エアリバ77話 「交戦」


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投稿者:B 投稿日時:08/12/22 00:01:30

エアリスリバース77話 「交戦」

「脚が……動かねえ」
 バレットは舌打ちをしながら、動かない右足を庇いながら左足と両手ではいずった。
 ケアルをかけたいところだが、魔法の詠唱に集中するだけの余裕がない。ウェポンは目前まで迫っている。
 セフィロス=ウェポンは金色の翼を大きく広げて降り立った。太陽を後ろにその背は光をまとうかのようだ。
 消し飛んで黒こげとなった、一面丸坊主の地面に尻をついた格好となったバレットは表情のないセフィロスの部分の顔を見上げた。
「お前か……バレット」
「よお、英雄さんよお。ちょっと見ない間に随分大きくなったな。成長期か?」
「……他愛のない会話も少しは興を持てる」
「?」
 セフィロスの言っていることがわからなかった。言っている内容を理解出来ないのではなく、何故そんなことを言うのか。
「その体……ウェポンか。ウェポンの体を乗っ取りやがったな!?」
「見ての通り」
 言葉少なにセフィロスは返す。
「何しに来やがった!」
「何をしに」
 一笑に付した。
「何か用があったのはお前ではなかったか」
 セフィロスの接近を感じ、迎撃に出たところを先制攻撃にあったので反撃した。確かに順番から言えば、自分の行動のほうが先だったかもしれない。
「どっちでもいい! 森を消し炭にしやがって!」
 僅かずつではあるが、ケアルの効果が少しずつ出てきた。右足も動くようにはなってきた。こうして会話をしている間も治癒が進んでいる。
 だが、セフィロスは気にも留めない。
「些事だ」
 バレットは歯軋りをする。もし自分が森へと出なかったら。攻撃のあった場所が村のあった場所だったら。自分の隣にマリンがいたら。
 それでもこいつは興味なさ気に言うのだろう。「些事」と。
 単身、分の悪い状況だったが、小さくなりかけていた心の炎が燃え上がるのを感じた。
 それは怒りだけに任せた感情ではない。村を。娘を大切なものを守ろうという強い意志。
「そうかい。お前さんにとっては鼻息程度のものなんだな?」
 セフィロスは答えない。涼風を浴びるかのようだ。
「は。はは……」
「言い残したいことはそれだけか。まだあるのなら、今の内に聞くが」
「お優しくて、気味がわりいぜ。なら言いてえことがある。…くたばれ!!!」
 開口一番、爆ぜたミッシングスコアでウェポンのセフィロスの部分を狙い打った。
 反応は早かった。攻撃を瞬時に瞳にとらえ、正宗を凪いだ。爆炎を引き裂き、切っ先を眼前にまで迫っていたバレットに向ける。
「貴様は」
「ああッ!?」
 セフィロスは顔面に刃をつきたてた。
 が、何らかの障壁にはじかれた。「シールド」だ。
「てめえが頭だな!?」
 ウェポンの体はセフィロスによって制御されている。「頭」というのはその意味だろう。
 弾かれた刀身を身近にひきよせる間にバレットは第二撃を放っていた。左手から正宗が弾けとんだ。
 武器を失ったセフィロスの顔面をミッシングスコアで叩く。 
 予想以上の動きだった。魔法で強化していたにせよ、想定を超えていた。
 その理由はわかった。バレットの背にある村。その想いが彼を強めていた。
「ふ」
 にこり。
 笑んだセフィロスは無造作にバレットの両腕をつかんだ。
 バレットは豪腕で抵抗するが、人ならざる英雄にかなうべくもない。
「お前を動けなくしたら、奴らはどんな顔をするのか」
「……!」
「少しばかり興味がある」
「くそったれッ!!」
「無駄だ」
 両肩が砕かれる音を聞いた。
「うがッ!?」
「お前たちがうやらましくもある。人間やら星。一喜一憂する様がな」
「へ…ッ。それじゃあ、仲間に入れてやろうか? 先ずはそのデッカイ四本脚を切ってお越しくださいってな!!」
 小規模だが、ふたりの間にフレアが展開されて炸裂した。
 その拍子にセフィロスの両腕から逃れることは出来たが、重症のバレットは受身を取れずにウェポンの体を滑り落ちる。
 巨躯の前足が動いた。空中に放り出された体を叩き落す。
 微かに弾んだ体は腕を杖に起き上がろうとする……が、ウェポンの前足が覆いかぶさる。
 片ひざをつきながらも、ミッシングスコアが呻った。かまわず、もう片足が被さった。
 如何に全身鍛えぬいた巨躯と筋肉であろうとも、正真正銘の怪物相手では風の前の木の葉だ。
 ウェポンはあっさりと踏み潰そうとするかと思えた。しかし、あえてせず少しずつ力を強めてもてあそんでいる。
「くそがッ……!」
 力は少しずつ強まっていく。腕は動かず、逃れようがない。
 体が完全にひしゃげる前にセフィロス=ウェポンは脚を外した。
「この肉体はウェポンのものだ。切ることは出来ん」
 この体はウェポン。この体は怪物。
 そう――怪物。今にしても。過去にしても。自分は比類なき怪物だった。
 ヒト――のようなもの。生まれついての――超越者。
 今から、人間になるなど、不可能だ。
「……来たか」
 空の彼方からハイウィンドの影が近づいてきた……。



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