感想文等 | なんて、なんて、哀しい……というのが、読み終わった直後の感慨だった。 読んでいる間、「いったい、これはどういう話なんだろう」と感じていた。今までの貫井徳郎の作品たちとはまた違う。東野圭吾『白夜行』の線のような気もする。次第に浮き彫りになる、被害者たち、特に妻の過去…… だが、決して被害者たちは「中心」ではなかった! これは或る意味どんでん返しだった。証言を通して、被害者たちが浮き彫りになっていくタイプの小説と、いつしか思い込んでいた。しかし、そうではなかったのだ。 サプライズと言えるような叙述トリックでもない。どんでん返しと書いたが、さほど巨きなものでもない。ワン・アイデアと、言えば言える。 それでも、最後の最後、証言の幾つかや、そして冒頭を読み返して、そしてまた最後の…… 「犯人」の哀しい、辛い、これは愚行と言わないでほしいと私には想わせてしまう、そんな悲しさが――犯人は、健気に生きたのだ。愚かで、間違い過ぎていたけれど。 何度となく加害者になってしまっている「本岡家」の私には解る。犯人は、一生懸命だったのだ。誰でもそうだって? そうかもしれない。そうだ、誰でも一生懸命に生きている。犯人も、そうだっただけなのだ。あまりにも、間違い過ぎていたけれど。 庇っているのでも、弁護しているのでも、無罪にしたいわけでもない。ただ、解ってしまうのだ。きつく苦しく……!(おっぺ@本岡家)
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