語る「万華鏡」

(「ウォータースライドをのぼれ」の一部削除)

ウォータースライドをのぼれ(うぉーたーすらいどをのぼれ)

項目名ウォータースライドをのぼれ
読みうぉーたーすらいどをのぼれ
分類ミステリ小説

作者
  • ドン・ウィンズロウ
  • 公的データ
  • ニール・ケアリーシリーズ第4作。
    「じつに簡単な仕事でな、坊主」養父にして朋友会の雇われ探偵グレアムがニールに伝えた任務、それは健全さが売りの人気TV番組ホストのレイプ疑惑事件で、被害女性ポリーを裁判できちんと証言できるよう磨き上げることだった。世にも奇天烈な英語教室が始まる。彼女の口封じを狙う者あり、彼女を売り出して一儲けを企む者あり…様々な思惑が絡み合うポリーゲート事件の顛末。
  • 感想文等
  • この作品を読む目当ては、ニール・ケアリーではなかった。
     かなり前から手に入れていた「歓喜の島」、これを読まずにいたのに訳があった。この「歓喜の島」の主人公のウォルター・ウィザーズは「ウォータースライドをのぼれ」にも登場していて、作品内の時間軸では「歓喜の島」のほうが先であるらしい――からだった。
     まず「歓喜の島」で、若きヒーローのウォルター・ウィザーズと親しむ。それから、「ウォータースライドをのぼれ」を読んで、ニール・ケアリーとウォルター・ウィザーズの2大ヒーローの共演を楽しむ。その方がより一層面白く読めるんじゃないか……そう思ったのだ。
     そして、それは個人的には「アタリ」だった。
     「歓喜の島」ではまだ若く、頭も回り体も動く、文字通りのヒーローだったウォルター・ウィザーズ。「歓喜の島」自体はそれほど印象に残る作品ではなかったが、ウォルター・ウィザーズはちゃんとキャラクターとして頭に残った。
     そのあと、文字通りの直後に「ウォータースライドをのぼれ」を読んだ時――ウォルター・ウィザーズはすでに落ちぶれていた。『たいへんな凄腕』であり、ニールの義父のジョー・グレアムが『彼を手本にするように』と言ったという……「歓喜の島」のウォルターは確かにその言葉たちの通りだったはずだ。そのウォルターが……
     たぶん、先に「ウォータースライドをのぼれ」から読んでいたのなら、こうした感と共に読み進めることはなかっただろう。
     私にとっては、この「ウォータースライドをのぼれ」は、ウォルター・ウィザーズの最後の物語だった。ニール・ケアリーの去就も重要ではあったけれど。
     できるなら、もし今後ウォルター・ウィザーズの物語が書き継がれることがあるのなら、「歓喜の島」のようなウォルターの輝いていた時期のことではなく、そんなだった彼がどのようにして落ちぶれていったのか、その過程を読ませてほしいと、そう強く思う。
     はたして人は、どうして、どのように……それをいつも、知りたいと思ってしまうから――。(おっぺ)
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