遊馬の運転する車に乗るのは初めてじゃない。
任務中、指揮車に同乗する事もあれば、キャリアを運転する遊馬の隣に乗ったこともある。
研修や説明会の時には公用車で相乗りすることもあったし 遊馬の助手席に座ること自体はさして珍しいことではない筈だ。
休日を共に過ごすことが多いため私服が珍しい、ということもない。
なのにどうしてこんなに落ち着かないのだろう。
泊まりで出かける、ということがその一因なのかもしれないが、月の半分は二課棟で泊り込みになる中で宿直室で雑魚寝したことも一度や二度ではないし、二人でということなら着任間もない頃に手違いの結果とはいえ酒田の旅館で同泊した経験もあった。さらに遊馬は北海道の実家まで押しかけてきて泊まって帰ったことすらある。
何かにつけて 『初めて』ということがこれほど乏しい相手というのも珍しいと思う。
まして 彼とは付き合っているわけではないのだから。
野明は今朝、彼が発した『彼女にしてやる』という言葉を思い出しその真意を測りかねた。
かといって 今更『あれは 本当か』と問い直す勇気もない。
結果として自分は『迎えにきて』といい、彼は迎えに来たのだからそれが答え、と取ることもできるかも知れないが、はっきりとした返事をもらえたわけではない野明は結果不安を抱えることになってしまった。
自分のあの答えは告白したも同然で、それに気付かないでいるほど遊馬は鈍くないだろう思う。
『遊馬はどう思っているんだろう?』と考えながら野明は暫くの間、運転を続ける遊馬の横顔を眺めていた。
藤岡のJCTを通り上信越道に入って暫くすると 遊馬が不意にこちらを向いた。
一瞬目が合ったが遊馬はすぐに目線を正面に戻し、「どうした?」と声を掛けた。
「何が?」
「落ち着かないみたいだからさ、気が進まないなら無理せずに帰るか?」
考えていたことを見透かされたような気がして吃驚した。
「あの、違うよ、遊馬。気が進まないなんてそんなんじゃないの。そうじゃなくて、なんか変に緊張しちゃって・・・なんだろうね?」
答えながら、『そうか、私 緊張してるんだ』と納得する。と同時にどうして緊張するんだろう、と不思議に思った。
「嫌じゃないならいいんだけどな、なんか有るならちゃんと言えよ?」
遊馬が自分を気遣ってくれているという嬉しさと くすぐったさが同時に感じられて先刻までとは違う意味でそわそわする。
「うん。ありがとう。でも帰るのは・・・やだ。」と答えると恥ずかしさも手伝って遊馬の顔から目を逸らした。
「了解。じゃ、少し気ぃ抜いとけよ? 緊張が感染るだろ?」
言いながら遊馬が左手を伸ばし髪をくしゃっと撫でる。その心地よさで緊張が解れていく気がして笑顔を返した。
もうすぐ高速を降りる、という頃になって遊馬が『宿に向かう前に買い物に行こう』と言い出した。
『ホテルじゃないから入用なものを揃える必要がある』というので「どこに泊まるの?」と訊いたが楽しげな様子で「行けばわかる」というだけで教えてくれない。
少しむくれると「お楽しみってやつだな」と言いながら額を人差し指で小突き、楽しそうに声を上げて笑った。
高速を降りて着いた先は とても大きな商業施設だった。
「こんなところがあるんだ~」と素直に驚く。ショッピングモールというのは買う買わないにせよテンションが上がる。
「今日は あんま時間ないからざっと要るものだけ買うようになるけどな、明日ゆっくり来ようぜ?」
テナント数が総計200を超える施設では とても一日、ましてやこんな時間にやってきては回りきれよう筈もない。
遊馬とならんで歩きながら 横顔を見上げると 遊馬と目が合ってなんだか擽ったい様な胸がキュンとするような感覚になった。
「えっと、腕 組んでもいい?」と訊くと少し驚いたような顔をした遊馬はそれでも 「どうぞ」といって腕を差し出してくれた。
嬉しくてその腕にぴったりとくっついて歩く。
『こんなことは二課にいるときには絶対出来ないな』、と思わずクスリと笑うと遊馬は「なんだよ?気持ち悪いなぁ」と言って顔を顰めた。
遊馬の指示にそって、ちょっとした食べ物や飲み物などを買い込みならがらショッピングモールを歩く。普段コンビニでお弁当を買うのとは違ってすこしワクワクした。
フロアガイドに一度ざっと目を通しただけで大体の位置を把握してしまったらしい遊馬は迷うこともなく目的の店を効率よく回って買い物を済ませていく。
『こういうところが凄いんだよね』と内心舌を巻きながらついて歩いた。
寝具を扱う店舗に着くと遊馬はワゴンに入った寝巻きをざっと見て「これでいいか」と無造作に一つを選び取った。
「野明もなんか買っとけよ、向こうにないから」
「うん、わかった」
店内を物色しながら ふと遊馬に聞いてみる。
「ね。遊馬ってパジャマ着るんだ? 」
「普段はきねーよ、持ってないし。宿直んときはスウェット着るけどな。」
「持ってこなかったの?ないのがわかってるのなら持ってくればいいのに。」
「予備は二課棟のロッカーの中、使ってたやつは乾いてないの。準待機入ってからずっと出かけてるだろ?」
「あ、そうか。」
「俺はなくても構わないけどね、寮に居るときみたいに下着でウロウロされてもいいなら」
野明の顔を覗き込んでにっと笑うと野明は顔を赤くして目を逸らした。
「・・・それは 困る・・・」
「だろ。で、決まったか?」
「ごめん。まだ」
遊馬の見ていたのと同じようなワゴンを覗きに行こうとしてふと店先に吊るされていたワンピース型の寝巻きに目が留まる。
襟ぐりにフリルをあしらい肌触りのよい生地で出来ている可愛らしいデザインのものだった。
思わず一度手に触れたものの、すぐに手を離しワゴンに向かおうとすると遊馬が声を掛けた。
「気になるなら それにすりゃいいじゃん」
野明は驚いて振り返った。
「こんなの似合わないって!」
「そうか? 取り合えず今日、試してみりゃいいじゃん。高いもんじゃないし。」
ハンガーにつけられているPOPを見るとSALEがかかってる商品で手ごろな値段だった。
とはいえこういう寝巻きを着たことがないので興味半分、羞恥半分で踏ん切りがつかない。
少し考えていると『時間ねぇぞ』と時計を確認した遊馬に急かされる。
「明日もくるよね?」
『気に入らなかったら明日違うのを買おう』と思い遊馬に確認する。
「ああ。明日はちゃんと午前中から見に来ようぜ」
「じゃ 取り敢えずこれにする」
そう言って レジに向かった。
他に数店舗を手際よく梯子して一通りの買い物を終える頃には閉店を告げる音楽がモール内に流れ始めていて二人は急いで車に戻った。
トランクに荷物を詰め込むと遊馬は 「じゃ、宿に向かいますか?」と言って車を走らせた。
国道に沿って暫く走り、脇の小道に入るとコテージの点在する地域に入った。
一軒のログハウスの前で車を止めると、遊馬は「待ってろ」といって車を降りていく。
『ここに泊まるのかな?』と明かりのついたログハウスを眺めていると 遊馬が地図と鍵を手にして帰ってきた。
再び車を走らせて更に国道から離れていくのに不安を覚えて思わず声を掛ける。
「ね、どこまで行くの?」
「もう着くさ」と悪戯っ子のような笑顔で応じる遊馬を訝しむ。
更にもう一度 脇道に入ると間もなく遊馬は車を停止した。
「着いたぞ」といって車を降りた遊馬を追って慌てて車外にでると目の前には外装が木で出来た小さめのコテージがあった。
to be comtinue....
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追記
軽井沢編第二弾は 野明側の出発でした(笑)
話がすすんでませんね(^^;
この先は一緒に行動することになる(筈)ので 両サイド書く事は・・・多分しないと思うんですが・・・・進まないし、話が(笑)
次回の更新は ・・・未定です~。
来週にかかるかも?!
ASAKI 2009年06月10日(水)22時42分 編集・削除
私も王子様と出かけたい。
でかけたいぞ~!!!
楽しそうだな、野明(^_-)-☆
続き楽しみだわん。