項目名 | 佐々木丸美 |
読み | ささきまるみ |
分類 | 作家 |
作者 | |
公的データ | 昭和50年に、のちに斉藤由貴主演、相米慎二監督で映画化される「雪の断章」で、衝撃的デビュー。 彼女の作品の内容は、ミステリー、恋愛、心理学etc.を含み、その内容はいわゆる「小説」としてはおさまりきらず、ジャンル分けが難しいが、その際は「ミステリ」に分類される。リリカルな中に光る、個性的な文章が特徴的。 特に、雪降る札幌を舞台に、孤児の少女と、彼女を育てる青年、二人を包む周囲の人物たちの愛憎、葛藤、犯罪を描いた代表作「雪の断章」と、トリックよりも「犯罪を犯す者」の心理面に重きを置いた傑作「崖の館」は、彼女を語る上で欠かすことのできない2作品である。 今でこそ超心理学や精神医学、催眠術、暗示等のテーマが流行しているが、当時からそれらを扱っていた彼女の作品は、少し早すぎた感が否めない。しかし、ようやく時代が彼女に追いつきつつある昨今、当時からのファンや、雑誌、インターネット等で彼女を知ったファンが集まり始め、現在ひそかなブームを呼んでいる。 彼女が'75〜'84というわずか9年間で残した全18作品(うち1作は、マンガの原作)はあまりにも鮮烈で、その輝きは衰えるどころか、今なお増しつつある。だが、読みたくても手に入れることができないというネックがあり、現在、復刊が強く熱望されている「幻の作家」である。 「雪の断章」 「崖の館」 「忘れな草」 「水に描かれた館」 「花嫁人形」 「恋愛今昔物語」 『恋地蔵I』『恋地蔵II』『嗚呼、ハイ・ミスI』『嗚呼、ハイ・ミスII』『恋頭巾I』『恋頭巾II』『怪談I 梅女の呪い』『怪談II 顔のない女』『夏子の場合』『秋子の場合』『冬子の場合』『春子の場合』『美しい奇跡』『不思議な白い椿』『雪別離』『愛許可証』『みにくい三姉妹』『先生』 「夢館」 「新恋愛今昔物語」 『夏緒の失敗』『秋緒の失敗』『冬緒の失敗』『春緒の失敗』『生徒』『嗚呼、エリート』 「風花の里」 「舞姫」 「ながれ星」 「橡家の伝説」 「影の姉妹」 「沙霧秘話」 「罪灯」 『危険区域』『顔』『魔火』『通訳』 「罪・万華鏡」 『異常心理』『嫉妬』『被害妄想』『予知』 「榛家の伝説」 「恋愛風土記」 あなたへのお伽噺 夏子の場合・秋子の場合・冬子の場合・春子の場合 |
感想文等 | ・やっぱり特別な人なのよ ・孤児シリーズの詩のような言葉たち、恋愛今昔物語のテンポのよい文章。 ・救われ続けました。 ・一生好きだと言えます。 ・一生好きだと言えます。 ・何度読んでもあらたな疑問や発見が生まれます。文章が実に美しい。 ・今までで一番共感でき、惹かれる方です ・優しくて切なくて震える作品多し ・日本語の美しさを知りました。 ・一生大切に読み続けたい作品です。 ・人生の書、何度でも読みたい・・・ 愛がすべて――語られる青春も友情も、全て“愛”に向かって組み立て作られていく。登場人物たちが傾倒する哲学も心理学も、やはりヒロインの愛のパーツ、ピースに連なっていく。 どんなに離れても失われても、距離ばかりか時間も“世界”さえも超えて、彼女たちは愛を抱き、取り戻し、身を焼き続ける。それは妄執として殺人にも裏切りにも走ることもある、そんな危うさを孕みもしているが、比類ない強さと純粋さに結晶もできる。これは裏腹、二律背反、それであるが故に尽きることなくスリリングだ。 「雪の断章」「忘れな草」「花嫁人形」「崖の館」「水に描かれた館」、いずれにおいても、まだ“愛”は成就するところまで描かれていなかった。あるいは成就に程近くとも、代償として失われたものがあった。「夢館」においては、転生輪廻の業まで駆使して、ついに恋愛を成就させた。ここまでにどれだけの雪が降ったことだろう。しかし、それでもまだやり残したことがある。 全ての恋愛を成就させるために。 だから、“伝説”はさらに深く、強く、語られ始めたのだ。「風花の里」という触媒を経て、「影の姉妹」「沙霧秘話」のバックボーンを得て、「恋愛今昔物語」「舞姫」の実践編を加え、「罪灯」「罪・万華鏡」を規範として。 伝説は――さらに深く、強く。 待ち続け、仮に与えられることなく、この世での語りは終わっても、またいつか巡り会えるだろう。それがまた1つの伝説になるだろうから。(おっぺ) 好きだった作家さんが、読者のこちらがまだ生きているのに、先に次々と逝ってしまう。鮎川哲也も高木彬光も都筑道夫も星新一も半村良も、もういない。作品だけが、ひっそりと残っている。 そして、単に「好き」というだけでは済ませない作品の作家さんが失われてしまったとき、もうそのときには、「ああ……もう読めない!」と泣くしかできない。 遺された作品だけでは、まだまだ足りない。もっともっと読んでいたかった! もっともっと、あの登場人物たちの行く末を知りたかった! ――まだ、終わってなどいないのに! ……佐々木丸美は実質筆を折った状態で、新作も続編も、恐らく望めるものでもなかったのだろう。 けれど…… 聞き知る丸美さんの様子はまるで世捨て人のようで、かたくなで、孤独で、なんだか楊子さんみたいに感じられるときもあった。求めるものがついに得ることあたわず、独りぼっちで、泣き言は言えないで……そして寂しく年老いてしまったのなら――。 けれど、送り続けていた手紙達を、箱に入れて大事にしてくれていた、それを聞いた時、決して丸美さんの心は凍てついてなどいなかったのだと、あの豊かな感性・感情・情動を干からびさせてしまってなどいなかったのだと、そう思えて…… それだけで、もう、胸がいっぱいになってしまったのだった。なんだか、……よかった……と思えてしまったのだった…… (おっぺ@本岡家) |