感想文等 | 同時収録の「忘れて眠れ」なんて手を叩いちゃうんだけど(というのは、ヒーローとヒロインがきっちり描かれているので)、この「笑う標的」は、敵方というべき梓のみが印象強く、というか、主役ははっきりと梓以外の何者でもない。それが傷かと言えばそんなわけでもないのだが、本来の主人公サイドたるべき男女のキャラクターの薄さは開き直りかと思うほどだ。
「忘れて眠れ」は紛れもなく主人公達の物語になっているのだが、「笑う標的」には梓の物語である。だから、譲と里美の内面は薄いという以前に何もない。梓と拮抗できる何物も持ち合わせてはおらず、最後の対決もこれはむしろ梓の自死に近いのではないか。
読み返すほどに、梓が胸に焼きついてくる。母を殺した夢を見て涙を流しながら跳ね起きた後の表情は忘れられないだろう…… (おっぺ)
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