感想文等 | このシリーズを読もうと思ったきっかけは、何か他の本の巻末に載っていた紹介文から。 といっても、ちゃんとした書評なり、あとがき解説なりの中の文章ではなかった。今どうなっているか知らないのだが、当時(今を去ること三十年ほど前)ハヤカワSF文庫の巻末に他の作品たちのリストが数行の粗筋紹介付きで載っていたのだ。現在だと電撃文庫とかが、そんな感じじゃなかったか。
その紹介文は、この「狼男だよ」自体のものではなかった。シリーズのうちの1冊、「リオの狼男」の紹介文だった。
――おれは知らなかったのだ。おれの狼人間の力が、輸血によって他の人間に転移するとは。 おれと光夫、2人の狼人間の対決は、避けられない運命だった!
みたいな煽り文句で、「へえー、面白そう」と思った。当時小学生で、2人の狼人間同士の対決というのが、仮面ライダー1号VS仮面ライダー2号みたいな感じでワクワクしたのだ。
そしてたぶん中学にあがって書店の棚を眺めていたときに、実物に遭遇した。おお、これが、という感じで購入しようとしたのだが、何しろ「ウルフガイ 別巻3」と書いてある。つまり、「リオの狼男」はシリーズの第3冊なのだ。いきなり3冊目というのは拙いだろう、第1巻くらいは読んでおかなくては、と思い探してみると、「ウルフガイ 別巻1」もあった。それが、「狼男だよ」である。
じゃあ、別巻2は読まなくていいと思ったのかとか、別巻ではない「本巻」はどうしたのかとかあるが、その頃までに経験していたシリーズ作品というのは、第1巻たる「登場編」で詳しく登場人物の背景等が説明されて、あとの巻はどれから読んでも別に構わない感じだったので、あまり気にしなかったのだ。別巻表記については、別巻は別巻で本巻とは独立していると思ったのかもしれない。これはよくおぼえていないのだ。
そして、「狼男だよ」「リオの狼男」の2冊をまず購入したのだと思う。
「リオの狼男」の圧倒的な面白さについてはまたそのうち書くが、まず先に読んだ「狼男だよ」、これがやはり面白かった。 「狼男だよ」の面白さは、語り口の面白さだ。そもそも「狼男だよ」というタイトルがすごくないかと思うのだが、一人称「おれ」で語られる軽口の連続掃射が笑えた。どんな酷い目にあっても冗談にしてしまうタフで不死身の狼男、犬神明。自分のことを表現する際の「狼男に手を出しちゃいけない。貴重な天然記念物だ」とか「スーパーウルフガイ。ジャンジャジャーン」のような、それまで読んだことのないハチャハチャぶりが楽しかった。
全編に配置してあるエロティックな場面等も、中学生になりたての男子には物語の面白さとは全く別に魅力的だったわけで、これはほとんど性教育だったのではないかというくらいだ。
実際、このアダルト・ウルフガイ・シリーズにおいて、最初の「狼男だよ」は独立して笑えるアクション・パロディ小説の趣が強い。別巻2たる「狼よ、故郷を見よ」をとばして、待望の「リオの狼男」を読み始めたときの「え?」という違和感は大きかった。主人公犬神明のキャラクターが一変して見えていたからだ。
このアダルト・ウルフガイ・シリーズが、主人公の変遷そのものが物語全体のテーマと密着している成り立ちを持っているとは、本当に最後の最後で解ってきたことだった。
結局、「狼よ、故郷を見よ」以外のものも手に入らなかったり何だりで、かなり順番を無視してシリーズを読み通すことになってしまい、あとになってから、このシリーズは順番通りに読みたかったなと思いもしたが、順番通りでなくても十二分に楽しめ、のめり込めたのも確かだった。
シリーズを読み通したあとになると、「狼男だよ」は主人公アダルト犬神明の魅力を伝えるには物足りない作品と言えるかもしれない。けれど、間違いなく面白かった。シリーズがどうのとか平井和正作品がどうのとかをさておいて、何度も読み返させてもらった。
もう絶版のために入手するのは難しいのだが、ハヤカワ文庫版では2つもの「あとがき」が付いていて、特に「第二のあとがき」がなんだかやたら面白かったのだ。ハヤカワ文庫での平井和正のあとがきはとにかく面白く、それもまたシリーズや平井和正作品の魅力のパーツとなっていたのは確かだろう。
新しい版元から文庫が上梓される度、ハヤカワ文庫版のあとがきも再録してほしいと常に思い続けている。(おっぺ)
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