項目名 | 一刀両断 |
読み | いっとうりょうだん |
分類 | 必殺シリーズ |
作者 | |
公的データ | 江戸の街では、夜中に出歩く若い娘が陵辱されて殺される事件が立て続けに起こっていた。今日も、お佐代(町田マリー)という娘が死体で見つかった。悲しみに暮れる父親の仁吉(山田辰夫)と妹のお絹(小林涼子)。 江戸中の女たちは皆、色男ばかりが揃っている夜遊び場・美景庵に熱狂していたが、美景庵は、店に来た若い女を陰で男たちに斡旋して儲けた上、女たちを消すという非道な商売をしていた。お佐代を殺したのも、美景庵の信次と名乗る男(中村俊介)だった。 仁吉は、娘の仇を討ってくれと、三番筋で仕事を依頼する。だが、陰で聞いていた花御殿のお菊(和久井映見)は、それが世間体を気にしたゆえの依頼だと知ると、きっぱりと断った。しかし、何か裏があるとにらんだお菊が、源太(大倉忠義)に出前がてらに美景庵を探らせると、その背後には廻船問屋・野崎吉衛門(田宮五郎)がいるとわかる。陰では違法の賭場も開いていると言われる人物だ。 その頃、姉の仇である信次を探そうと美景庵にやってきたお絹は、店の前で直助という男に出会う。彼が実は姉を殺した人物・信次であることも知らずに、お絹は直助と親しくなっていく。 |
感想文等 | まだ全然全然全然ドラマらしい濃厚なものが出てこないまま時間だけがすぎていって、「え」と思うほどのあっさり感でアジトで金の分配が始まってしまい、しかもそこからそのまま仕事に入るらしいと分かった瞬間、思わず口にしてしまった…… シンプルなのではなく浅い、と巳代松さんが新春スペシャルについて感想を書いてらしたと思うのだが、なんというか、シンプルなのではなくて薄い。 なんでこんなに薄いのかと思えば、各仕事人に割り当てられたシーンとセリフがちょっぴりずつ、しかもお互いの絡みはアジトに集まるまで基本的に無し、しかも各仕事人と事件の中心人物たちとの関わりの方も無し、単にアジトで金をもらって仕事をするだけ。 それなら、事件とそこのドラマが濃厚かといえば、こちらも紋切り型で新鮮みは無し。 せっかく玉櫛に代わって登場した如月が事件の大元に偶然入りこんでいるのに、そこで何かを見聞きするということもなく、ただのコメディリリーフ。そしてこれが彼女のキャラクターを立たせるエピソードになっているわけでもない。 頼み人は頼み人で、最初の頼みは本当に「そんなことで人殺しを頼むなよ」というもので、これを断ったお菊はよしとして、以降の頼み人の行動は支離滅裂、しかも不死身かと思うほどの生命力を見せて、仕事の依頼をしたのち店にも戻る、これなら娘連続暴行事件はともかく殺人の生き証人として奉行所に行きなさい。あなたが事件の大元に乗りこんだことで、もう十分世間体は悪くなってますから。 スペシャルで権藤が「食い逃げ」と断定した(本当にそれを企んでいた――或いは会話していた――としても実際にはまだ実行したわけでもない)2人の男を斬り殺したときもそうだったのだが、今回も公衆の面前で、人質になった店のスタッフを用心棒が殺しているのだが、こんなことがまかり通るのが江戸時代だと脚本家は思っているのだろうか。 仕事がいっせいには終わらないで、小五郎の仕事が一呼吸置いたのは別に悪くない。仕事人ナンバーシリーズに慣れた人たちには違和感があるかもしれないが、別に一晩で仕事を完遂しなければならないわけでもなく、煙詰めの例もある。今回のドラマの眼目として在るはずの「本来最も仇と思うはずの相手を、それと思わずにかばい立ててしまう娘」の悲劇を抽出しようとするなら、これはこれでよかっただろう。 また、主水の仕事時の一言が無意味なものであることが多いのに小五郎の今回のセリフは悪くはなかった。「大事なことだけ言わなかったな」「嘘つきめ」これが仕事の理由なのだ。これは悪くない。最後の最後まで、実際この男がどこまでのレベルで改心或いは反省或いは後悔しているのか、妹娘をどう思っているのか、明かされていない。自分が殺人者であることを隠していたとしても、これで妹娘を誑かしてさらに利用しようとしていたならともかく、単に逃げ隠れしようとしているだけなら情状酌量の余地はあったかもしれない。だが、小五郎は「嘘つきめ」と断罪する。それはそれでいいのだ。 しかし、姉も父も失い、今後の行く末がどうなっていくのか分からない妹娘、そして彼女の心情について、そのまま放置されてしまった。結局、だから「薄い」ままになってしまったのだ。 脚本家がいけないのか? 監督がいけないのか? 今回については、仕事人第3話「仕事人危うし!あばくのは誰か?」と同じく第83話「沈め技花嫁偽装返し突き」の2本を先行奨励作品として挙げたい。脚本家と監督はこの2本を見て猛省していただきたい。 これが第1話かあ…… これを見て、次週からも続けて見たいと思ってくれた初見の人なんて、いるかなあ……いないだろうなあ…… あ、涼次はこの回もよかった。アジトで、みんな「難しい金をして金を取るだけ」のところ、彼だけはちゃんと遊んでいた。彼はいい。(おっぺ) |