エル様漫遊記 ぷらす スレイヤーズSTS 〜1回目〜
転々と広がる宇宙──
遠く離れた星々が「こんでもか!」「負けるもんか!」と光輝き勝負に精を出す。
って…またここから始めるの?
もう見飽きちゃったわよ…
(そりゃあ…1兆回ほど見れば飽きるでしょう…)
そんな、景色をバックにタイトルロゴが現れる。
──『エル様漫遊記』──と──
同時に音楽も流れ出す。
ちゃらちゃ♪
ちゃー♪
ちゃーちゃ♪
ちゃー♪
ちゃー♪
ちゃーーーーーーーーーーーー♪
次に可愛い星の絵の中に『ぷらす』と書かれたロゴが現れ、
そして最後に『スレイヤーズSTS』というロゴが現れる。
ちゃらちゃ♪
ちゃー♪
ちゃーちゃ♪
ちゃー♪
ちゃー♪
ちゃーーーーーーーーーーーー♪
全てが横一列にまとめ並ばれ、タイトルはきらりと輝いた──
役目を果たしたタイトルは少しずつ小さくなっていく。
小さくなったタイトルは右下に追いやられ…
突然の轟音。
タイトルをかすめ、ブルーメタリック色の宇宙船が超スピードで駆け抜ける。
その船体に爆発が起こる。
船を追いかける数個の光。
それは『反逆者』だった。
『反逆者』たちが手に光とともし、船へと攻撃をする。
そのたびに、船体に、その周辺に小さな爆発が起こった。
場面は船内のコクピットに変わる──
ずううぅぅーん!
「ちいっ!」
『きゃあ!』
予想以上に強かったのだろう、その衝撃に彼は舌を打ち、女の子たちからは悲鳴が湧き上がる──
舌打ちをした彼の顔がアップになる。その彼の真下には──
"STS 一級資格者 田中達也(15)"
──という字幕が──
女の子?と見間違えるような容姿…ちなみに、そのことでからかうと彼からとても素敵な負の感情が出てくるわよ…まだ、伸び盛りの年のせいか背丈はそれほど高いわけではなく多少小柄。
しかし、その見た目に反してその辺のスチャラか魔王より、果てしない戦闘能力を兼ね備えており、なおかつ特別待遇としてアメリカの大学を通ったこともあるという知能指数も高かったりする。
上下ともども薄い青色のジージャンとジーパン。ジージャンの中は黒のTシャツ1枚で左腕にはブルーメタリック色の腕時計と簡素な格好をしているが……どちらかというと彼はデニム系の服しかほとんど持っていないから、その辺のコーディネイトは仕方ないのだろう。
なお、家は先祖代々の『正心気孔流』と呼ばれる拳法道場を開いており、彼もその流派の14代目を受け継いでいる。
コクピットに備え付けられたスピーカから電子音で作られた男性…ゼオが警告を出してくる。
<緊急警告。Dブロック1被弾。Dブロックを隔壁閉鎖します>
「状況は!?」
彼のその言葉に答えるかよう、メインスクリーンには船体図が表示され、被害部らしき場所が赤い丸で囲まれていく。
<右尾翼予備エンジンルームに火災発生。消化開始。攻撃物体数は100……再攻撃5>
こおーんっ
軽い音が襲う。攻撃物の一つが船体をかすったのだ。
<魔法弾(マジック・スチール)3通過。残り2>
「ねぇ…これって、すごくまずい状況なのかなあ?」
彼、達也とそっくりな顔を持つ女の子がティカップ片手にのんきに質問してきた。
「いや…すごくじゃなくてめちゃくちゃやばいって…」
「えーーー!!!そうだったの!!!!!大変よ!大変!そうだゼオ、体防御システム作動!火災が発生してるんなら消化。え〜とそれから…」
笑顔になったり、慌てた顔になったり、驚いたり、真顔になったりと彼女は表情をころころと変えていく。
ま。そういうところをあたしは気に入ってるんだけどね(はあと)
その彼女の顔の下に──
"田中舞(15)──芸名・香純舞"
──と──
彼、達也とは一卵性の双子で、現在、香純舞という芸名で業界のトップクラスを突き進んでいる。
性格はお茶目でいたずら好き。そして何より料理が上手で(笑)その美味しさといったら(笑×2)
仕事の時は結構ファッションにこだわっていろんなコーディネイトをするが、普段のプライベート時とかは、姉のお下がりをうまく着こなしたりする。
運動神経は抜群に良いと言うわけでもないが、悪くもない。成績は…まあ…それなりに普通かしらね。
『…すでに全部やったって…』
慌てる彼女の言葉に全員から冷たい突っ込み。
その横を──
「きゃーーーきゃーーーきゃーーーきゃーーー」
横切ってこのコクピット内、最年少であろう女の子がころころと、あちらこちらへと転がり悲鳴をあげ続ける。
"田中雪菜(11)"
ゴールデン双子コンビ・達也&舞の4つ下の妹。
この子がまた……見た目、仕草、その他もろもろ全て…子犬や子猫を見ているかのように可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い〜〜〜〜〜〜…の大連発を発しそうなくらいの、のんびり屋の性格で、すごく良い子。
未熟児で生まれたため体が弱く、昔はよく倒れたりして、家族たちを慌てさせてたりもしてたが…今ではすこぶる健康状態。
なお、母親の血を一番濃く受け継いだためか、兄姉妹の中では魔力が一番大きい。
実は、この子達の母親ってね……
ごごっん!
再び、強い振動がその場を襲い、彼女は逆へと転がっていく。
「きゃーーー♪きゃーーー♪きゃーーー♪きゃーーー♪」
…あ…雪菜ったら楽しんでる………いいなあ…あたしもやりたい♪
「…あぁ…あぁ…あぁ…あぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー…」
転がる雪菜を背に床に座り込み涙ぐむ美少女が一人。
"今居恵美(15)"
顔よし、運動神経よし、成績よしの気立てが良くてお人よし。
剣道部に所属しており、その実力は全国レベル。けど…極度のあがり症なため、大会などで輝かしい成績を収めたことがない♪
けど、つい1ヶ月ほど前に、全国ベスト8にはいる大学生を圧倒的な実力で勝利を手にしたという奇妙な経歴を持ってたりするんだけど…ちなみにその大学生は男性♪
甘い物にはとにかく目が無く、どんな状態でも『甘い物優先』とオトメチック(本人呼称)な決心を心がけている(えらい)
何せ、家が火事の時、必ず持ち出すものは何?って聞いたら真っ先にケーキと言い放ったほどの武者だしね。ちなみに彼女から、ケーキを盗ろうとすると問答無用で火炎球10連打…以上…が飛び交う♪
「…あぁ…あぁ…あぁ…あぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー…」
どうやら…さっきの衝撃でケーキを落としたらしいわ♪
「…あぁ…あぁ…あぁ…あぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーー…お………お…おのれ!許すまじ!このあたしが3日3晩夜なべもして並んで買った、大事な大事なケーキちゃんを!!!!!」
ごおんっ!どん!がら!びっしゃーあーん!!!
あら?カミナリ?怖いわねぇ〜(はあと)
<おや?今、5つほど障害物が消滅しました…何かしらの電流を浴びてススごみになったようですね…>
「……まじ?」
<Yes>
「うんうん。食べ物の恨みは恐ろしいのね…」
舞が納得顔でうなずいている。
「そういう問題かあ?」
そう言う問題なんでしょ♪きっと♪
「ところで…達也…」
今まで無言状態だった美女がくわえタバコのまま、達也に声をかけてきた。
「あ?何だ?ねーちゃん?」
"横浜西警察署刑事課勤務 神楽有希("…
びしっ
彼女が字幕を指ではじいた。しかも起用にその字幕には…
…"あうっちっ"…
と言う呟きが…
「これ何?」
「は?これって?」
「…字幕…」
「はあ?字幕うぅ?」
『…じ〜まく♪字幕♪字幕のくう〜♪』
ころころころころ…×2
達也と有希の合間を歌いながら転がっていく雪菜……と…
『…………………………いつの間にか舞まで…一緒にやってるし…』
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「……で………で?字幕ってなんのことだ?ねーちゃん?」
「あんたや舞たち全員の目の前にあったりする変な字幕よ…」
「…は?んなの…見えないけど…」
あら?
有希ったら…あたしにしか見えない存在を見てるし…さすがよねぇ♪
こほん…では、改めて。
彼女の名は神楽有希。
一くくりで言っちゃうと完璧な美人。
普段、お目にかかるような…あたしが言う『わりかしの美人なほう』ではなく、『あたしとつりあいがとれちゃうかもしれない位』の美人よ。
達也たちの長女であり歳は……
「(…ちょっと…エル…お願いだから…歳は、ばらさないでよね…)」
あら?やっぱり聞こえてたのね有希には♪
「(…まあね…)」
…じゃ…親友♪として歳は伏せるとして…彼女は横浜西警察署刑事課に勤める刑事であり、あたしにとってかけがえの無い親友。
戸籍上では達也たちの姉ではあるけど、本当はイトコで、彼らが生まれる前に両親が交通事故で他界。その後、養女として引き取られた。
ヘビースモーカで……あたしと同等に飲みかわせるほどのお酒好き。
名は受け取らなかったらしいけど、達也と同じ『正心気孔流』のイロハは一通り取得しているわ。
そして何より、あたしを驚かせた数限りない人間でもある。何せ一目見ただけであたしの正体を見破ったことがあるのだ。しかも彼女が6つのころの話。
って…有希って本当に人間なのかしら?
あたしでも、いまいちわかってないし…
追伸。恵美に今居徹という兄がいるけど…彼とは恋人同士よ。
…と言うより…この間、結婚の告白されちゃったのよねぇ〜有希(はあと)
「///うっ//////////////////////////」
「どうした?ねーちゃん?急に顔なんか赤くして?」
「///…な…なんでもないわよ…」
きゃーきゃーきゃー♪
有希の照れてる顔久しぶりいぃ〜(はあと)
「(…エル…あんた後でゴールドドラゴンのギャグ集聞きたいわけ?)」
……う………ごめんなしゃい…聞きたくないです…
ごおおぉぉぉーん
そして再び船体に衝撃が襲う。
ころころころころ…
「…あぁ…あぁ…あぁ…あぁ…」
「(ところでエル。今度、飲みに行かない?)」
あら、いいわね。あたしはいつでもいいわよ。
「…字幕っていったい?」
<…あの〜…皆さん……この状況。どうすればよろしいんでしょうか?>
この場に感情登録知性体『ゼオ』の声だけがむなしく響いた──
<続き 2回目へ>