項目名 | 主水の浮気は成功するか? |
読み | もんどのうわきはせいこうするか |
分類 | 必殺シリーズ |
作者 | |
公的データ | 生前の叶屋の諸行からして、これはこの世では晴らせぬ恨みを晴らす仕業人・商売人の仕事だと噂がたち、以後厳しい取締りのもとに、これら闇の仕事師たちは江戸から消息を絶った。 江戸から十里、この八王子から、『治安警備のベテランを一人、指導のために派遣願いたい』と江戸町奉行に要請があったのは半年前のことである。人手不足で猫の手も借りたいほどの町奉行所にとっては大迷惑な話ではあったが、やむを得ず、たとえ居なくても日常の業務にはまったく差し支えのない人物を、家族共々八王子に差し向けていた……。 |
感想文等 | だが、なんだか「商売人」という作品が『りつ懐妊』に始まり『その結末』で終わるという、主水にとって最大級の問題地点であり、にも関わらず仲間達との繋がりはそれまでのどのシリーズと比べても(たとえば『金だけのドライな繋がり』とされる仕業人時代と比べても)稀薄だったためもあり、まるで『商売人時代というものは主水の歴史上存在しなかった』ように、折り畳まれてしまった感じがするときもある。 「新仕置人」の次に「仕事人」が来ていても、そのまま繋がるのだ(正八の去就は別として)。 もちろん、これは他シリーズ同士についても言えないわけでもないのだが、「仕留人」と「仕置屋」との微妙な不連続性を除けば、大体主水の履歴は継続して見えていたわけであり、この「商売人」の独立ぶりは不思議な気もする。 りつの懐妊とその結末というのは、連続シリーズとしては行き過ぎだったと後悔したのだろうか。しかし、それより何より、やはりこの「仕事人」は最終編を意図しての仕切り直しだったのかもしれない。それだけの本格的な造り込みをひしひしと感じる話が連続するのだ。 作風全体もすこぶるハードで、オチャラケに見える半吉も、この第1話で鹿蔵に急を知らせに走るときの引き締まった顔つきは凛々しかったし、のちに彼や恋人おふくに降り懸かる運命を思う時、単なるコメディリリーフ、あとあとの玉助シーンや各種ギャグと同じにはとどめられない。 主水対鹿蔵、鹿蔵対左門、左門対主水、3種3様の対峙がもたらす緊迫感と、隠れ駒たる秀。秀が隠れ駒であることから、そのまま第二話に持ち越される結成劇など、御存じ物のテレビシリーズではなかなか観られない回りくどく粘着質とも言える物語と演出。 この、内容とどう関連しているのだろうと不思議がられたりもするタイトルの第1話で始まる、『鹿蔵編』と呼称される「必殺仕事人」初期の数話は、あまりにも濃密な、ついつい『これが必殺だ』と規定してしまいたくなるまでの魅力を持っている。 (個人的には、「主水の浮気」とは、仕置人から足を洗おうとしていること、鹿蔵の誘いをかわそうとすることを指しているんじゃないかと思う) 余談だが、主水が鹿蔵に述懐したうち、『ドブ川の中で、女房もろともズタズタに斬り刻まれて死んでった奴』は剣之介に違いないだろうが、『獄門晒し首になった奴』とは誰だろう。語られなかった捨三との仕置屋以前のグループの仲間か、それとも大吉なり市松なりやいとやなりが実はそういう末路を迎えたのか。単に主水が適当に口にしただけなのか。 私はこの「仕事人」初期を初めて観られた頃、ファースト仕置人をまだ観ることができていなかった。それで、噂だけで知る棺桶の錠とか天神の小六とかがそういう目にあったのかなどと思ったりもしていたのだが……(おっぺ) |