エアリバ79話「分岐点」


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投稿者:B 投稿日時:09/03/23 02:40:33

エアリスリバース 79話「分岐点」

 ハイウィンドはゴンガガからやや外れた位置に停泊している。
 ティファたちは甲板に出ていた。風はなく、生暖かい気がする。緊張と不安。そしてやる気。
「じゃあ行こう」
 レッドはヘイストを自らにかけた。ティファたちも倣う。
「よっし」
「ええ」
 甲板から飛び降りる。
 先頭を行くのはレッド。その後ろにユフィとティファが続く。
「あいつ、こっち来ないだろな?」
「今のところは大丈夫みたい」
 村人たちはリーブの指示の元、村の西へと移動している。
 クラウドたち本体がいるのは村の北。ティファたちは迂回路をとって北西を回り、移動中の村人たちと合流する。
 エアリエルはウェポンの攻撃が辛うじて届かないくらいの範囲に待機している。ティファたちのインカムは衛星を現在地点を示す発信機も兼ねており、現在地点と会話内容を衛星がピックアップ、ハイウィンドやエアリエルに情報を送信する。
「こちらユフィ様と愉快な仲間たち。今のところ、異常はなし。どーぞ」
 マイクの向こうのツンツン頭は業務的に返す。
『了解。引き続き、警戒しながら移動しろ。あと、どのくらいかかる?』
「ん〜とね。五分くらいかな」
 その間、攻撃をしかけられなかったら第一段階終了。その後、攻撃があるようなら、ハイウィンドで一足飛びだ。割って入る。
 当初はこのまま行くかもしれないと思われた。
 しかし、3分ほど経ったくらいで巨大な影が動いた。レーダーの巨影は動き始めた。
『ティファ!』
「何!?」
『ウェポンが動いた! すぐに向かう!』
「了解!」
 セフィロス=ウェポンは動いた。傷は完治はしていないようだが、大方は回復しているようだ。
「女神さまよお。ナムサン!!」
 離陸していたハイウィンドは加速するも早いかジェットブーストモードへと切り替わった。
 白い尾をひき、ハイウィンドは見る見るうちにティファたちに追いつこうとする。ウェポンよりも先に到着できる。
 が、ウェポンは進路を変えた。ティファたちを向いていた目先がハイウィンドに定まった。
「こっちに来やがった!」
 通常モードならば、速度的には劣るが小回りが利く。
 一方ジェットブーストモードは速度はあるが、小回りは利かない。基本的に直進のみだ。
 そしてそれはセフィロス=ウェポンにもわかっているようだ。
 暗黒の輝きを口に含み、ウェポンは全速でハイウィンドに迫る!
「私が迎え撃つ」
 セフィロス=クローンは言うが早いか甲板に出た。
 ロケット弾のような勢いでオリジナルの元へと飛ぶ。
「遅い」
 暗黒の槍が放たれた。それはセフィロスクローンをやや外し、ハイウィンドの後部に命中した。
「うおおおお」
 とっさに機体を操って破壊部分を最小限にした。
 シドは舌打ちながら、状況を飲み込んだ。
 機体破損による速度低下、推進力低下。支えきれない。
 この艇は不時着する。
「不時着するぜ! 歯ァ食いしばれ!!」
 艇が揺れる。エアリスはバランスを崩して床を滑った。
「おっと」
 バレットは体ごとでせきとめるようにエアリスを受け止めた。
「大丈夫かよ?」
「バレットがそれを言う?」
 互いに重体だ。
「行く」
 ヴィンセントはそれだけ残して、クローンの後を追った。空中戦が出来るのはセフィロス=クローンとヴィンセントのみだ。
 甲板に出た。既にウェポンに接近しつつあるクローンが見えた。
 地鳴りのごとき雄たけびを上げる。牙をむき、拳を握る。背に負ったマントが形をとり、三対の翼となった。
 デスペナルティの銃口はセフィロス=ウェポンに突きつけられた。蝙蝠の羽が空を切る。

「クラウド? クラウド!? 返事をして」
『ウェポンの攻撃でハイウィンドは半損した。これから不時着する』
「私たちもそっちに戻る!」
 踵を返したティファたちは元来た道を戻る。

「セフィロス!!」
 クローンはオリジナルに切りかかった。
 正宗を正宗で受け止める。
「ッククク」
 オリジナルは不快な笑みをもらす。
 まるで自らと兵器として生み出した狂科学者のように。
「熱心なことだ。この世界が愛しいか」
「……」
「お前は俺にあって、俺でない存在。どう見えているかわからんが……」
 クローンは確実に自分が欲していたものを持っている。
 ならば己の存在意義は?
「俺は神という災厄となり、この地に災禍を刻もう。手始めに人間のふりをした兄弟を殺してな」
「そういうお前は『人でないふり』が好きなようだ」
 クローンは表情を変えないまま淡々とつむぐ。
「お前は私を『半端者』と称したが。お前も十分に半端者だ」
 人でもない化け物でもない。
 善ではない。完全悪でもない。
 不完全者――片翼の――
「!」
 空気が揺らいだ。
 否。空気というよりは空間そのものが歪んでいる。淀んでいる。
 こみ上げた悪寒にクローンは後ろに飛び退いた。言い知れようのない不安がこみ上げる。
 眼光は鋭かった。オリジナルセフィロスの視線は鍛えぬかた鋼のごとき硬度でクローンの全身を貫いていた。
 途轍もない殺意だ。
 今までとて本気でないわけではなかっただろう。だがそれは本人でさえ意識してかしないでか一片の甘さが残っている気がした。
 が、今はほとんど感じられない。
 先刻と現在との間を隔てる壁が突如現れたかのようだ。
 オリジナルは正宗の切っ先を突きつけた。
 クローンも振り上げる。
 咄嗟の行動だった。
 右袈裟、左袈裟、右切り上げ、左切り上げ、切り上げ。
 五つの軌跡が中心で結ばれ赤き桜と散る――リミット「桜花乱舞」
 クローンは半ば反射的に繰り出していた――そうしないと自分が殺されると実感した。
 が、その軌跡は掻き消えた。
「……!?」

 五つの火花が弾けて飛んだ。
 消えた。…否。
 全く同じ攻撃に弾かれた。
――馬鹿な
 右袈裟、右袈裟
 左袈裟、左袈裟
 右切り上げ、右切り上げ
 左切り上げ、左切り上げ
 切り上げ、切り上げ
 全てが同じく返された。
 クローンは構えたまま動かない。動けない。
 次なる手を浮かべても返されそうな気がする。今のように。
 オリジナルの両腕が正宗を振るおうとした。
 クローンは構えて…弾けとんだ。
「な、に…?」
 横凪だった。それを防いだ。が、弾き飛ばされた。
 速度と威力が段違いになっている。
「俺が半端者ならば、差し詰め貴様は『紛い物』だ。半端者の紛い物……見るに耐えん」
 正宗の切っ先が向く。
「故に摘み取る。花と散らしてな」
 今のオリジナルは元の力にウェポンの力が加わった化け物だ。新型ジェノバを得たとはいえ、単純なエネルギー量でいえばクローンの分が悪い。
「……今しばらくは散らない。まだ五分も咲いてはいないからな」
 クローンは距離をとりつつヘイストを唱えた。オリジナルの頭上に舞い上がり、急降下しながら刃を突き立てる。
「セフィロスは二人は要らん。消えろ、紛い物」
「私は――」
 オリジナルセフィロスの言うところの「セフィロス」ではない。
 だが、名をセフィロスと呼ぶ。
――私はオリジナルではない、セフィロス。
 クローンとして生まれて、オリジナルとは別の道を通ることになったセフィロス。かの英雄と同じ名を関してはいるが、別人となった者。
「紛いものではない」
 オリジナルなるから作られた同じ血を姿を持つ同じ名の存在。
 それを紛いと呼ばずに何と呼ぶのか。
「ならば何だ」
 クローンの脳裏をエアリスの言葉がよぎった。
――さっきの質問」
――「?」
――「あなたがセフィロスのクローンでもっていう質問。姿は同じだけど、関係はないよ。あなたはあなたよ」
 自分は自分。
 存在の意義は――与えられるものではない。自らが定めていくものだ。
 自分は――守りたい。この星でこの世界でささやかな幸せを積み重ねていこうという者たちを。
 そして守るためには決断と痛みを伴う。クラウドの優しい心が結果、大切なものを守りきれないことにつながるというのなら、自分はその欠けた部分を補うべく、いくらでも冷徹になろう。
 例え、相手がオリジナルでも。
 戦う。そのための剣。それが自分――
「差し詰め私の名は剣(ソード)というべきか」
「?」
「私の名はソード。セフィロスから出で、セフィロスにない者。貴様という障害を切り裂く剣(ソード)だ」
 ソードはセフィロスの正宗の切っ先を弾き、そのまま刃滑りさせて、素早く振り切った。
 セフィロスの左胸から葡萄色の液が飛び散る。何者にも属さない人間ではない色の血だ。
 不意をつかれたようだった。が、すぐに立ち直る。
 ソードは距離をとった。
「ソード……」
 小さく響いた。
 セフィロスの双眸はソードの全身を捉える。
 もはやクローンは「セフィロス」ですらない。
「ソード!!」
 槍ぶずまのような殺意をぎらつかせ、セフィロスが迫る。 
――ゴッオオ!!!
爆音と共に額の狙ったデスデナルティの一撃を防いだ。白煙が刀身からあがる。
 ヴィンセントはソードの背後で羽ばたいている。
「けりをつけよう、セフィロス」
 言って、ヴィンセントはオリジナルからクローンに視線をうつした。
「私の名ならば、たった今決まった」
「……名は?」
「ソード」
「ソード。……行く」
「ああ」
 ソードとヴィンセントは一斉攻撃へと転じ始めた。



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