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【UEA】スレイヤーズSTS 〜3回目〜


**** LINA ****

「ラブナ──」
「緊急警告!」
「──ブレ…あ…あん?」
 神滅斬の『力ある言葉』を唱えようとした時。
 あたしはアインが叫ぶその一言で呪文を中断してしまった。
「どうしたアイン?」
「北東20000にミサイルを感知。形式は…」
 彼女がしばし黙る──
「143型α!」
「なんだって!」
 その2人の叫びと緊張する姿をあたしは始めて見たかもしれない──
「…ちょっと…その143型αってなんなの?」
「アイン…デルスターの反応は?」
「…ねえ…」
「ありません」
「…ねえったら…」
「探知範囲を最大にしてるのか?」
「…もしもーし…」
「もちろん」
「…………」
  …むかっ!………
 達也がいきなりこっちを振り向く。
「後で話す!」
  ……ちぇっ…達也のやつ、あたしが火炎球を唱えていたのに気付いたか…
「もしかしたら…ミサイルだけを転移させたんじゃないでしょうか…」
「なるほど、ミサイルだけ送って後は高みの見物って訳か…あいつらしいな
…アイン、ミサイルがセイルーンに到着する時間は?」
「…あの…あいつって…」
「だから後!」
  …う〜っ!達也の意地悪…
「約5分ですね」
「…わーた…」
  だっ!
  と返事と共に達也はいきなり駆け出した。
  …ちょ…ちょっと…
「説明してくれるんじゃなかったのー!」
「だから後!」
  振り向かずに、大声で叫ぶあたしの問いに答える彼。
「後っていつよー!」
「1億5千万年後ー!!」
「んなに待てるかー!」
 あたしの叫びは周囲の壁に吸い込まれていった。



 走る、走る、走る、走る、走る、走る、あたしは走る。ガウリィも走る。
ゼロスも走る。アインも走る。達也は先行を走る。
 あたしは走る。走る、走る、走る、ガウリィぼける。あたしはこけた。ゼ
ロスは笑う。
 あたしは起きる。再び走る。ガウリィも走る。ゼロスも走る。
 あたしは走る。ガウリィまたぼける。あたしは蹴る。どつく。殴る。吹き
飛ばす───
 こうして、やんやかと騒ぎながら、あたしたちはセイルーンの外れまでやっ
てきた……………………………が……
「…をひ…」
「…なんだ…あれ…」
「いや〜はっはっはっはっ…これは、これは…」
 …な…なんなのよ…あれは…
 すでに日も暮れ真っ暗な闇から一つだけ赤赤と燃えながらそれは飛んでき
ていた。
 あたしはあれを指差しながらアインの方を向いて聞こうとしたが、みっと
もなく口をぽかーんと開けているだけ…言葉が出てこない…
 そのあれとは───
 不思議な物だった…細長く…たとえるなら丸太みたいな物で、長さは大の
大人5人分ほどある…そいつが後ろから火を吹きながらとんでもないスピー
ドで飛んでくるのだ。
 驚かない方がおかしいだろう。
 ガウリィもゼロスさえあたしとおんなじく口を開けっぱなし…いや…ゼロ
スは笑っているから口を開けてたりするんだけど…
「な、なあ…リナ…あれっていたいなんなんだ?」
「…しるわけないでしょ…ゼロス、あんたは知ってる?」
「…はっはっはっはっはっ…あっ?いえ…僕もあれは見たことありませんが
…」
「…そう…」
 魔族のゼロスが知らないとは結構珍しいのではないだろうか。
 あのカプセルもそうだし…
 そのゼロスが知らないことを知っていた、この2人──いったい何者なの
だろうか。
「…でもよ…どっかで見たことあるのよねえ…」
  え〜と…あれは確か…ダークスターの武器を捜す………ジラス…そう言え
ば…あいつが火薬と言うやつでドラスレ並みの爆弾を作った物と……え?…
まさか………
「…ジラスの爆弾……」
  思い出したっ!あれとまったくとまでは言わないが、そっくりだ。
「まあ…確かに爆弾の様な物ですね…一様…ミサイルって言うんですけど…」
  アインがにこにこしながらあたしに言う。
「だああああ〜こんな時にのんきに名前の訂正なんてしなくていい…それよ
か、あの爆弾どうすんのよ!!あれっ!あれっ!あれっ!!」
  指差すあれは依然としてこちらに…
「そりゃあ…何とかするっきゃないだろう…」
 と達也。
「何とかって簡単に言うけど…」
「何とかしなきゃセイルーンは木っ端みじんだぜ」
 …こ…木っ端って…
「…アイン…R<IN>(アール・イン)キャノン、転送してくれ…」
「了解っ!転送します…」
 その直後、達也の目の前の空中に閃光とともにある物が現れた。
 それは大筒のようなそんな…
「どわあぁ!…り、リナ…あれ…あれ、あれ!いきなり現れたぞ!」
「…現れたわよ…」
  まともに驚きの声を上げたのはガウリィだけ。そのガウリィに冷たく言い
返すあたし。
「驚かないのか?いきなり現れたんだぞ!あれっ!」
「あのミサイルって言うのを見てからじゃなんも驚かないわよ…ゼロスだっ
て消えたり現れたり魔族だったり…あたしの忠実なアイテムだったりするし
…」
「おぉっ!」
  やおらぽんっ、と手を打つガウリィ
「言われてみれば…」
「…リ、リナさん…忠実なアイテムって…」
「それがいやなら、フィリア命名『生ごみ』なみのアイテムにしてもいいわ
よ(ハート)」
「…忠実でいいです…」
  よろしい…ってそれよりも…
「ねぇ…アイン。あれっていったい何なの?まさか大砲みたいに鉄球が出て
くるとか…」
「そうですね。基本的にはそれから発展したといえばいいのかな…出てくる
のは…結構強力なエネルギーだけど…ずずずずうぅぅ…」
  ……………をひ…ちょっとまてえい…
 ぐわあしいぃ
 っと彼女の首を絞めあたしは叫ぶ。
「あ・ん・た・あ・ね・えぇぇぇー!んなもんを使おうとすんなあっ!!」
「…ぐ…ぐるじいぃ…」
「…おーい…」
「んなことしたら、この辺もセイルーンも爆発に巻き込まれるでしょうがあ
ああぁぁぁーーーーーー!」
 彼女の首を絞めながらぐいんぐいんと振り回す。
「…リナ…」
「お茶なんぞ飲んでないでさっさと達也を…」
「リナ!」
「…とめな…なによ!ガウリィ!」
「あいつ何やってんだ?」
「あん?何って?」
  ガウリィの指さす方へ振り向……うげっ!
  達也はあの大筒を肩に乗っけミサイルの方に狙いをつけている。
  あのバカ、撃とうとしとるやんけ!
「…ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと…」
「いっけええぇーい!!!」
  かあああぁぁぁぁー!
  大筒から一瞬、強力な光が発したと思うといっきに光の柱が伸び、ミサイ
ルへと向かった。
「ひぴいぃやあああぁぁぁぁー!」
  おとうちゃん、おかあちゃん。先ゆく不幸をお許しくだしゃいいぃぃーー
ーー!!
 ………………………………………
  ………………………………………
  ………………………………………
  ………………………………………
  ………………………………………
  ………………………………………
  ………………………………………
  ……………………あ…あれ?……
「…リナ……」
  え?
  目の前にガウリィ……
「いや〜リナさんも大胆になりましたねぇ〜自らガウリィさんに抱き着くん
ですもん」
  ………あ゛…あ…あ…あ……ぁ………ぁ……………
「ああぁぁぁ〜達也!未成年が見てはいけませんっ!」
 アインが達也の目を両手でふさいでいる。
「…おまいさんの方が年下だろうが…」
「体は立派な大人だもん!」
「精神年齢は赤ん坊だが…」
  ガウリィがあたしを抱きしめて…じゃなくて…あたしがガウリィに抱きつ
いてる……いる…いる…いる…い…
  あたしは顔に血がのぼるのを感じ…
「…○×△÷/□※◇Ω…」
  …もう、訳のわからぬ言葉を言いながら、ガウリィをぶん投げたのはその
あとのことである。



「…ぜい…はあ…はあ…ぜぇい…」
  肩で乱した息を整える。
「いやあ〜見事な暴れっぷりですねぇ…先生」
  眼鏡をかけたアインと付け髭をつけた達也がどっからだしたか、長いテー
ブルに銀色の鉄らしい物で作られた何かの手前に肘をつき、椅子に座ってい
る。
「あ〜あ〜、マイク、ちゃんと入ってます?入ってる…こほん…ええ〜そう
ですね。最初に見せたスクリューパンチ、そこにすかさずバックドロップ。
最後におきて破りの火炎球と爆裂陣。いや〜見事な連続技です」
  腕を組み、うんうん、うなずく達也。
「あのねぇ、あんたたち。誰のせいでこんなことになったんだと…」
『リナが勝手に勘違いをして、勝手にガウリィに抱き着いて、勝手に暴走し
ただけ』
  ときっぱり言う達也とアイン。見事にハモっている。
「なーんーでーすーてぇーーー!」
  ずかずかと達也まで近づく。
 その剣幕にびびり、眼鏡がずり落ちるアイン。
 そしてひげが取れかかる達也が叫ぶ。
「ちょ、ちょっとまった、リナ!おまえさんのその目、すんげえ怖いって」
「やかましい!!」
 ばんっ!
 両手でテーブルをたたき、
「だいたいあんたがあんなことをするのが悪いんでしょうが…そのせいで…」
 その勢いに1歩後退する達也だが、そこで踏みとどまり、
「…ま、まあ…んなことより…ほり…そっち見てみりょよ…」
「………ああん…」
  達也の指差す方を何気なく振り向いて…………
「………………………どっしぇーーー!」
  ずざざざざざざざざざざああああああぁぁぁぁぁっ!
  あたしは悲鳴とともに慌てて後ろに後ずさり、
「…みみみみみみみみ…みさみさみさみさみさ…」
「みさ?ミサって…カトリック教会の祭典の?」
「そうじゃなくって…ミサイルって言いたいんだよ…」
「…そのとおり…訂正ありがと(はーと)」
  あたしは達也に笑顔でお礼を言…って…うわああああああぁぁ…自分で言
うのもなんだが動揺してんのがわかるうぅぅ…
  あたしは若干、数メートル先のこいつを指差して、
「な、な、な、なんで、こ、こ、こ、こんなとこに、ミサイルが止ま、止
ま、止ま…」
  …………止まってる?……
「…あれ?なんで…?」
「あのなあ…リナ…」
 あきれ果てた声を出し達也は言葉を続ける。
「…俺だってバカじゃないんだから…迎撃すれは爆発に巻き込まれるぐらい
わかるぞ。だから結界を張ったんだろうが…」
「…結界………」
 ……そっか…あたしは確信した。
「魔族を閉じ込めた時のあのカプセルと同じ方法なのね」
「ぴいぃんぽおぉーん」
  にこにこ顔でアインは指を立て…やっぱりね…その正解にあたしは自慢げ
に胸を張ろうと…
「おおはずれえぇ(ハート)」
  どしゃあっ!
 …してそのまま後ろに倒れ込んだ。
「ありぃ?どうしたの?」
「どうしたのじゃなああーい!はずれてるんならピンポンなんて言うなあぁ
!!」
「…だあって…たまには『ピンポンはずれー』とか『ブブーあったりー』と
かって逆をついて、その当人の人を暴走させてみたいっていう気分になっちゃっ
たんだもん。それも乙女心のなせる技ってーやつよ!」
「んな乙女心があるかあーーーー!」
「え?そうなの?」
 達也に問うアイン。
「俺に聞くなよ…女じゃねえんだから…」
 ぼつりつぶやく彼。
「あっそういや、街の中で男にナンパされかけた事もあるっけ(はーと)」
「…う、うるせい…」
 明後日の方向を向いて口をとがらせる達也。
「…で…どうすんだあれ…」
 ガウリィが口を出した。あれとはミサイルのことを指すのだろう。まあ、
ガウリィだったら全く関係ない物をしめしそうな気もするが…
「さて…どうしようかねえ…爺さんや…」
「…アイン…何で俺がいきなし爺さんにならなあ、あかんのだ…」 
「…うふっ…ひ・み・つ(ハート)」
 アインは口元で握り拳を作り体をひねる。
 あたしの『必殺ぶりっこ攻撃』にそっくひだ。
「…いつも言ってるだろ。そういう不気味なことをすんなって…」
「そんな…こんなカワイ子ちゃんを捕まえて不気味だなんて…しくしく…お
母さん、悲しくなっちゃいますわ」
「…また…一人で訳のわからんことを言ってるし…」
「…なあ…どうすんだ?」
 そんな掛け合い漫才など無視して…もしかしたら意味がわかってないのか
もしれない…ガウリィが再び聞く。
「ん?ああ…それなら…」
 ぱんっ、と手をたたき彼は小さな声で呪文を唱え、少しずつ両手を開いて
いくとそこには青白い光の球が生まれどんどん大きくなっていく。
 マニュアルどおりの火炎球の作り方ね…………おや……この呪文…
「もしかして…あれを結界の中に放り込むのかな?」
「ええ…そうですよ…」
「どうやって?あの中は時間が止まってるから中に入ったら当たる前に止まっ
ちゃうんじゃないの?」
「止まってませんよ…だから、はずれって言ったんじゃないですか…」
「えっ!あれってたんなるおちゃっぴーのいたずらじゃ…」
「違いますよ。あたしはそこまでバカじゃありません!」
 アインがはっきり言い放つ。
 …ホントか…をい…
「あたしがリナさんに聞きましたよね。結界を造りだした時、中と外とはど
んな風に違う状態になるのかって…」
「ええ…だから時間経過の違いでしょ…この結界…」
「もう一つは全く異質な物体…じゃあ…結界の出入口はどうなります?」
「…出入口……あ!そっか…そういう事ね」
「なるほどそう言う使い方もあるんですね…」
 どうやらゼロスもわかったみたいだ。
「え?どういうことなんだ?」
 問うガウリィを見てみると、『?』マークを書いた札らしき物を、頭の上
辺りに出していたりする。
 このクラゲは…あっいや、いつものことか…無視っ無視…あたしはアイン
の方へ再び顔を向けて、
「…合わせ鏡…つーか…無限空間をあそこに作りだしたのね」
 …そういや…フィブリゾもサイラーグで同じような、ねじ曲げた空間を作
ってたっけ…
 つまりあのミサイルは前にある入口に入って、後ろにある出口に出てくる。
それが何回も繰り返されてるって訳だ…止まって見えるのはそういう風に、
見える結界にしているんだろう…何となくこの人達ならそのぐらい出来そう
な気もするし…よくよく見てみればミサイルが吹いている火が揺らめいてい
る。もっと早くそのことに気付いていれば止まっていないと解ったのかもし
れない。
「ブブー」
  あたしのセリフに彼女は言いながら、にこにこ顔で指を立て…
『おおあたりいぃぃー(ハート)』
 …先を見越して言ったあたしとアインの声は見事にハモリ、
『あははははは…』
そしてその後2人一緒に笑った。




**** TATUYA ****

『あははははは…』
 二人が笑っている。
 何で笑ってんのかしらねぇが…仲良くしているのは良いことである。
 生まれたばかりのアインなんて、おもいっきし真面目で感情なんてほとん
どなくて笑うことをしないヤツだったからなあ…
 まあ…今の性格も、ちと、問題があるとは思うが…
 オレの両手の間に生まれる青白く輝く光の球が完成した。そして──
「火炎球っ!」
 力ある言葉と同時にそいつを結界に閉じこめたミサイルに軽く放り投げる。
 火炎球はかなりの速度で結界を通り抜けミサイルとぶつかりあって。
 ぼおんっ
 結界内で派手な爆発が起こるが、その見た目とは裏腹にあまりにも小さな
爆発音が俺達の耳に届く。
 しばらくして──もうもうと煙が立ちこめ…
 それは結界内で起こっている出来事。
『……………』
 球体のスクリーンで、映画を初めて見せられている状態か、言葉さえ忘れ
見入っているリナにガウリィ、ゼロス。
 そりゃまあ、初めてあんな物を見せられたら言葉を失うのはわかるが…こ
の後に起こることを見れば更に驚くことになるんだぞ!
 そして3分ほど──
 っと、突然、煙が薄くなる。
 だんだんと結界内の景色が見えると、3人は絶句した。
 真っ黒い穴がその煙を吸い込む。風船のように浮かびそのまま闇に吸い込
まれる巨大な岩。
 岩と岩がぶつかり合い砕かれ、その破片が勢いよく穴に吸い込まれる。
 オレもあれを初めて見せられた時は似た反応をしてたな…
 143型αミサイル──それは爆発数分後、その場にブラックホールを発
生させる兵器。そしてこれを開発し唯一作ることのできる者がゼオただ一人。
 この星に来る前にも一度、こいつを食らってきたが、ブラックホールが発
生する前にその場から撤退してきたから、とりあえずそん時の被害はなかっ
たが、あのまま居座っていれば俺達はこの場にはいなかったであろう。
 俺達の乗る船のエンジンを全開にしてもブラックホールからは逃げ出すこ
とはできないのだから──
「…リナさん…あれはどうみても…」
「…うん…重破斬に似てるわ…」
 ゼロスの言葉にリナがぽつりとつぶやいた。
「重破斬?」
「え?あっ!いや…なんでもない…あっそうだ。ねぇ達也…あれが143型
αっていう物なの?」
「ん…うん…まあ…そういうもんだな…」
 こんなんで理解してくれるんならそれでいいか…ブラックホールの説明な
んぞするのも面倒だし…
「で…もう一つ聞いていい?」
「なんだ?」
「あんた…どこの世界から来たの?」
 リナがはっきりと言い放った。


 …………………
「……はあぁ?……」
 オレはそうとう、間の抜けた返事をしていただろう。
 それは十分、自分でも解っているつもりだ。
「だから、達也たちって異界からやってきたんでしょ」
 …………………
「…ちょっとまて…なんでいきなりそういう結論がでるんだ…」
「あんたが唱えた火炎球とあたし達のしってる火炎球の呪文とは全然違うか
らよ」
「…う゛…」
 …図星…
「……もしかして……聞こえてた……さっきの呪文……」
「まあね」
 ばれないように小声で唱えといてたんだけどなあ…
「ま、他にもそれらしい行動はあったしね」
「他にも…」
 リナがアインの方へ振り向き、
「例えばアイン。あなたはどうやってあのミサイルの存在を確認したのか。
探索をおこなってたふうには見えなかったけど…それって異界の知識による
探索の仕方じゃないかしら?」
 ──あっ──
  そう言えばそんなことも…
「…あっ…で、でも…そ、そうだ…神託ですよ!神託。あたしこう見えても
一様巫女なんですよ。あの時、突然、神託を受けたんです!」
 苦しい言い訳のアイン。その彼女にジト目のリナは、
「でも、確か達也は、デルスターの反応は?とか、探知範囲を最大にしてる
のか?とかって聞いてたじゃない…そうなると神託は変だと思うけど…」
「……え?…えっと……」
 言葉に詰まるアイン。
「もう一つあるわよ…」
「…まだあんのかよ…」
 後、何があるっつーんだ…
「ガウリィ!」
「あん?なんだリナ」
 おもむろに彼女はガウリィへ振り向き、親指で俺達を指し示すと、
「この2人を見て何者だと思う?」
「え?何者って…いきなりそう言われても…」
「カンでいいわよ。カンで…」
「…う〜ん…」
  ほっぺたの辺りを彼はぽりぽりかきながら、
「カンでねぇ…んじゃあ…まず…達也…」
  ガウリィはオレを指差し、
「確かに人間だとは思うけど…ニオイが…どことなく違うっていうか…何っ
て言うか…それと…えっと…アインだったっけか?おまえさん人間じゃない
だろ…魔族って訳でもなさそうだけど…」
「そうですね…魔族なら僕がいち早く気付いてたでしょうし…」
 2人のセリフにリナがうんうん頷き、こちらを見ると、
「とっ言うわけで決定ね…でっ反論はある?」
「いや…反論って言われても…最後のガウリィのかんっつーのは…」
「だよねえ…」
  オレの言葉に同意して口を尖らすアイン。
「甘いわね…ガウリィのカンをあなどちゃあいけないわよ。こう見えても人
生の3分の2はカンだけで過ごしているんだから」
「リナ…おまえなあ…」
「なによ、ガウリィ。あんたカンだけでゼロスの正体を見抜いたことだって
あるじゃない。それに比べればこんなの些細なことよ」
「そうかあ…」
「それに何より…」
 リナは顎で結界を示し、
「あんな物を見せられちゃったらねぇ…」
  そう言い放った。


『………………』
  しばし無言が続いた。
  さてどうする、このままごまかすか。それとも腹をくくって全てを話すか。
  いや…もう一つ…
「あっ!ちなみにここで逃げるという手ー使ったら、問答無用で後ろから攻
撃魔法を叩き込んであげる(ハート)」
  ぱたぱた、手を振りながらあっさり言う笑顔のリナ。
  ちぃっ、見透かされたか。
  となると、やは…………っ!!!!
  突如、感じる異様な気配──
  それと同時にガウリィが腰の剣を鞘から抜き放つ。
「どしたの?ガウリィ?………まさか敵!」
  リナの問いに、彼は一つ首を縦に振り、
「あぁ…多分な…」
 と言いながらオレたちの方へ身構える。
「多分?」
  いぶかしげに問い直すリナ。
「人間とも、そこにいるゼロスとも違う気配だからな…殺気も感じないだろ
う?そのために敵かどうかも判断できない。なっガウリィ?」
「そうだ…」
  オレのセリフに一言ガウリィ。
「だったら教えてやろうか。それは感情を持つ人形みたいな者だ。殺気なん
かで敵か味方かを判断しようとすれば命取りになるぜ」
  感情を持つ人形…つまりアインと同じ者…かすかに動く気配…
「人形?それっていった…」
「来るぞ!」
  リナの言葉をオレの一言が遮り──
  どぐぅん!
  そんな爆発音はセイルーンの町中で聞こえた。

<続き 4回目へ>

 
 
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