語る「万華鏡」

(ライトニング)

ライトニング(らいとにんぐ)

項目名ライトニング
読みらいとにんぐ
分類SF小説

作者
  • ディーン・クーンツ
  • 公的データ
  • いまは流行作家としてときめくローラ・シェーン、かつては孤児院で辛酸をなめた薄倖の美少女だった。これまでの生涯、何度か人生の危機や事故に見舞われそうになったが、そのつど、どこからともなく立ち現われて危難から救ってくれた"騎士"がいた。そのたびに、空には閃光が…。ジャンルを超えた傑作スーパー・スリラー。
  • 感想文等
  • クーンツを読み始めたのは、『100冊の徹夜本』というブックガイドでの熱烈な紹介の賜物(笑)だった。
     確か『雷鳴の館』や『ライトニング』が「強烈な驚き」みたいに情熱的に語られており、スティーブン・キングをはじめホラーというジャンルに食指の動かなかった私に、試しに読んで見ようかという気持ちを沸き立たせた。
     どんでん返しとか意外性とか、多分そういったホラーよりミステリの属性たる面白さが強調されていて、ミステリ読みの私を煽ったわけだろう。
     確か『雷鳴の館』を先に読んだようだ。凄まじいばかりの謎たちに、これが現象通りの「幽霊だ」というオチだったらつまらないが……と思いながら、しかし、かなりスリリングに読み進めることができた。オチというかネタ自体はさすがに頭蛇尾スレスレな感じもあったが、物語自体の力もあって失望することもなく、続いて『ライトニング』に進んだはずだ。
     この『ライトニング』では、ことごとく予想の上を行かれるプロットの妙を味わえた。中高生時分を中心に或る程度「SFファン」だった時期があり、ホラー作家のなまじっかなタイムトラベラー物など斬って捨てようという驕った感覚で読んでいたかもしれない。
     たとえば広瀬正の『マイナスゼロ』のような精緻さはない。むしろ、「パラドックス」は不条理なアイテムとしてのみ機能し、整頓しようとすれば笑いだせてしまう匙加減レベルのようだ。同一時間軸ではなく、パラレルワールドへのトラベルになっており、こうなればパラドックスに意味はないはずなのだ。
     だが、そういうツッツキは脇に置いてしまえば、ひたすらエンタテイメントとして楽しめる、「そうきたか」「そういうことか」という面白さが満載なのだ。
     世評では、『ウォッチャーズ』などが人気作であり、それに異論もないのだが、クーンツの面白さを初めてとことん堪能した作品として、個人的には『ライトニング』が印象深い1冊になっている。
     映画にしても、これはかなりいけるんじゃないのかな?(おっぺ)
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