項目名 | だから旗ふるの |
読み | だからはたふるの |
分類 | コミック |
作者 | |
公的データ | |
感想文等 | アンジーの生い立ちについて語られるのだが、この回ではもう一つ、重要な場面があって、それは、この回で初めて、グレアムが「キャプテン」と呼ばれたのだ。 それまでも、一番年上だからと(アンジーとの差は3か月でしかないのだが)、四人組の中でなんとはなしにグレアムがリーダー的では確かにあった。だが、サーニン・マックスはともかく、アンジーはグレアムとほぼ対等なような描かれ方をしていたはずだ。 それが、ちょっとした行き違いからアンジーの中にわだかまりが生まれる。 ボク達を船にたとえるなら それは帰る港のない船 自分の居場所がなくて家出したボク達は 港を探してさまよってる船のよう! 「まるでキャプテンだね、グレアム。いい気分?」 「え?」 「お船の船長さんサ!」 同じ船の中で… グレアム…… お前はキャプテン! じゃあ……ボクは? ボクはなんだ!? アンジーの提案に対してグレアムがやんわりと異を唱え、サーニン・マックスが同調したときだ。アンジーはつい言ってしまう。 「キャプテン面するなら、それらしく他の奴の事も考えろよな!」 つい喧嘩腰になって三人と別れ飛び出してしまう。 グレアムには、アンジーが怒鳴ったのが自分自身のためではなく、「他の奴」というのがマックスのことだと分かっていた。そのグレアムの洞察に、マックスは心からの信頼をグレアムに向ける。 「アンジーのいったとおりだね、グレアム、キャプテンみたいだ!」 そう言われて、しかしグレアムは…… なあに? グレアム……おかしい。 なにかいいたそうなのに、いわない…… まだマックスには、グレアムの感じているものがなんなのか、分かることはできない――。 メインの話は、他の三人と離れたアンジーが自分の過去を振り返る「昔話」だ。――アンジーの本当の名前はリフェール・ステア。 女優の母の私生児として生まれ、田舎のおばさんの家に預けられながら、2週に1度2日間やってくる母から「マイ・アンジュ(私の天使)」と呼ばれて愛された日々。しかし、突然の小児麻痺で右足が動かなくなり、ちょうどそんな時に、アンジーは母が自分を捨てるつもりであることを知る。 「リフがこんなことになるなんて思わなかった……でも、もう決めたの……決めたのよ姉さん、それでも私……映画スターになりたいの。ずっと下積みでやっとチャンスをつかんだのよ!」 聞き知ることがなかった振りをして過ごしながら、だがやがてそんな自己欺瞞すらできなくなり、、、アンジーはおばさんの家を脱けだして、母に会いに行く。 しかし、もはや母のいる世界は、アンジーの入り込める場所ではなかった。 母は、アンジーの姿を見ながら、自分の子供と認識することがなかったのだ。 ずっと前から、映画スターになりたいというママの夢とボクとはママのとりあいをやっていた そしてボクは負けたんだ 映画がヒットした記念のパーティー会場で、アンジーは閉め出されて、行き場所をなくす。 ちなみにこの映画のタイトルは、「TAKE ME WITH YOU」。これは、「はみだしっ子」シリーズ最終編、「つれて行って」と同じタイトルだ、、、 さまようアンジーが出会ったのが、とある地下室にずっと閉じ込められていたサーニンだった。地下室の隅にうずくまり、暗い眼をして、鉄格子越しに小鳥たちとだけ話していたサーニン。 「夏と秋と冬とここから出れなかった。今は春? ボク出たい、出して……!」 ただそう言うばかりの…… 「ボクの友達の鳥さんわけてあげるよ。ボクの持ってるのはそれだけ」 「ずっと出してくれる人待ってた? そして誰も出してくれなかった?」 アンジーは呆然とする。 「待ってろ! もう少し、夜まで! 出してやるから、絶対出してやるから」 「!……あ……ありがとう。なんて名前?」 まるで、出してくれる人がいるなどと、考えもしなかったという表情のサーニン。 名を聞かれたアンジーはつっかえる。リフェールという名を口に出せず、思わず言っていた。「…………アンジュ」 「? アンジー」 そしてリフェールはアンジーになったのだ…… アンジー! 鳥さんだよ、ボクの友達だよ アンジーも鳥さんの友達にしてあげる ボクの世界にアンジーも入れてあげる アンジー アンジー 今もアンジーは囚われている。自分の存在意義……もうリフェールではない。ママの子供ではない。今――四人が一つの船の乗組員ならグレアムがキャプテン……ならボクは? 僕の存在意義は? いいんだ……もう……あきらめてる。 あきらめるんだ。期待しなけりゃ、期待はずれで泣くことはないだろ! ――サーニンの鳥さんはもうボクのまわりを飛ばない―― 物語は、過去の苦しい想い出に囚われて現在を思うように動けないアンジーが、なんとか母の呪縛を脱して仲間の許に帰るまでを描いている。仲間たちにも見捨てられたと思い、絶望の中に倒れようとしていたアンジーの視界に三人が映る。 あきらめた方が無難サ! でも――でも! もし……連中がボクを見捨てずにいてくれたら…… 賭けてやる 結果が裏目にでたら ――自分で自分をあざわらうサ!―― サーニンの鳥さん、ボクの側にいて! ボクは捨てられたために臆病になり、みじめになりたくないために意地をはり そして過去に釘づけされ旗をふれない! ボクの部屋の窓の外には冷たくそっぽむいたママ! 世界中がどんなに冷たく見えたことか――ママ! けれどある日! サーニンが そして グレアムが マックスが ボクの窓辺で優しく微笑んだ 「ボクの持ってる世界、君にもあげるよ」 それから…… ボクの窓辺は暖かくなり、世界中が暖かく見えた 「あ……」 ――連中だ! ――連中がボクを迎えにきた! 冷たいママ、ごらん! あれが…… あれがボクの友達!! 「アンジー!」 この「再会」の場面も私の心を揺さぶる。 だが、こうしたメインストーリー以外で、はみだしっ子たちの物語は「次」への布石・伏線を綴っているのだ。 アンジーを捜す三人のシーン。グレアムは思っている。 アンジー……おまえらしくないよ…… “キャプテン”なんて呼ぶウラにあるものは何なのサ? ボクに何に気付けっていうの? ――おまえを見つけたら、それを聞きたいよ でもおまえとけんかしたくないんだ…… ――このモヤモヤしまい込んでおこうか? しまい込んでいつまでも消えずしこりになったら…… 重荷だよ…… 疲れや苛立ちから、ついマックスもグレアムに叫んでしまう。「わかったよ! キャプテン!」 はっとなるグレアム。 自分もはっとして謝るマックス。 「あ……ごめんね、グレアムが悪いんじゃないんだ……ボク……」 マックスは言う。自分はなんの役にも立たないと。 「グレアムはいつも優しいンだ……仕方ないと思って我慢してくれてるの? ボクなんかに我慢してくれなくてもいいんだよ、ボクお荷物? 本当のこと言ってよ、ボクどうすればいいの?」 「そこにいりゃあいいじゃないか」 とサーニン。 「いづらいんだモン! 自分で自分をバカにしちゃう! 自分で歩きたいのに他人に抱いてもらってる!!」 グレアムは笑って言う。 「マックスったら、きみがボクに何をしてくれてるか、わかってないんだね!」 マックス「?」 グレアムにとってマックスがなんなのか、、、それはまた、後々の「ブルーカラー」までも引きずっていく部分ではあるのだが、、、 そしてエンディング、アンジーは思っている。ボク達の船には船をまとめるキャプテンがいてくれる――と。 のちのち……「キャプテン・グレアム」という呼称やそのイメージが、どういう影を落として来ることになるか、四人は知らない。 今はただ、一つの船の乗組員として、キャプテンを中心に進んで行くだけなのだ。(おっぺ) |