語る「万華鏡」

(狼のレクイエム)

狼のレクイエム(おおかみのれくいえむ)

項目名狼のレクイエム
読みおおかみのれくいえむ
分類SF小説

作者
  • 平井和正
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  • 公的データ
  • ウルフガイ・シリーズ第3作以降。
    第1部 の里(精の里)
    第2部 ブーステッドマン
    第3部 黄金の少女
    第4部 犬神明
  • 第1部
    「自由とは戦い取るもので、座して与えられるものじゃない…。戦い取った自由にだけ価値があるということだ」。―狼人間の不死の血清を狙う“不死鳥グループ”に捕われた青鹿晶子は、犬神明によって救出されたものの、強力な麻薬で意志を失った廃人となってしまった。さらにあろうことか、監禁中に凌辱された彼女は妊娠し、その中毒症との合併症で死に瀕していた。「ナルコティック800」の解毒剤は存在するのか。犬神明愛する者のために、人類の「狂気」とたちむかうことを決意する…。混迷奔騰のシリーズ第3作。
  • 第2部
    狼人間犬神明少年と、部隊の愛すべき危険な少女4は、核シェルターにも等しいCIA極東支局の建物への潜入に成功していた。侵入者をことごとく粉砕する殺人装置がひしめく保安システムをかいくぐり、支局長ハンターを追いつめる2人…。“不死鳥作戦”P計画とは有色人種殱滅計画であった。人類の「狂気」の犠牲者、青鹿晶子の命運は。そして破壊したはずの保安システムが予備装置により復活し、2人は退路を断たれてしまう…。シリーズ最高潮、怒涛のクライマックスが迫りくる。犬神明、吠える。
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  • 感想文等
  • 狼の紋章」「狼の怨歌」に続くウルフガイ・シリーズの第3作目は「狼のレクイエム」。
    これは、分厚かった「狼の怨歌」よりもさらに大長編となったために、「第1部・第2部」として2分冊で刊行された。紛れもない前後編であり、それぞれは独立しているとは言えない。

    狼の紋章」「怨歌」がそうだったように、この「狼のレクイエム」でも取り返しのつかない「死」が登場人物たちに降りかかってくる。ここまでの特徴としては、「死と再生」「不死」がテーマであることを象徴するように、
     「狼の紋章」で死した少年犬神明が「狼の怨歌」で復活し、
     「狼の怨歌」で死した西城恵が「狼のレクイエム」で復活した。
    これを「おんなじやん!」というのは、だから違うのだ。彼らは非情な闘争の中に生きることを強いられ……そして死によって逃れることも許されない。ここで描かれる「不死」は全く福音などではないのだ。

    そして、この「狼のレクイエム」でもまた……

    この「狼のレクイエム」はタイトルに相応しく悲壮な死が相次ぐ。これは登場人物たちに感情移入し、愛した読者たちにとってはつらく、耐えがたいことであり、かなり過激な或いは哀切な手紙が作者の元には届いたようだ。
    しかし、作者は安易なハッピーエンドは物語の死であるとして退ける。少年犬神明の復活も西城恵の復活もハッピーエンドのためのものではない。

    そして、ここで作者はものすごいことをする。これは前代未聞であり、こんな物凄いことをやった作家を現在に至るまで他に知らない。これについては、「狼の世界ウルフランド)」についてで書きたいと思う。

    とまれ……「狼のレクイエム」はハッピーエンディングを迎えることはなく、「第3部」の執筆が予告された。新しい「狼の○○」ではなく、あくまで「狼のレクイエム」の第3部であることにどんな意図があったものか。
    しかし、その予告が果たされるのは、途方もない時間が過ぎてからのことであり、当初の腹案が捨て去られてのことだったのだ。

    狼のレクイエム第3部」は「黄金の少女」の副題で数巻に分冊され、刊行元によっては第1巻のみを「黄金の少女」とし、2巻目以降には別の副題が付けられて刊行もされた。それと前後して、この「狼のレクイエム」第1部・第2部にも副題が付けられるようになった。しかし、これはさほど意味のある副題とは思われない。その証拠に、あとでいきなり変わったりした(笑)。

    第2部については、「ブーステッドマン」という副題が与えられ、これは固定されていたが、第1部は「の里」「精の里」と変動がある。第3部以降に副題があるので、とりあえず揃えてみました程度の意味だろう。

    第3部以降はシリーズとしてはかなり様変わりしているため、この「狼のレクイエム」第1部・第2部までのみを評価する読者も多い。第3部も独立した小説として読めば面白いにちがいないのだが、ウルフガイ・シリーズとして読むのは難しいかもしれない……が、これについては「黄金の少女」についてで書けるときがあるかもしれない。 (おっぺ)
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