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the after night

ここしばらく気合を入れて描き込む系統の絵を描いていたので反動でものすごい適当に絵を描きたくなりました(笑)
色もいい加減に塗って 線もタブレット直描きにしたら勢いも手伝ってか 意外に可愛く描けました。
先日 書き掛けのお話を設定の都合上 没にしてしまったのでこれに何かつけようかな・・・と思いついたのが 「Irreplaceable」の後日談みたいなものです。
野明の服がアンサンブルから何故かワンピースになっていたり 腰の紐とか袖口の飾りがなくなっているのは・・・ご愛嬌です(笑)
今更書き直すのは無理ですね~
描いたときのテンションが もうない(笑)

というわけで おまけの劇場 無駄に長いのもご愛嬌で(^^;

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the after night
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野明をお姫様抱っこして新宿を歩くこと暫し。
やがて 大通りに出るとこのまま歩くのは人通りの関係で難しくなってきた。
10時半を少し回り 大型店舗の多くが店を閉めても飲食店やゲームセンターと言った娯楽関連の店舗は未だ煌煌と灯りを燈し夜の街に繰り出す人は引きも切らない。
『他人にぶつかりそうだな』と思った遊馬は自分の肩口に顔を埋めるようにして目を閉じている野明に声を掛けた。
「歩けるか? 大通りに出たからさ、ぶつっかちまう」
声を掛けられて野明がパッと顔を上げる。「あ、うん。平気」
言いながら少し名残惜しそうに額を一度肩にコツンとあてる。
「いいか?」言いながら足を支える手をそっと下げると、野明は軽く勢いをつけてぴょんと飛び降りた。
スカートをぽんぽんと軽く叩いて皺を伸ばすと遊馬に預けていたバッグを受け取り肩に掛けた。
軽く促すと 後ろ手を組みながら遊馬の隣を歩き始める。
慣れないミュールの所為なのかそもそも人ごみを歩くのが苦手なのか、何度も他人にぶつかっては「ごめんなさい」とか「すみません」を繰り返している野明に『これじゃ 抱えてた方が良かったか?』と内心溜息をつきながら 「ほら」と言って腕を差し出した。
「摑まってろよ、危なっかしい」
野明が少し戸惑うような顔を見せたので にっと笑いながら「何なら肩とか腰とか抱いてやろうか?」というと野明は「いい」と言って遊馬の腕をとった。
二人で腕を組んで歩く。
「ね どこに向かってるの?」
「東口」
「東口?」
「そ 朝までやってるバーに行こうかと思ってさ」
「そんなところあるんだ?」
「新宿だしな、始発までやってる店は結構多いぜ?」
「ふーん」
「折角 めかし込んでるんだしな。いい店に連れてってやるよ」
遊馬は楽しそうに笑う。
野明は自分の格好をざっと見て「おかしくない?」と遠慮がちに訊いた。
「そんな格好はじめて見たからな、いいんじゃない?似合ってるよ」
意外にさらっと口から出た褒め言葉に言った自分が少し驚いた。
野明は はにかむように笑いながら「ありがと」というと絡めた腕をしっかりと抱えなおした。

東口側に出ると大通りから一本裏手の路地に入る。一軒の雑居ビルの前までやってくると遊馬は地下に降りる階段を躊躇することなく下りはじめた。
「ここ?」野明は地下に下りる薄暗い階段に不安そうな顔を見せた。
「そ。地下にある店なんだ。嫌か?」
「ううん。そうじゃなくて・・・こういう店初めてだから」
落ち着かない様子で遊馬の腕を掴みながら階段を下りると目の前に大きな木の扉が見えた。
遊馬は躊躇うことなく扉を開けるとさっさと中に入っていった。
中は結構広い空間だった。オレンジを基調にした間接照明が品良く配されていてカウンターとテーブル席が並んでいる、雰囲気のいい店だった。
遊馬がスタッフと二言三言やり取りをして 案内されたのは軽い個室風に仕切られたボックス席だった。
野明と向き合うように座ると、「さて、何にする?」といってドリンクメニューを差し出す。
中をパラパラと捲って 野明は途方に暮れた。
酒屋の娘とは言え、カクテルと言うのは守備範囲外だった。
名前を見てもどんなものなのか皆目見当もつかない。いくつかは居酒屋のドリンクメニューでも見たことが有る名前の物もあったが普段 興味を持ってみていなかったのでどんなものか思い出せもしなかった。
メニュー自体はベース毎に大まかに集められているのだが そのベースにしても知らないものが多く並んでいて、それがわからなければどうしようも無かった。
野明は自分で選ぶのを諦めて遊馬にメニュー返す。
「よく判んないや、お願いしていい?」
「いいけど。どんなのがいいんだ?」
「どんなのって言われても・・・どんなのがいいんだろう?」本気で悩んでいる様子を見て遊馬は「飲みやすいとこから行くか」とオーダーをかけた。

程なく野明の目の前にはオレンジ色の液体が入ったフルート形のシャンパングラスが、遊馬には無色透明でライムが飾ってあるタンブラーが運ばれてきた。
「とりあえず乾杯しようぜ」そう言ってグラスを持ち上げる。
野明も慌ててグラスを持ち上げ目の高さでグラスを合わせるとリンっと澄んだ音が響いた。
二人で目を合わせると どちらともなく笑い出す。
「やぁだ 遊馬」「ガラじゃないよな」といってひとしきり笑うと其々のグラスに口をつけた。
「・・・おいしい・・・これ なぁに?」
「飲みやすいだろ?」
「うん、ジュースみたいだね」そういうと 野明はグラスの中身を一息で呷ってしまった。
「あ おい!そんな飲み方するヤツがあるか!」遊馬が止めた時にはもう中身は空っぽになっていた。
「どうかしたの?」不思議そうな顔をして小首を傾げる野明に遊馬は思わず頭を抱えた。
「あのなぁ、それはミモザっていってシャンパンなんだよ、ベースが。喉越しがいいと思ってそんな飲み方すると倒れるぞ?」
「・・・そうなの? 日本酒コップで散々飲んだって遊馬止めないじゃない? 平気だよ、こんなの。」
「カクテルってのは 口当たりや喉越しがいいものが多いけど 結構きくぜ? アルコール度数は日本酒よりも高いのも多いし。気をつけろよ?」
「遊馬 心配性じゃん」野明は楽しそうにくすくすと笑いながら「遊馬、おかわり♪」と言って空いたグラスを軽く振って見せた。
「・・・はいはい・・・」遊馬は諦めたように追加オーダーを出すと自分もグラスに口をつけた。
「ね 遊馬のはなに?」言いながら身を乗り出すようにして遊馬の手からタンブラーを奪うと口をつけた。
「うわ・・・」と少し顔を顰める。「なんか アルコールって味がする。」
「ジントニック」言いながらタンブラーを奪い返す。
「調子に乗ってあとで悪酔いしても知らんからな」
「平気だってば。私 お酒強いもん。こういうところ来たの初めてだから何か楽しい♪」
「そうか? そりゃ良かった」

お通しにあたる乾き物と オーダーしたサラダ他 数点のつまみを適当に食べながら他愛のない話をする。
午前12時を回った頃になって 何杯目かのカクテルを空にした野明が 突然それまでの上機嫌から一変して拗ねたような口調で訊いた。
「ね 遊馬ぁ、遊馬はどうしてここをしってたの?」
「あん? ああ、前に来たことがあるんだ。」何の気なしに応えると野明は しゅんっとした様子で「そりゃそうだよねぇ。遊馬にだって彼女の一人や二人や三人や四人・・・」と言って頬杖をつく。
ペースを加減しながら飲んでいたため左程酔いのまわっていなかった遊馬は野明の様子を見て「おい、酔ったのか?」と心配そうに訊いた。
遊馬の声が全く耳に入っていないらしく野明は「だからカクテルとかにも詳しいんだ」と言いながらテーブルに顔を伏せる。
遊馬が呆れたような顔をして「おい、本当に大丈夫か?」と声を掛けると野明は「平気だもん」と呟いてそっぽを向いてしまった。
いきなり情緒不安定になった野明を前に 『さて どうしたものか』と考えていると不貞腐れたような顔をした野明が口を開いた。
「他の子ともここでこうやってお酒飲んだんだ?」
「は?」
「今みたいに親切にしてさ」ちょっと傷ついたような顔でポツリと言う。
「何言ってんだ、お前?」何のことを言われているのか判らずに遊馬が首を傾げる。
少し考えて、「あ そうか。もしかして前に来たのが誰か、って勘ぐってる訳か?」と訊ねた。
野明が答えないので、『説明が足りなかったか』と思い言葉を継ぐ。
「前に来たのは昼間。ここ昼はカフェとして営業してるんだ。来たのは都庁の帰りで 隊長と松井さん、風杜さんと俺の4人。気になるなら訊いてみるといい。」
顔を覗こうとしたがそっぽ向かれているので表情が見えない。思わず苦笑する。
「夜来たのは今日がはじめてだよ」
「・・・ホントに?」
「本当。ちなみに此処に皆を連れてきたのは風杜さんだ」
野明は拗ねたような目をしたまま少し顔を上げる。顔に赤みが差していて酒がいくらかまわってるな、と一目でわかった。『飲むペースが早すぎるんだよ』と思ったが口には出さなかった。
野明は「その4人で?そうなんだ~」というと両手で顎を支えるようにして顔を上げると軽く目を閉じたまま続ける。
「女の子ときたわけじゃ なかったんだ」幾分ホッとした声に聞こえた。
「なんだよ それ、妬きもちか?」と冗談交じりにいうと野明は少し考えるように小首を傾げ「そうなのかなぁ? 良くわかんないや」と呟いた。
まさかそんな返事が返ってくると思っていなかった遊馬は少し驚いて 逆に聞き返してみた。
「お前こそ そんな感じで合コンに参加してるわけか?」
「え? まさかぁ 今日はね 特別なの。合コンとか行かないもん。」
「ふーん で、何が特別だったんだ? その格好」 
今日一番の関心事といっても過言ではないその理由を訊く。
「これ?」野明は自分を指差して遊馬の顔を見る。
遊馬に「そう、それ」と言われて、まじまじと考える。
メイクと服は緑がしてくれたのよね。で なんでこうなったのかって・・・・
思い出して野明の顔に朱がのぼった。
どうしよう、『遊馬に女の子扱いして欲しかったから』だなんて、こんなこと言えない。絶対無理だ。
その様子を見ていた遊馬が怪訝な顔をしている。
そこで野明の口から出た言葉は「・・・恥ずかしいから 教えない」だった。
「なんだそりゃ?」遊馬は拍子抜けしたように言うとそれ以上追求するのをやめた。

空になったグラスを両手で持ちながら野明が「おかわり欲しい」という。
遊馬はその様子を見て「まだ飲むのか?」と言ってグラスをひょいと取り上げた。
「なんだか ふわふわして とってもいい気持ち」
遊馬は頬杖をつきながらそれを眺め、「それを称して酔っ払いっていうんだよ」と笑った。
「酔ってません」
そう言ってテーブルの端に手を掛けて立ちがると益々ふわふわした。
「おい、気をつけろよ」遊馬が慌てて立ち上がる。
「へーき♪」と言って遊馬の傍に近寄ると ぽすんと遊馬の胸に倒れこんだ。
「遊馬のにおいがする」といって嬉しそうに背中に手を回す。
予想外の行動に吃驚した遊馬は思わず天を仰いで、「勘弁しろよ、酔っ払い」と言いながら溜息をつき 手のやり場に困って右手で自分の顔を覆った。
立っていても仕方がないので野明を抱えたまま腰を下ろす。
不意に自分にかかる野明の重さが増した気がして慌てて「おい、野明?」と声を掛けたが返事がない。顔を覗き込むと 無防備な顔ですーすーと寝息を立てて眠っていた。
「野明 起きろ。こんなとこで寝るな」
肩をゆすっても耳元で「起きろ」と言っても起きる気配がない。
時計を確認すると0時半をすこしまわったところだった。
「・・・どうしろって言うんだよ・・・」遊馬は思わずため息を吐いた。

今から東雲の寮に連れて帰るには電車がない。野明を送ったあと自分が寮に帰れなくなるからだ。
かといってタクシーでまわるのも距離がありすぎる。
今が4時とか5時ならこのまま肩を貸してやってもいいのだが4時間以上は双方に負担が大きすぎた。
カラオケボックスとかまんが喫茶みたいなものに移動することも考えてみたがカラオケは2人で入っても野明を横に出来るだけの空間がある部屋には入れそうにないことは明白だし、まんが喫茶にいたっては治安の問題からもこんな状態の野明をつれて入る気にはなれなかった。
裏通りに行けば場所柄 イカガワシイ宿泊施設が軒を連ねているのは判っていたがこれだけ無防備に寝ている人間を喩え手を出す気がないにしても合意なしに連れて行くのは気が引けた。
結局 携帯電話でシティホテルの検索を掛けて部屋を探すことにする。
首都圏のシティホテルは空室の稼働率を上げるために深夜になっても空室が残っている場合、特定の方法でリザーブすると格安で素泊まりできるプランを持っているところが多い。そういうのを纏めて扱うサイトが携帯電話やコンビニの端末にあるのだが、以前作業が深夜にかかった時に面白半分で携帯に登録していたのを思い出した。
野明を片手で支えて携帯を操作し、此処から10分ほどのシティホテルに部屋を見つけた。
どうしたものかと もう一度野明の顔を眺めて「起きろよ」と声を掛けて肩をゆすってみたが反応は無かった。遊馬は大きく息を吐くと「決定」のリンクをクリックして部屋をとると野明と荷物を器用に抱えて店を出た。

とりあえず 部屋に着いたものの起きる気配のない野明をそっとツインベッドの一つに横たえて軽く肩を回すと一旦部屋を出た。
一階にコンビニが併設されていたのでそこに降りて白いTシャツを手に取った。
野明の服のサイズが良くわからなかったので取り合えず自分に合うものを2枚買って部屋に戻る。
暢気に寝息を立てて寝ているのを確認するとタオルとガウン、寝巻き代わりの浴衣、買ってきたTシャツを掴んでシャワーを浴びてくることにした。
熱めの湯を浴びながら思い切り溜息を吐く。
無防備にも程がある、最初に飲み方に気をつけろってあれほど注意したのに。
今までだって居酒屋で飲み明かすようなことがあっても野明が先に潰れることなど無かった。
とはいえカクテルはベースが日本酒のものはあまりないので野明は日本酒と焼酎以外にはあまり強くないのかも知れないと思った。
何れにせよこのことは他の男に知られたくないなぁとぼんやりと思う。
歯も磨いてできることをとりあえず終えると Tシャツの上に浴衣とガウンを羽織り部屋に戻る。

このままにしておくと服が皺になりそうだな、と思って寝ている野明を起こしにかかった。
「野明 起きろ」軽く身体をゆすると寝返りを打つようにコロリと転がったが起きそうには見えなかった。
仕方なく先刻コンビニで買ってきたスポーツドリンクのボトルを首筋にピタっとくっつける。
「きゃぁっ!」と悲鳴を上げて野明が目をあけた。
やれやれ、と溜息を吐くと「起きたか?」と声を掛ける。
野明はまだぼんやりしているのか 軽く頭を振ると半身を起こし「あ おはよう、遊馬」と普通に挨拶をした。
「おはよう、じゃないの! 状況、理解してるか?」
「へ? あ、うん。・・・・ってここどこだっけ?」
焦点の合わない瞳でぼんやりと周りを見てそれから 困った顔をしている遊馬に目をとめる。
「ここは ホテルの部屋だよ。店で寝ちまうからここに連れてきたの」
騒ぐだろうなぁと思って見ていたが反応は意外なほど素っ気ないものだった。
「・・・そうなんだ。ごめんね、迷惑掛けて」野明は 素直に謝ると床に下りようとした。
慌てて遊馬が手を貸すと 足がふらついてまた遊馬に寄りかかった。
「大丈夫か?」
「うーん、自信ない。こんなにふわふわした感じがするの初めてかも」
「酔っ払い」
「ごめん」といいながら遊馬の腕を放して歩こうとしたが「いいから 座ってろよ」といわれて再びベッドの淵に腰を掛けた。
遊馬はさっきのペットボトルを手に取ると「飲めるか?」と言って差し出す。
野明はコクリと頷いてペットボトルを受け取るとゆっくりと喉に流し込んだ。
半分ほど飲んだところで 少し落ち着いたのか目の焦点が大分合ってきた。
「気分どうだ?」
「えっと ふわふわしてるけど 悪くはないよ?」
「頭は? 痛くないか?」
「うん なんかぼーっとした感じはする。でも、ガンガンしたりはしてない」
「そうか」と言いながら頭をクシャクシャと撫でると時計を確認する。もう2時前だった。
「な、その服、吊るしとかないと皺になるぞ。着替えてこいよ」
そういうと 浴衣とガウン、それにTシャツとタオルを野明に押し付ける。
「シャツはデカイと思うけどな、ないよりあった方がいいだろ? ついでにシャワー使って目を覚まして来い」
そういうと遊馬は部屋の奥側に配置されたベッドに向かった。
野明は手の中の着替えと遊馬を見比べて 「ありがとう」というと大人しくバスルームに向かった。

遊馬は 奥のベッドに胡坐をかいて座るとTVを見るともなしに眺める。
『もっと騒ぐかと思ったんだけどなぁ』と野明の反応にホッとしたのか拍子抜けしたのか。
場馴れしてるってことでも無いんだろうけどなぁ、そんなことを考えているうちに野明が部屋に戻ってきた。
着ていた服をハンガーに掛ける様子を見て声を掛ける。
「目 覚めたか?」
「大分ね。」
遊馬の傍に座ると「本当にごめん、迷惑掛けちゃった」と申し訳なさそうな顔をした。
「これに懲りたら あんな無茶な飲み方するなよ?」
「反省してます」
「なら、よし。 ところでさ、野明、驚かないんだな?」
「なにが?」きょとんとして聞き返す様子に惚けている感じはなかった。
「普通さ、寝てる間にホテルに連れ込まれてたらもう少し焦りそうなもんだけどな?」
頬杖をついて野明を見遣る。
野明は口元に手を当てて少し考えてから「そうだよねぇ」としみじみ呟いた。
「普通に 『おはよう』は無いよな、いくらなんでも。」
少しの沈黙の後、「うん 変だよね。でも・・・」と考えながら言葉を選ぶように続ける。「連れ込まれた、とかそういう危機感 感じなかったんだよね。今もそうなんだけど。」というと困った顔で遊馬を見た。
遊馬は天井を仰ぐと大きく溜息をついた。
「お前ね、仮にも年頃の娘がそんな無防備でどうするんだよ? 相手によっては無事ですまない事もあるんだからな」
呆れたような口調で言われて野明は しゅんとした様子で小さく呟く。
「だって 遊馬なんだもん」
「あ?」
「遊馬がそうした方がいいって判断して連れてきてくれたんでしょ? だったらそれが正しいのかなぁって」
思わず野明の顔をまじまじと覗き込んでしまった。
「正しいって、そういうもんか?」
「遊馬のこと信じてるし。色々考えてくれた結果がここなんだったらそれでいいって思ったのかなって、今思った。」
「今?」
「そ さっきはそういうことまで考えてなかったんだけどね。遊馬の判断を無条件に信じてるんじゃない? だから不安がないっていうか・・・遊馬が言うなら大丈夫って・・だから 目の前に遊馬がいて逆に安心しちゃったんだよね、きっと。」
叱られた子供みたいな顔して言う野明に「その結果が 『おはよう』か?」と言うと遊馬はやれやれと肩を竦めた。
「全面的な信頼を頂けるのはありがたいんですけどね、少しは考えろよ?一応 俺だって健康な成人男子だし?」
言われて野明は改めて自分と自分の周囲に目を配る。
「あ そうか、そうだよね。」急に状況が飲み込めてきたのか顔が真っ赤になってきた。
「今頃赤くなるなよ、迂闊なやつ」
「あの、えっと・・・」急に慌て始めた野明を見て『やっと頭が回ってきたみたいだな』と呆れ半分で様子を見る。
よっと声を掛けて ベッドから降りるとコンビニの袋から水を取り出し「飲むか?」と声を掛けた。
野明がブンブン首をふったので黙って一気に1/3ほど飲み干すとボトルをナイトテーブルの上に置き、ついでに時間を確認する。
「さて、ともう3時前だな。折角 ベッドのあることまで来たんだから少し寝とけよ?」
言うと遊馬は2台のベッドを示して野明に「どっち使いたいんだ?」と訊いた。
最初に寝かされていたほうと、今座っている方。
野明は少し考えて「そっちにする。」と最初にいた方に慌てて移動した。
「焦んなくていいから ゆっくり動けよ?」そういうと自分は空いた方のベッドに腰掛ける。
各々 寝る場所が決まると遊馬はシーツを引き寄せてごろんと横になった。
野明も同じように横になりながら遊馬の様子を心配そうに伺う。
視線を感じで振り返ると不安気な顔をした野明と目が合った。
肩肘をついて頭を起こす。
「安心しろ。手ぇ出したりしないって約束してやる」
「うん。」返事をしながら野明は複雑な顔をして見せた。
「信用できない?」
「そうじゃなくて・・・」と野明が言い澱むと遊馬はすいっと目線を外して言った。
「言い訳するのも、されるのも御免だからな。こういう時に手は出さん。判ったらさっさと寝ちまえよ? 俺も寝る」
そういうとそのまま目を閉じてしまった。
野明はその様子をみて「うん、おやすみ 遊馬」といって同じように目を閉じた。

翌朝 野明が目を覚ますと遊馬はぐっすりと眠っていた。
時計を見ると7時を少し回っている。
お酒の匂いが残っているような気がして、もう一度シャワーを浴びようと掛けておいた服を取りに行き 部屋のゴミ箱に気がついた。
中には Tシャツが入っていたと思われる袋が2つ無造作に捨てられていて、野明は今自分が着ているTシャツは遊馬が買って来たという事に改めて気がついた。
『ないよりいいだろう?』といって無造作に手渡した遊馬を思い出し、ここの寝巻きが浴衣であったことに思い当たる。その気遣いに思わず笑みが零れた。

シャワーを浴びて軽く化粧を施して部屋に戻ると 遊馬は起き上がってTVを見ていた。
「おはよう 遊馬。」と声を掛ける。
遊馬は「おう」と短く返事を返すとベッドから降りてズボンを手に取ると「俺も浴びてくるわ」といってバスルームに向かった。
遊馬のいたベッドに腰掛けるとTVを眺める。
遊馬のいた辺りはまだ少し暖かくて野明はぽすんとそこに倒れこんだ。
結局 遊馬は宣言どおり野明に一切手を出すことなく夜があけた。
それにホッとしたのか、残念に思ったのか自分でも良くわからなかったが何かあったら今ものすごく気まずかったのかなと思うと やっぱりこれでよかったんだ、と思えた。

暫くそのまま目を閉じていると 頭の上から遊馬の声が降ってきた。
「こーら、二度寝するとチェックアウトに間に合わなくなるぞ」
見上げると 遊馬はTシャツにズボンを身につけて苦笑していた。
時計は8時半を少し回っていて 「チェックアウトって何時?」と訊くと「10時」と短く答えて遊馬はベッドの上に胡坐をかいて座った。
身体を半分起こして 見上げると目線をおとした遊馬と目が合った。
「化粧 したんだ?」
「緑みたいに上手く出来ないんだけどね」照れくさくなって笑う。
「それは練習次第だな」軽く笑うと「いいんじゃね?」と言って髪を撫でる。
その手はとても心地よくて思わず目を閉じると遊馬は呆れた声で「本当に無防備な奴だな」といって頬に手を添えた。
ファイル 21-1.jpg
「こんなこと 今回だけだぞ?」そう言って苦笑する。
「こんなことって?」思わず聞き返すと まっすぐに目線を合わせて遊馬が言った。
「次 同じような事が有ったら手を出さない保証ないからな。」
眉間に皺を寄せて小さい子供に注意するように言われてしまった。
「はい、以後 気をつけます」思わず 神妙に返事をする。
「よし。じゃ 出る準備するかな」と言って大きく伸びをすると遊馬は洗面所に向かった。
その後姿を見ながら野明は何となく幸せだなぁと思った。
用意を終えた遊馬が野明に声を掛ける。
「な この後どうする、寮に帰るか?」
少し考えて「やっぱ洋服は着替えたいかな」というと、遊馬は「だよな」と頷き「じゃ帰るぞ」といって手を差し出した。

ホテルをでて駅に向かって歩く。
「準待機って あと4日だっけ」野明が話しかけた。
「ん? そうだな」
野明は 少し考えると小さな声で言った。
「ね、もう少し一緒に居ていい?」
遊馬は軽く目を瞠る。
「いいけど、一旦帰るんだろ」
「うん、一度着替えてその後ね」
「どっか行きたいとこあるのか?」
「う~ん どうしようかなぁ」
嬉しそうに話す野明を見て遊馬が提案する。
「軽井沢、とかどうだ?」
「この後?」
「そ、四日あるし」
「四日?」
その言葉の意味を考えて泊まりの旅行ってことだと気付いてドキッとした。
「遊馬、さっき 行動に気をつけろって言わなかったっけ?」
一度気付くとドキドキして顔を見れない。
「だから、確認とってんだろ?」楽しそうに遊馬は笑う。
「・・・そーゆーのは 彼氏と行きたい」野明は顔を赤くすると目を逸らした。
「俺も彼女と行きたいけどね。で どうする?」
逸らした顔を追うように野明の顔を覗く。野明は視線を外すようにして答えた。
「・・・彼氏が出来たら考える」
遊馬はにっと笑って耳元で囁いた。
「じゃ来いよ、彼女にしてやる」
言われて心臓がキュッと縮まる感じがした。
「・・・・偉そうなんだから」
わざと大きな溜息をついた。少し黙っていると「で、返事は?」と悪戯っ子のような目で遊馬が返事を促す。
恥ずかしくてそっぽを向いたまま「・・・あとで迎えにきてね・・・」と小声で応じた。
それを聞くと遊馬は悪戯っぽい笑顔のまま続けた。
「了解、あ そうだ、『手を出さない保証はしない』からな?」
吃驚して顔を上げると目線があう。
野明は「そういう事いう?」というと遊馬の腕に額をつけたまま暫く顔を上げられなかった。
顔を真っ赤にしている野明を見て遊馬は声を上げて笑った。

END

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追記

無駄に長い割には うちの遊馬は結局手が出せませんでした(笑)
次回は 少しは手が出せるのか?
別に続く予定は無いのですが(笑)
結局 軽井沢に行ってもあんまり進展がなさそうなのが さくらのとこの遊馬です(^^;
長いおまけ駄文にお付き合い有難うございました~

コメント一覧

ASAKI 2009年06月01日(月)21時25分 編集・削除

さくらさぁ~ん、さて、『軽井沢編』いってみよ~
やってみよ~(オイオイ(^_^;))
遊馬~カッコイイなぁ~

黒の胎動~亡霊ふたたび見たよ~ん。
ふふふ。カッコイイ❤
遊馬の最後の「バカ」が素敵でした(^_-)-☆

さくら 2009年06月01日(月)21時43分 編集・削除

>ASAKIさん

ASAKIさ~ん書ききたくても技量が無いよ(笑)
妄想してても文章力がついていかないの。
ASAKIさんの文章力 分けて♡
遊馬かっこいい? 不甲斐なくない?!
ここまで来ても 手は出しません、出せません(笑)
うちの遊馬は私に虐められてますね。

ちなみに遊馬の「言い訳するのも、されるのも御免だ」の下りは 大学の時の彼氏がそういったんだよね(笑)
成り行きでって言うのは御免だよ、って。
今更だけど良いネタくれて有難う、かな(←おいおい)
黒の胎動~亡霊ふたたび 見た?
遊馬かっこいいよねぇぇ!!
わたしも 最後の「ばか」が凄く好き♪
古川さんの魅力炸裂ですよねぇぇぇ!!

ASAKI 2009年06月01日(月)21時54分 編集・削除

何度も戻して見直してしまった(>_<)
どんだけ、遊馬素敵なんだ~~~(^_-)-☆
ってか、伊藤和典先生はやっぱり視聴者の立場に立った脚本を書かれてるのですかね??
それともこれが自然だと思ってらっしゃるのかしら?
はぁ~

元彼、おもしろすぎ!そりゃまぁ、いいネタくれてありがとうですよね(笑)でも、責任感ない人間にゃ、言えん台詞ですよね~カッコイイな❤

さくら 2009年06月01日(月)22時10分 編集・削除

>ASAKIさん
伊藤さんの脚本って結構面白いですよ(^^)
雨の日にきたゴマ なんかもそうですし♪
基本 ああいう雰囲気好きなんだと思いますよ☆

元彼 面白いでしょ?
あの時って私も妙な切り返ししたんだよねぇ。
傍から訊いてると漫才だったんじゃないかなぁ?
責任感はある人だったわねぇ。(←遠い目・・・)

tera 2009年06月02日(火)01時56分 編集・削除

言い訳するのも、・・・の台詞、いいですね。
男らしいじゃないですか!!
あと、彼女にしてやる、って古川さんの声で言って欲しい(←ああ、バカ)
焦らし、大いに結構♪、大好きかも。

あ、ちなみに責任とれる決意ができるまで手を出さない、といわれたことはありますよ、結局、手を出されましたが(笑)

さくら 2009年06月02日(火)02時12分 編集・削除

>tera様

古川voiceで言われたら着いて行きますとも(笑)
焦らし OKですか?
というか力量が無くて書けないんですけどね(^^;
好きといってもらえて嬉しいです♪

責任取れる決意が出来るまでか~ 友達もそんな事言われて4,5年待たされてたな(笑)
その間に他の女に手を出して修羅場があったっけ・・・他人事なのでものすごい冷静に見れたけど、当事者の彼女は半狂乱でしたね(^^;

元彼の台詞はね~ 今思えば男気があったのかも知れませんが。当時はそこまで気が回らずに妙な切り返しをしたのでその時は雰囲気に至りませんでした(笑)
若かったなぁと思うエピソードの一つ、ですね(^^;

ツッジー 2009年06月02日(火)09時40分 編集・削除

読んだ!!読んだよぉー(≧∀≦)

彼女にしてやる

だなんてぇー(*/∇\*)))イャ――――冫♪

興奮しすぎて、文字打ちミスばかりですすまなーい(〃^∇^)o彡☆あははははっ

軽井沢編が楽しみ(≧∀≦)

手出すんだー!!遊馬!!!

さくら 2009年06月02日(火)09時52分 編集・削除

>ツッジー様
「彼女にしてやる」に喰いついてくれました?(笑)
嬉しいです♪

で 軽井沢。。。書く技量が無いんですよ、どうしようΣ(T□T)

ツッジー 2009年06月02日(火)11時01分 編集・削除

大丈夫!!

さくらさんなら書ける!!!!

私にも素敵な話が書ける技量わけてくれー!!!

&がんばれー(≧∀≦)

さくら 2009年06月02日(火)14時36分 編集・削除

>ツッジー様
ふええ・・・どうしよう ヽ(+▽+)ノ
ステキなって・・・ツッジーさんの約束に惚れましたよ☆
私にあの文章力、下さい(笑)
この続きは・・・・いつかそのうち・・・かけるのかなぁ・・・(^^;
鋭意 努力します☆

そおた。 2009年06月02日(火)22時19分 編集・削除

こちらからで何ですが、2000hit突破おめでとうございますvvv
これからも日参させていただきますので!
マメな更新、見習いたいですわ~。

忙しい×2と言いながら、毎日お邪魔させていただいていましたが、
野明の揺れる心境とか、みんなにからかわれて仏頂面してるであろう
遊馬とか、どきどきしながらお話拝見してました!

「言い訳するのも、されるのも御免だからな。」
なんて、いかにも遊馬言いそうです!そういうところは、初めてじゃなく
ても(え?)、意外ときっちりしてそうですもんね。
でも“健康な成年男子”としては、あんまり信用されすぎてるのも複雑な
心境かもしれないですねー。
ましてや好意を抱いている女の子からその扱いは…。
軽井沢編、私も希望しまーす!
じれじれな二人の初お泊まり♪どうなっちゃうんでしょうね?
むふふふーです。。。

さくら 2009年06月02日(火)22時47分 編集・削除

>そおたさま
皆さまに支えられて2000hit突破しまして、本人が一番びっくりです(笑)
コメントやカウンターが心の支えですのでぜひぜひ 遊びに来てください(^^)

駄文をそおた様にもごらん頂いているかと思うと嬉しいやら恥ずかしいやら(*ノ▽ノ)
ドキドキしていただけたら 本望です♪

「言い訳・・・」遊馬らしいと言っていただけて嬉しいです(^^)
私も 遊馬は意外とそういうところは変にキッチリしてそうだなと思いました(笑)
好意のある相手に全面的に信頼されまくると男性の側は辛いのかもしれませんね。信じてもらえないのも困るけど、これじゃ手が出せない(^^;
でも 野明ってこんなもんだと思うんですよね☆
かつて私も 彼氏持ちだった自分に物好きにも好意を持ってくれていた人にそうとは知らず「力になるから悩んでるなら相談してごらん」的なことを言って相手を絶叫させたことがあります(^^;
天然って怖いんですよ・・・
ちなみに私以外は彼氏も含めてその人が私に好意が合ったことを全員が知っていたんですよね。誰か言ってよ、って感じでした(T∇T)

軽井沢編 希望ですか?
あああ どうしよう・・・本当にじれじれで何にも進まなかったりして・・・(笑)
希望してくださる方が ツッジー様、そおた様とお二人も・・・
無い知恵と語彙力かき集めて頑張ろうかなぁ・・・・
気長にお待ちくださいね♪(←ちょっと前向きになってきた)

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