log

祈・全快ということで。

2006.12.14 | Category あぶ刑事

隣にいることが当たり前で。
隣に気配を感じると、振り返ってしまう。
そう。例え、幻聴と分かっていても。

今、あいつは・・・ここにいない。

「ユージ・・・」
続き
空気のような存在。
必要ではないのだが、必要とするもの。
手が届く所にありながら、決して触れられないもの。
そんな、存在だったような気がする。

若干冷える空気に、自分の心ももぎ取られて行く様な感覚。
立て続けに聞こえる無線は、全てマイナスの考えに導いて行く。

『そんな筈はない。あり得ない』

思考が麻痺する。

「ユージ・・・」

ふと呟く相棒の名前。
あまりにも重く、自分にのしかかる。
焦りと、怒りと、怯えと、絶望。

それに輪をかける様に、道が混んでいた。
俺は車を飛び降り、バイクを調達して、スロットルを全開にした。

潮風が、肌に突き刺さる。
間に合う。そう。絶対に間に合う。
まるで、呪文の様に呟く。

いつものように、
「遅いよ、タカ」
と、ちょっと子供っぽい瞳で見つめ返してくる、ユージの顔が浮かぶ。
決して、過去(うしろ)を見る事のない、真っ直ぐな瞳で、俺を見ている。

「タカ・・・・」

微かに聞こえた声。幻聴かと思った。
その声の方に、バイクを置き去り、走る。

聞こえるわけなかった。あの時点で。
それ位、距離は離れていた筈。

けれど。確かに、俺には聞こえたんだ。

俺の見たユージは、赤の中に横たわっていた。

「ユージ!!」

絶叫に近い俺の声。ユージとの距離が、全然縮まらないような感覚。
周りから見れば、ほんの一瞬だっただろう。
血だまりの中に、躊躇せずに膝を折る。

と、微かに、ユージは微笑んだ・・・ような気がした。



ぽんぽこさんの所の「幻覚」の、タカサイド。
全快祈願に捧げますー。

19:17

trackback

この記事のトラックバックURL