鳩村の目の前に、黒光りする銃口が、狙いは頭部に向けられ、微動だにせず存在していた。
さすがの鳩村も、息を飲む。
その銃を持つ男の眼は、正気のものとは思えなかった。
そして、その男の足下には、既に頭を撃ち抜かれ、頭部が粉々になった死体と、真っ赤な血だまりがあった。
男の服は、返り血で赤く染まっている。
「血が、見たいんだよ」
男は、鳩村にそう言った。
「頭に弾を撃ち込む瞬間、凄く気持ちいいんだよ・・・。あんただって、経験・・・あるんじゃないのか? 大門軍団の鳩村英次」
「!」
体が硬直する。
「何故、俺の名前を・・・?」
「調べたんだよ。一応ね。この女に言って」
足下に転がる肉塊は、婦人警官の服を着ていた。
西部署の交通課の警官だった女だ。
「・・・そう・・・」
ぎりっと奥歯を噛み締める。
はらわたが煮えくり返る。しかし、指一本動かそうものなら、男はためらいなく引き金を引くだろう。
一人でここまで来てしまっている以上、逆転のチャンスは・・・・ない。
「あんた、殺して、まだまだ続けるんだ・・・。ふふふ」
「止めるんなら、・・・殺すしかないか・・・?」
つうっと額から嫌な汗が伝う。
「そんな暇与えるわけないじゃん。バイバイ」
男は、引き金を引いた。
と同時に、鳩村はしゃがみこみ、弾丸は頭上を走り抜ける。
そのまま物陰へと飛び込むと、素早く銃をホルスターから引き抜いた。
あまり広くもない倉庫。
身を隠せる所は、そこともう一カ所。
つまり、鳩村と男がそれぞれ隠れていて、それで終了。
どっちかが動けば、どっちかが狙える。
こう着状態のまま、時間は過ぎる。
いちかばちか。
鳩村はジャケットを脱ぐと、それを飛ばした。
男の銃から放たれた銃弾は、それを貫く。
その隙に、鳩村は距離を一気に詰め、男の背後に立った・・・筈だった。
「甘いよ・・・」
男の左手には、別の銃が握りしめられ、それは鳩村に向けられていた。
「2丁拳銃が、あんただけの専売特許と思わない事だよ・・・。そして、・・・利き手じゃなくても、狙いを外す事はないことも。あんたと一緒。・・・ああ、ちょっと違うんだけど。実は、俺は・・・左利きでね・・・」
男の闇の眼が静かに向けられた。
鳩村は、自分の死を覚悟した。
その瞬間、倉庫の窓から一台のオフロードバイクが飛び込んで来た。
そして、あっと言う間に、二人のわずかな隙間へと「バイクだけ」が飛んで来た。
その後に響く、けたたましい銃声が2発。
「諦めたら、そこで終わりだよっ」
両手首を撃ち抜かれ、床に転がる男。
壁に激突して倒れたバイク。
床にみっともなく尻餅をついている自分。
窓の近くには北条。
反対のドアの所には、銃を持っている立花。
「・・・な、何で・・・」
「何でって、捜査しただけ」
北条が、窓を乗り越えて、中へと入る。立花の後ろから、平尾、山県、小鳥遊がやってきた。
「私の情報網を舐めてもらっては困るな」
「班長・・・」
鳩村が、気が抜けた様に笑みを浮かべた。
あれー。妙にほのぼのしちゃったなw
卓 2006.12.17-23:07 Edit
ハトさんって何でこんなに格好良いんだろうって思いますよね。
…コウも格好良いよなぁ。