「何か、焦げ臭くない?」
大下と鷹山の席に来た、真山が鼻を押えてこう言った。
「・・・そう?」
「あっ」
薫はそう短く声を上げると、町田の机の上にあったコーヒーを、大下の灰皿へとぶちまけた。
じゅっと音がして、何かが消える気配がする。
「・・・・あんたねぇ・・・・」
「え、俺の灰皿?」
「これは、あなたのでしょうがっ」
薫の目が吊り上がる。
ただでさえ若干つり目気味なのに、輪がかかった様に見えた。
「たばこの火の不始末で、港署で火事になりました、なんて言ったら、恥さらしもいい所よっ」
ぱぁんっと机を叩く剣幕に、大下はたじろぐ。
「いい? 大体、これだけ吸い殻がたまったら、すぐに捨てなさいよっ。そんな風にしているから、火が出るのっ」
「・・・はい・・・」
まるで、廊下に立たされた小学生である。
鷹山は、こっそりと席を離れると、少年課の自分の席に座っていた鈴江を引っ張って、司令室の前に、二人から見えない様に影に連れて行って、聞いた。
「カオル、やたら機嫌悪いじゃん。どうしたんだ」
「少年にね・・・おばさん連呼されちゃって・・・・」
「ああ・・・」
「カオルおばさんとか、真山おばさんとか・・・」
「何、常連の子たちなの」
「そう・・・」
二人は隅っこでため息をついた。
幸いにも鷹山は、その日の朝に瞳ちゃんに言って灰皿を片付けてもらっていた為に、難を逃れた。
だが。
実は、その灰皿でくすぶっていたのは、さっきまで話していた鷹山の煙草が原因だった事は、もう分からない事実だったりする。
End
チャットでちゃっちゃか作ってみたw