語る「万華鏡」

(「水に描かれた館」に書き足す)

水に描かれた館(みずにえがかれたやかた)

項目名水に描かれた館
読みみずにえがかれたやかた
分類ミステリ小説

作者
  • 佐々木丸美
  • 公的データ
  • 三人のいとこたちの連続殺人の謎を秘めた北の断崖の館は、朝から春の嵐に翻弄されていた。その日、財産目録作成のため四人の鑑定家が派遣されてくるはずだった。だが、現われたのは五人。"招かれざる客"は誰か?その目的は?やがて鳴り響く大時計の三点鐘とともに忍び寄る凶々しい殺意の影。人間心理の神秘を描くサイコ・ミステリー長編。
  • 感想文等
  • もちろん、「崖の館」の続編です。
  • 水に描かれた館」は、「崖の館」に続くミステリー・シリーズだが、後の作品を見ると、結局犯人は特に裁かれることもなかったようだ。催眠による操り、殺人とはかなり危険な犯人のはずだが、そのまま主人公達と馴染んでしまったらしい。
     この作品の犯罪トリックも珍しいものだったが、実は一番記憶が残っているのは「洗濯機」のシーンだ。ふつうなら、関係ないなと済ましてしまうところだが、とにかくセリフや文体のタイミングがいいので、はまりこんでしまうのだ。
     この作品で強調された神秘主義的な部分は、「夢館」で1つのピークを迎え、以降ミステリからファンタジーの方向へ拡がりが増していく。「孤児シリーズ」は万人(?)受けかもしれないが、「館」シリーズは読者を相当選びそうである。が、この「水に描かれた館」はとりあえずまだミステリの体裁を保っており、「あやつり」タイプのミステリとしてはかなり大胆なものを展開している。
     アガサ・クリスティーカーテン」の犯人など、「あやつり」の犯人はかなりの知能犯が多い。高木彬光呪縛の家」、都筑道夫キリオン・スレイの敗北と逆襲」、いずれも名探偵は“真”犯人に辿りつきながら、具体的に“検挙”することはかなわない。結局、「カーテン」のポアロのように、悲劇的な最期を遂げる場合も出てくる。
     しかし、「水に描かれた館」の犯人は、「あやつり型」としては型破りに、自ら積極的に「犯罪」を実施している。通常の「あやつり型」とは正反対と言っていいほどである。動機、行為の実験性、愉快犯的な在り方は共通しているが、ただ心理学的手法を用いて犯行を操っているのでなく、「催眠」とした実質的な「手を染める」ところまでやっているのだ。
     現在では、京極夏彦の作品等で、こうした大胆不敵な「あやつり」型犯人も出現しているが、当時としては途方のないものだったのではないだろうか。
     この縦軸と、転生輪廻の愛という横軸が絡んで、ミステリー・ロマンと謳うにふさわしい作品となっている。そこから、ヒロインのダブルキャスト、孤児シリーズとの融合と、ダイナミックに炸裂した「夢館」につながっていく。(おっぺ)
  • 作者
  • 作家・監督等
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