項目名 | 疑う愛に迫る魔手 |
読み | うたがうあいにせまるましゅ |
分類 | 必殺シリーズ |
作者 | |
公的データ | 観音長屋に立ち退き騒動が持ち上がった。 その上、大家の秘密を握る黒い手が娘にまでも及んだ時 ― 住民である仕置人の怒りが燃えた!(おっぺ) |
感想文等 | ここで印象深いのは、錠の正義感や激昂はいつものことなのだが、これまたいつものように飄々と無関心でいようとしていた鉄の述懐の場面だ。 観音長屋の立ち退きの件で、わいわい無責任に騒ぎ立てた半次やおきんを始めとする長屋の住人達、そして結果として大家は悪党に弱みを握られた上で殺されていく。 「てめえたちが! 無責任に騒ぎ立てるから!」 怒りをぶつける錠。そして、それに続けて鉄がしみじみと言うのだ。 「無責任もいけねえが、おれみてえな無関心もあんまり褒められたことじゃねえな……」 そして、徹底的に暴いてやる、と決意するのだ。 仕置人という業を始めたその時から、鉄のスタンスは一定して「情を廃す」ということに終始していた。「おれたちも頼まれなきゃあ見逃したかもしれねえが、頼まれちまった以上、こっちも商売なんでね」(「牢屋でのこす血の願い」)。憐憫や同情や怒りで動くわけではない。だから、兄弟のようにも思っていた芋安を裁くときも、頑として冷徹な仕置を自ら仕切っていた(「仏の首にナワかけろ」)。 惚れた女が殺されたときも、「女郎が一人死んだんだ。それだけだ」と主水に向かって言った(「利用する奴される奴」)。 錠が激怒し、涙を流すとき、鉄は寧ろ無表情を貫き、あるいは薄笑いを浮かべて骨を外し砕いてきた。 その鉄が、無関心はいけねえな、、、などと言ってしまうのは、いわば仕置人という業を背負おうとする者たちにとって何かしら変質し、終わろうとしている……そんな部分があった。 そして実際、鉄たちの仕置人グループは、あと2つのエピソードを持って崩壊してしまうことになるのだ。。。(おっぺ) |