「お願いねっ」
毎年毎年毎年毎年。
功の手元には、チョコレートが山盛りになる。
自分の分はもとより、鳩村と、小鳥遊、木暮の分。
そして何より。
「事務所に送れよな・・・」
龍の分。
事務所では、どうにもならない位、溢れ返ってるとは思うが、弟に渡すっていう神経が、理解出来なかった。
自分の分を、一口。刑事部屋で食べる。
と、赤いローヒールパンプスが視界に入った。
「コウちゃん、はい、義理チョコ」
真山のストレートな言葉に、苦笑しつつも、受け取った。
「ハトさんも大将さんも、貰えないでしょっ」
「お前、これは押しつけって言うんだぞっ」
「はい、ジョー君、イッペイ君っ」
がしがしと押し付けて行く真山の様子を、苦笑いしつつ、立花はその包みを開き、一口食べようとした・・・。
ゴリッ
口を押さえた功の様子に、鳩村が眉をしかめた。
「コウ?」
「チョコって・・・こんなに 固い ものでしたっけ・・・?」
鳩村は、無言でそのチョコを掴んで、割ろうとした。が、割れない。
「カオル・・・・。お前、昔のCMじゃないけど、チョコで釘が打てますだぞ!!」
「おっかしぃなぁ」
背後では、実際に北条と平尾が釘を打ってみていた。
「「おお、ほんとに打てる!!」」
華麗な赤の軌跡が弧を描き、二人はその場に倒れていた。
「お前、これ他の人に配ってないよな」
「え。龍君と、大下さんと、タカさん、ジプシーさんとドックさんぐらいよぉ」
「真山君・・・」
小鳥遊がため息をつく後ろで、山県と鳩村は同時に、
「ジーザス・・・」
と呟いていた。
「ドック、はい、どうぞ」
「どもー」
令子が渡したのは、チョコタルト。
「しかし、本当に固いチョコだったわね」
「けど、食べないと悪いでしょ。だから、皆の分をね」
西條はウィンクすると、それを持って公園へと出かけた。
「はい、鷹山、大下、ジプシー」
「さっすが、西條。いってみるもんだなぁ」
大下が、包みを開け、その中身の変貌具合に口笛を吹いた。
「何事も、発想の転換ってのが必要なんだよ。その場で対処するのが危険な時はね」
軽くウィンクすると、西條はチョコタルトを一口、ぱくりと食べた。