あんだ〜ば〜EX ラジオドラマ 〜1回目〜
『──第1幕──影の伝説
光が隠れる時──
闇が隠れる時──
影がすべての力を持つ──
箱舟消えし時、影を闇と反し時──
小さき4つの輝き、訪れる──
小さき4つの輝き、現れる──
光が戻りし時──
闇が戻りし時──
始まりの時──
』
そんな1文をアインがスピーカから流すと、
降りていた幕が上がる──
ステージの上はまだ真っ暗である。その場には何人もの人たちが立ち…い
や…座ってる?…つくしている。
少しずつ天井から降りるライトが強まる。
その中央には一つのテーブルを囲んだあたしたち4人。
『むかあ〜し、むかあ〜し、あるところにお爺さんとお婆さんが…』
『…必殺…どつき蹴り…』
ごすっ!
スピーカからそんな声と音が流れた。
『いちゃいの…』
『…やかまし…まじめにやらんかい!!』
『…し…失礼しました…えっ…え〜と…
──お話は2日ほど前に戻ります──』
と──
簡素なテーブルに打ち付けられる木製のジョッキ。飛び交う哄笑。
『ありふれた酒屋。人々は笑い。称えあい。ジョッキの楽器が店中を奏で歩
き、ウェイトレスは働きづめ。犬が歩けば棒にあたり──』
…こら…
『お魚くわえて陽気なオバさんに追っかけられてる猫…その猫はタマと呼ば
れているのはここではまったく関係ない独り言…』
『必殺…』
『きゃああああああ〜もう言いませんもう言いませんごめんなさい…だから
どつき蹴りはあ〜…』
『…続けろ…』
「…こ…怖いやっちゃな〜」
ガウリィが呟く。
「目に浮かぶな。半眼状態でアインを見る達也の姿が…」
こく…
ゼルの言葉に無言でうなずくあたしたち。
『そ…そんなお店に彼女たちリナ一行はいました。そしていつもの通り…』
「うっしゃっ!すきあり!!」
「うおっリナっそれはオレの鳥のから揚げっ!」
「っと言ってるそばからえびフライをとるなああぁーーー!!」
「っ!!」
後ろに人の気配。
「お待たせしました!」
って…舞!
「ご注文のひらめのチーズ和えのムニエル4人前です」
…へ?
「ねぇ…ゼル…こんなシーンあったっけ?」
「いや…ないはずだが…」
だよねえ…
「では、ごゆっくり…ほっほっほっほっほっほ…」
引き返す舞。
なに?何だったの?あいつは?
「ただ出てみたかっただけでは…」
「この後、あいつにも出番があるだろ…」
「そうですよね…」
どたん、ばたん、どご、ばきいぃ、どたどたどたどた…
うや?なんだ?やけに騒がしいぞ…
「うっしっ!そのムニエル貰っ…」
しゅっ
あたしのフォークが一線。
がきぃっ!
な!なにいぃー!!
それを止めたのはガウリィの魔の手ではなく、
「お客様!!!!」
『どえっ』
いきなり現れたから本気で驚いた。
…今度は…達也が出てくるし…フォークもって…
「…ぜえ…ぜえ…はあ…はあ…お…お客様…申し訳ありませんが…」
その料理…こちらに手違いにより運ばれてしまいました」
「え?そうなのか?」
ガウリィが答える。
「その料理をあげさせていただきたいと思っているのですが」
「持ってくのか…」
「別にこのままでもいいわよ。その分、代金は払うから」
本当に払うわけじゃないけど。
「いいえ。それでは当店の威信にもかかわりますので…」
「いや…でも…」
そして彼は小声で、
「…舞の料理を食いたいのかおまいらは…」
ぎしっ
空間がきしんだ。
『………………』
「あ…あははははは…そ…そう…あなたがそこまで言うんなら仕方ないわね…」
「え〜何でだよ〜こんなにうまそうな…」
「あんたは黙ってる!」
「…は…はい…」
「では…失礼します」
彼はひらめのムニエルちゃんを取り上げ、颯爽とステージを後にする。
思わず彼の姿を目で追うあたしたち。
ガウリィは料理に未練が合ったんだろうけど…
しばし──
「てめぇはいったい何を考えてる…いっぺん猫斗犬と同じように東京湾に沈
めたろかあーーーっ!!!!」
「…にいおえええぇぇぇーーーー!!!」
一つの悲鳴──合掌──
『そっちはそっちで話し進めててください…』
「そ…そうね…」
瞬間──
しゅんっ!
ガウリィの剣…もとい…フォークがまたまた一閃するとあっという間に、
あたしの前の皿にある卵焼きを奪っていく。
ふっ…
「甘いっ!」
ガウリィのフォークにあたしのナイフが迫り、2つが交わるとそのまま獲
物を振り上げる。ガウリィのフォークから離れ高々と舞い上がる卵焼き。
ちょうど目線あたりにまで来るとフォークを突き刺す。もちろん、片方の
ナイフでガウリィのフォークを牽制するのは忘れない。
そして卵焼きは、あたしの口の中に入る。
『それはほんの一瞬の出来事。それが何度も何度もその場で繰り広げられる。
色々な展開を見せ、全ての皿から料理が無くなったところで本日…いや…今
日の昼食…の戦闘は終了した…と言うとなかなか聞こえが良いが…他人から
言わせればただ単に食い意地が張っていただけのこと…まあ、そんでもあた
しの目の前でそんなことを言えるような人間など、いやしないだろうけど…』
「アイン!別に説明しなくていいってば!!」
『いや〜手持ち無沙汰だったもんでつい…』
「ついじゃない…」
…さて…そろそろだが…
6人用テーブルだったため二人分空いていた、その2つの椅子が突然、同
時に動いた。
そして、ある人物たちが座る。
「…………」
あたしは無言でレモンティを一口含む。
他の三人はその2人に目が向いている。
「君たち魔道士のようだが腕には自身はあるかな?」
彼はいきなり、そう問いてきた。
それを飲み干し──
「…で、みんな、この後の予定なんだけど…」
年の頃は40前後。黒髪のつんつん頭。端正な顔立ちだが、多少無表情な
感がある──
「…そうだな…そろそろ…ここを出てもいいかもな…」
と、何事も無かったかのようにほほんとガウリィが口を開く。
「で…次はどこに行きます…確かこの先の町は港に近いらしいですから、お
魚料理がおいしいんじゃないんですか?」
この辺の地図を開き言うアメリア。
「その町には何か遺跡でもあるのか?」
「…ええ〜っと…そうですね…」
「…お願いだから…私の話を聞いてくれないかな…」
『いや(はあと)』
あたしと会場からの何人かから、きっぱりはっきりの断りのセリフがはもった。
「……………………こほん……実は今、われわれの国土内では腕の立つ者た
ちを集めている」
「おい…おっさん…あたしはいやだって…」
「いったい何のためにそのようなことをしているのかは私にもわからないが…」
「いや…だからあのね…受ける気は…」
「一人当たり金貨50枚。健闘してくれた者たちには+100枚追加される」
「犬とおよびください(はあと)」
『…おい…』
無視。
「しかも…今、その申し出を飲んだものには…」
おっさんの隣に座っている女性がはじめて口を開いた。
「…このぴこぴこリナちゃんが…」
…おい、おい…劇の中で広告するな…
「…と…とにかく…もう少し詳しいことを聞かせてくれる?」
「うむ…いいだろ…まず…聞いて欲しいのはつい2日前におこった出来事だ。
この国から少し外れた場所にある山に突如、巨大な光の玉が飛来した」
「ええ…それなら知ってるわ…最近、あっちこっちでそのうわさで持ちきり
だもの…」
「そう言うことだ…詳しい話し終わり」
『は?』
「ん?聞こえなかったのか、話は終わりって…」
「あほかああーー!それじゃあ、詳しい話もあったもんじゃないじゃない!!」
「だから、言っただろ。何のためにそのようなことをしているのかは私にも
わからないが…って!」
「いや…そうだけど…」
「どうするんだリナ?」
「どうするも何も…」
「リナ?あなた様はリナさんとおっしゃるのですか?」
「え?あ?うんそうだけど…」
「あの…本名は?」
「リナ…リナ=インバースだけど…」
「あなたが!あの!!」
驚く彼女。
じゃあーんっ!!!
そして音楽とともに1幕は下りた。
あまり、話が進んでなかったような気がする人、気にしないでね(はあと)