感想文等 | 収録されたうち、長編シリーズの関連作なのは、最初の「ラジオの似合う夜」と最後の「刀之津診療所の怪」の計2編のようだ。 最初の話は、おや、と思っているうちに、一人称の主人公の正体が知れる。 全然、どこがいいのか解らない男だが、とにかく電話だけでも彼女と再会できたのは楽しかった。 だが、1冊読み終わって、いつの間にか想い出し反芻しているのは、こちらではない。 最後に収録された進行形の話関連のほうだ。 これは、例によっての話と思わせながら、土壇場で主人公たちの逆転を見る。海月は勿論のように、萌絵も後衛に退き、背景だった人が立ち現れる。 再会。しかも、ただの再会ではない。 もはや彼は少年ではなく、彼女も少女ではない。 どれほどの時が流れただろう。どれほどの事が通り過ぎただろう。 それらが一気に押し寄せて来るような、最後の再会シーンであり、そして言葉…… ――久しぶりだね…… いつの間にか想いだし反芻している自分に気付き、驚くのだ。 どれほどの時が流れただろう。 どれほどの事が通り過ぎただろう……(おっぺ)
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