感想文等 | キャラがとっても立っていた。 ・飛葉だけの魅力じゃなかったはず。 ・ワイルドの流れをもっとよく知りたい。
初めて眼にしたのは子供時分、確か時間潰しのために買った「少年キング」に掲載されていたはず。同じ号に「銀河鉄道999」も連載中で、それも初めて見たんじゃないかと思うのだが、かなり曖昧ではある。 「ワイルド」は飛葉が新幹線のホームにいて、アイドル歌手か誰かが乗り遅れたのを彼女のマネージャーが身を挺して新幹線を停める、歌手はそんなマネージャーを我儘に罵り、飛葉が彼を助ける……そんなシーンだったと思う。 「999」は大四畳半惑星に停車したところで、鉄郎がメーテルに連れられてラーメンを食べ、感涙している回だったような…… まあ、それはともかく、「ワイルド」にまともに向き合ったのは、たぶん愛蔵版の分厚いサイズが順に刊行されていたころだったはずだ。目次ページの辺りに草波を含めたメンバー紹介があって、海外長編ミステリ等を読むとき宜しく、それをちらちら参照しながら読んでいた気がする。主人公が7人となると、やはりなかなか(笑)。 スリリングだったのは、ハッタリではなく本当に主人公たちがいつ命を落とすか判らない、その点が大きかっただろう。後半はその部分を多用しすぎて「死んだと思ったのが実は生きていた」型展開が繰り返される悪弊も産まれたが、主人公チームなんだから大丈夫だろうという安心感のないストーリー展開は、確かにサスペンスがあった。 最初に何の前フリもなく「チャーシュー」が惨死し、衝撃を受けている間に続けて「世界」が殺される。チャーシューのキャラはどうも「両国」に被ってしまい、個性を発揮する機会もなかったので思い入れがないのだが、それでも用意された死に様の無残さは衝撃が大きかった。世界は死ぬ間際に自らのからだにダイイングメッセージを刻み込む壮絶さを見せ、一気に株を上げた。 こののちも、新メンバーとなりながら最終章まで命永らえることのできなかった「テル」や「デカ」の運命も忘れ難い。(テルは生きているのかもしれない(笑)) そして、最終章「魔像の十字路」で、生き残ってきた歴戦の主人公たちが次々と斃れていく展開は、その「死」そのものに感動するわけではないが、やはり胸を衝かれずにはいられない。 何度もの逆転劇を見せ、最後の最後に敵を出し抜いた――はずの安らぎの中で、しかし、強大な敵の脅威を読者に知らしめる形で闇の中へ消えていった「八百」。 壮絶な弁慶の立ち往生を見せた、「ヘボピー」。 ロマンチストな科白を吐きながら倒れた「オヤブン」。 飛葉の助けを確信した直後に、無残に無造作に殺害された両国。 そして、「ユキ」の最後の願いこそは…… この「ワイルド7」がヒーロー群像として稀有な傑作になったのは、あくまで飛葉大陸をメインの主人公とした上で、メンバー全員の感情をきっちりと描き切ったからだろう。ただひとり、チャーシューについては、こうした機会が与えられなかったのが残念なところか。 ――「新ワイルド7」のシリーズが今一つ盛り上がりに欠けるのは、飛葉が一人主人公になってしまい、他のメンバーが殆ど使い捨て要員に近くなってしまったからではないか? じっくり描けば旧メンバー同様の愛すべきキャラクターになるはずが、その暇もなく入れ替わっていく。また、基本的に飛葉ひとりが主人公であり、他のメンバーはあくまで飛葉のサポート役になってしまう展開が、わざと設定されているような感もある。作者の意図は、ワイルド「7」を描くのではなく、「ワイルド7」の生き残り・飛葉大陸を描き尽くすところにあるのかもしれない。どんなに魅力的な新ワイルド「7」を造り出しても、それだけでは所詮二番煎じだと考えてのことかもしれないのだ……(おっぺ)
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