項目名 | ウォータースライドをのぼれ |
読み | うぉーたーすらいどをのぼれ |
分類 | ミステリ小説 |
作者 | |
公的データ | 「じつに簡単な仕事でな、坊主」養父にして朋友会の雇われ探偵グレアムがニールに伝えた任務、それは健全さが売りの人気TV番組ホストのレイプ疑惑事件で、被害女性ポリーを裁判できちんと証言できるよう磨き上げることだった。世にも奇天烈な英語教室が始まる。彼女の口封じを狙う者あり、彼女を売り出して一儲けを企む者あり…様々な思惑が絡み合うポリーゲート事件の顛末。 |
感想文等 | かなり前から手に入れていた「歓喜の島」、これを読まずにいたのに訳があった。この「歓喜の島」の主人公のウォルター・ウィザーズは「ウォータースライドをのぼれ」にも登場していて、作品内の時間軸では「歓喜の島」のほうが先であるらしい――からだった。 まず「歓喜の島」で、若きヒーローのウォルター・ウィザーズと親しむ。それから、「ウォータースライドをのぼれ」を読んで、ニール・ケアリーとウォルター・ウィザーズの2大ヒーローの共演を楽しむ。その方がより一層面白く読めるんじゃないか……そう思ったのだ。 そして、それは個人的には「アタリ」だった。 「歓喜の島」ではまだ若く、頭も回り体も動く、文字通りのヒーローだったウォルター・ウィザーズ。「歓喜の島」自体はそれほど印象に残る作品ではなかったが、ウォルター・ウィザーズはちゃんとキャラクターとして頭に残った。 そのあと、文字通りの直後に「ウォータースライドをのぼれ」を読んだ時――ウォルター・ウィザーズはすでに落ちぶれていた。『たいへんな凄腕』であり、ニールの義父のジョー・グレアムが『彼を手本にするように』と言ったという……「歓喜の島」のウォルターは確かにその言葉たちの通りだったはずだ。そのウォルターが…… たぶん、先に「ウォータースライドをのぼれ」から読んでいたのなら、こうした感傷と共に読み進めることはなかっただろう。 私にとっては、この「ウォータースライドをのぼれ」は、ウォルター・ウィザーズの最後の物語だった。ニール・ケアリーの去就も重要ではあったけれど。 できるなら、もし今後ウォルター・ウィザーズの物語が書き継がれることがあるのなら、「歓喜の島」のようなウォルターの輝いていた時期のことではなく、そんなだった彼がどのようにして落ちぶれていったのか、その過程を読ませてほしいと、そう強く思う。 はたして人は、どうして、どのように……それをいつも、知りたいと思ってしまうから――。(おっぺ) |