項目名 | 男の友情は哀しいのです |
読み | おとこのゆうじょうはかなしいのです |
分類 | 青春ドラマ |
作者 | |
公的データ | オメダがチンピラに腕時計をまきあげられた。それを聞いたカースケはオメダを連れて取り戻しに行くが、その相手はなんと故郷の悪友だった。 |
感想文等 | この回の印象深さは、いつもの3人とは別に、自分だけの「旅」をしている男、玉三郎というキャラクターの鮮烈さが一つある。演じる石橋正次はそれまで演じてきた矢吹丈や静弦太郎といったヒーロー達とは全く違うチンピラを、とことんカッコ悪く演じる。その姿は、カースケより、オメダより、グズ六よりもカッコ悪く、みじめですらある。 水戸でカースケと一緒に暴れ回っていた時と、気分は変わらない。だが、年を経て、あしたのジョーにもアイアンベルトのヒーローにもなれなかった、三下ヤクザでしかない玉三郎は、威勢だけがいい文字通りのチンピラでしかない。 マブダチだったカースケは再会してみれば大学に通っている。 昔通りのつもりで互いに付き合おうとしても、カースケと玉三郎の気持ちには擦れ違いがある。 玉三郎は惨めな怒りを滲ませながら述懐する。仲間達はみんなもう昔とは違う。あいつはサラリーマンになった。あいつにはガキが2人いる。あいつはくたばりやがった。カースケ、おまえは大学生だ! 俺だけが元のままだ! 昔はあんなに楽しかったのに! 輝いていたのに! どうしてみんな、つまらなくなっていくんだ…… カースケはグズ六たちに言う。 街のチンピラと喧嘩しようってのを、俺は止めてたよ。どうしてだよ。昔だったら、俺も一緒に喧嘩してたよ。なんでだよ。 「昔のままではいられないんだ」 と、グズ六はグズ六定番の科白を言う。もう愚連隊じゃない。もう昔のような不良じゃない。 昔のままではいられない。 そして、カースケの留守に玉三郎が現れ、オメダにカースケへの伝言を託す。 四時に、元町の空地に来てくれ。出入りがあるから…… 出入りとは、ヤクザの喧嘩のことだ。命の奪い合いになってもおかしくない。 オメダは悩み、グズ六に相談する。 「絶対、カースケには言うな。言えば、あいつは絶対に行く。行けば間違いなく、死ぬ!」 だから、オメダは「言わない」ほうを選んだ…… だが…… ついに四時という時間が迫る頃―― 「……浩介!」 「あん?」 「……あいつが……玉三郎が、おまえに伝えてくれって。四時に、元町の空地まで来てくれって。出入りがあるから助けてくれって!」 「玉が、そう言ったのか?」 カースケは時計を見る。すでに四時だ。 「どうして早く言わないんだ、馬鹿野郎!」 カースケは飛び出して行く。 「どういうことなの、出入りってなんなの」 「グズ六さん、カースケには絶対に言うなって……言えば、あいつは絶対に行くからって……でも、もし言わなかったら、あいつ、一生おれを許さないような気がして……」 洋子はロッカー室から出てこようというところでカースケを捕まえる。 「行ってはだめよ、津村君」 洋子はクール・アンド・ビューティという感じで、厳しい表情で立ちふさがる。 「どけよ」 「あなたが、友達を思う気持ちは立派だと思うわ。だけど、人間は成長して変わって行くのよ。いつまでも愚連隊のような行動はできない」 洋子はカースケを見据えて言う。 「人は、裏切ったり、裏切られたりして、成長して行くのよ……それが、人間なのよ――」 かっこいい――そんな洋子の言葉と態度だった。 そんなかっこいい洋子――を、びしりとカースケはひっぱたく。 「……どこで読んだんだ、そんなこと。何の本に書いてあったんだ?」 カースケが言う。単に、その仇名のとおり「カーッ」と来ているというのではない。ただ、とにかく真剣だった。厳しい顔をしていた。そして続ける――「おまえ、人を裏切るってどういうことか知ってるのか?……裏切ったことがあるのか!?」 そう最後には怒鳴るように言い、飛び出して行く。 洋子は崩れ落ちる。 洋子のかっこよさは、理念のかっこよさであり、そして――「何の本に書いてあったんだ?」――まさしく、読み囓り、聞きかじり、つまりは所謂『受け売り』だった。誰でも、いつでも、やりがちなことだ。 カースケはしかし、そんな言葉だけ頭だけの理念を打ち砕いてしまう。 このときだけではない。カースケはいつも、パターン、ルーティン、そういった『形だけ』の頭でっかちなかっこいい正論に本気の感情と本音の誠実さだけで相対していた。 だから単純な『真面目と不良』『拘束と自由』のような二元論では全くないのだ。 カースケは空き地に向かって走り、しばらくして、衝動のままにオメダも後を追う。 同じ頃、突然グズ六はデスクワークを放棄し、会社を飛び出してしまう。行き先はもちろん元町の空き地だ。 ……カースケが着いた時、玉三郎は独りで座り込んでいた。 「玉!」 愕然とする玉三郎。 「カースケ!」 「どうした、玉……相手は……まだか?」 「来たのか、カースケ……来たのか、カースケ!」 「……どういうことだよ、玉」 『出入り』は嘘だったのだ。 「俺、お前は来ないって思ってた……来てくれるなんて思わなかった……来てくれるなんて思わなかったよ、カースケ……世の中なにもかも変わっちまって……」 「何が変わったんだよ、玉……何が変わったんだよ! 世の中が変わったってな、おめえはおめえ、俺は俺じゃねえか! えっ、玉!」 何が解決したというわけではない。それはワカメのときも同じことだ。 だから、「十年目の再会」で、『何もできなかった。昔みたいなわけにはいかない』と懐古するのは感傷なだけだ。 けれど、十年たっても「昔みたいに」「あの頃のように」と思うのは、このころ確かに『解決』などではなくとも誠実に全力で仲間に相手に対していた……それで仲間が相手が何かしら得ることができていた――からに違いないのだ。 オメダとグズ六もすぐに駆けつけてくる。。。 玉三郎やカースケたちには、このあと様々な運命が待っている。いろいろなことが――。 何が待っていても、誠実に全力で、と少なくともそれだけは……(おっぺ) |