語る「万華鏡」

(「憑霊都市」に書き足す)

憑霊都市(ひょうれいとし)

項目名憑霊都市
読みひょうれいとし
分類SF小説

作者
  • 平井和正
  • 公的データ
  • アダルト・ウルフガイ・シリーズ「人狼天使」第1部
  • 背徳と罪悪のゆえに滅亡した古都・ソドム。その性の退廃、涜神の波動が、今再び現代のニューヨークに甦ろうとしていた。異次元からの魔族の思念に支配される腐敗の都市に渡った狼男・犬神明を待ち受けるものとは果たして何か?時間・空間を超越し、多次元世界を統べる“意識界”に目覚めた犬神明が、神の使徒として繰り広げる、新たなる戦いを描く。
  • 感想文等
  • 人狼天使」と書いて、ルビは「ウルフ・エンジェル」。
    これはなかなか魅力的なタイトルだったと思っている。ノンノベル版のカバー画は生頼範義氏で、そのどっしりとして頼もしいアダルト犬神明と「人狼天使(ウルフ・エンジェル」)」のタイトルの表紙は惚れ惚れとするくらいだった。

    収録されているのは、中編「ウルフガイ・イン・ソドム」と、おそらくはアダルト・ウルフガイ・シリーズの最終パートとなる人狼天使の第1部「憑霊都市」。
    ウルフガイ・イン・ソドム」は、アダルト犬神明の“前世”たるソドムシティの住人カルデヤのウルの物語だが、「未来の記憶」として時折犬神明の意識も混入したりして読み応えもあった。しかし、若干「得た知識の放流」のように「神と悪魔の真実」が語られ始め、これはこれで初読の時には刺激的ではあったのだが、今読み返すと、「それはもう知ってるよ」的な感覚が先に立ってしまう。
    登場人物の感情とシンクロする読書においては、何度読み返しても同じシンクロが可能だ。そして、それこそが特に平井和正作品を読むときの一番の「面白さ」だった。これは「人狼白書」「人狼天使」についても決して変わるわけではないのだが、ただ、「知識の提示」部分はそうではない。言ってみれば、新しい知識や技術について書かれている本は、初めて読むときには面白いが……というところか。
    だから、犬神明の感情が描かれている部分はこれまで同様に抜群に面白く、犬神明の「知識」が提示されている部分は光と熱を失っている……但し、何度か読み返している読者にとっては、という感じだ。初読の読者にとってどうかは不明である。

    ウルフガイ・イン・ソドム」が単独で成立しているのに対し、「憑霊都市」は第1部とはなっていても、長さや内容からしてほとんどプロローグに近い印象だ。石崎郷子の復活、矢島との対話、雛子やマイク・ブローニングの動静、ジュディ・ギャザラとの出会い等が描かれ、そして事件らしい事件、山場らしい山場はないのだ。

    物語の動きは続く「人狼天使第2部魔天楼」からに持ち越される。

    ちなみに文庫化されると、「人狼白書」同様、「人狼天使」のタイトルは消滅した。
    この巻は「ウルフガイ イン・ソドム」と微妙なタイトル(笑)になっている。「人狼白書」「人狼天使」にタイトルに愛着のある人間にとっては哀しいことなのだが、おそらくは要らぬ軋轢を避けるためのことなのだろうかな。(おっぺ)
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  • 作家・監督等
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