項目名 | 必殺仕掛人 |
読み | ひっさつしかけにん |
分類 | 必殺シリーズ |
作者 | |
公的データ | 原作は池波正太郎『仕掛人・藤枝梅安』シリーズ。 ■ 内容 藤枝梅安(緒形拳)は、表向きは老若男女を問わず親しまれる腕の確かな針医者だが、その裏では生かしておいても世のため人のためにならない人間を人知れず始末する殺し屋・仕掛人であった。 ある日、口入屋を営みながらも、裏では仕掛人の元締として梅安と懇意の間柄である音羽屋半右衛門(山村聡)のもとに依頼が舞い込んだ。依頼人は材木商の伊勢屋勝五郎(浜田寅彦)。仕掛ける相手は、同じ材木商の辰巳屋(富田仲次郎)と、作事奉行の伴野河内守(室田日出男)である。 早速、梅安は行動を開始。辰巳屋が一人になる頃を狙い、夜道で仕掛けようとするも、辻斬りを趣味とする凄腕の浪人・西村左内(林与一)に邪魔をされ失敗する。 その結果により辰巳屋は警戒心を強め、ヤクザ大岩組の大岩(高品格)を雇い入れ、仕掛けがより一層難しくなってしまう。そこで音羽屋は、梅安が出会った浪人・左内を仕掛人にスカウトすることを発案する。仕掛人のプライドが高い梅安は頑なに拒否するが、やがて承諾。左内も仕掛人としての道を歩むこととなった。 第2話「暗闘仕掛人殺し」 第3話「仕掛られた仕掛人」 第4話「殺しの掟」 第5話「女の恨みはらします」 第6話「消す顔消される顔」 第7話「ひとでなし消します」 第8話「過去に追われる仕掛人」 第9話「地獄極楽紙ひとえ」 第10話「命売りますもらいます」 第11話「大奥女中殺し」 第12話「秋風二人旅」 第13話「汚れた二人の顔役」 第14話「掟を破った仕掛人」 第15話「人殺し人助け」 第16話「命かけて訴えます」 第17話「花の吉原地獄の手形」 第18話「夢を買います恨も買います」 第19話「理想に仕掛けろ」 第20話「ゆすりたかり殺される」 第21話「地獄花」 第22話「大荷物小荷物仕掛の手伝い」 第23話「おんな殺し」 第24話「士農工商大仕掛け」 第25話「仇討ちます討たせます」 第26話「沙汰なしに沙汰あり」 第27話「横を向いた仕掛人」 第28話「地獄へ送れ狂った血」 第29話「罠に仕掛ける」 第30話「仕掛けに来た死んだ男」 第31話「嘘の仕掛けに仕掛けの誠」 第32話「正義にからまれた仕掛人」 第33話「仕掛人掟に挑戦!」 いずれも人知れず仕掛けて仕損じなし 人呼んで仕掛人 ただしこの稼業 江戸職業づくしにはのっていない <9話> はらせぬ恨みをはらします 許せぬ人でなしを消します いずれも人知れず仕掛けて仕損じなし 人呼んで仕掛人 ただしこの稼業 江戸職業づくしにはのっていない 藤枝梅安(緒形拳) 西村左内(林与一) 岬の千蔵(津坂匡章 現・秋野太作) 櫓の万吉(太田博之) 音羽屋半右衛門(山村聡) おくら(中村玉緒) 西村美代(松本留美) 西村彦次郎(岡本健) おぎん(野川由美子) 神谷兵十郎(田村高廣) |
感想文等 | やむにやまれぬ事情、とかがあるわけでもなく、本当に通りがかりの何の罪もない人を「これが俺の病なのだ」とか勝手なことを言いながら襲っている。ただのサイコな悪役である。 この第1話の西村左内を知っているかいないかは大きい。以後のエピソードでは露悪的な梅安と対照的な前述した通りの「正義派」「理想派」の左内の姿が目立ち、その結果「必殺仕掛人」という作全体が「正義の味方」の物語かと感じられやすいのだ。 オープニング・ナレーションは次のようなものだ。 「晴らせぬ恨みを晴らし、許せぬ人でなしを消す。 何れも人知れず、仕掛けて仕損じなし。 人呼んで仕掛人。 但しこの稼業、江戸職業づくしには載っていない。」 そして山村聡演じる元締めが「この世にいてはならない」と断じた相手のみを仕掛ける。ああ、「水戸黄門」と構造は変わらないじゃないか、という部分もある。 しかし、正義派としか見えない左内が、元はといえば、寧ろ恨まれ憎まれ「殺されても仕方のない」存在だったと知って見ていると何だかスリリングだ。口ではずいぶん立派なことを言っているが、恨みを晴らされても仕方のない人間はお前自身じゃないか……いったいこの「ツケ」は、どう落とし前がくることになるのだろう…… が、しかし結局最後まで、この左内の悪行からくるしっぺ返しはやってこなかった。最終回において、仕掛人稼業のことが妻女に露見して精神的な苦境に立たされるというのはあるが、左内自身が自らの罪業を裁かれる立場になるという話はなかった。西村左内はとうとう最後まで「正義派」で終わったのだ。 こうして、人殺しであることの「ツケ」は、必殺仕掛人においては寧ろあまり触れられずに終わった。仕掛人は最後はどうせ自分が殺されて地獄に落ちる、そういう諦念はある。つまり、それだけプロということだろう。左内という新参者だけがそうした生き方に倫理的な疑念を抱く……そう、これが「左内は実はただの辻斬り」であることとの大矛盾であり、だから忘れてしまわれるしかなかった初期設定なのだ。そして、とはいえ「なかったこと」にはできない以上、左内は倫理的疑念をあまり大っぴらに展開はできない。左内自身が矛盾した存在なのだから。 だから、「仕掛人」は自分たちの「罪」については、「そんなことに葛藤したりしない」プロフェッショナルたちの物語として幕を閉じた。一本一本のエピソードの渋さは後のシリーズにも比類はないが、葛藤や悩みのない、完成された主人公たちの物語では、ストーリーやプロットの面白さはともかく、キャラクターのドラマとしては物足りない場合も出てくる。そもそも存在自体が矛盾した西村左内では不徹底だったのだ。 そこで、シリーズ第2作「必殺仕置人」は、プロではなくアマチュアたちの物語になったのかもしれない。そして少しずつ、「必殺」は「ツケを払う」ドラマになっていったのだ……(おっぺ) |