感想文等 | SFならではのテーマというものがある。それを絵空事と言うのもたやすいが、人生全ても絵空事かもしれないし、案外その絵空事が重要なこともあるのだ。 かつて旧スタートレックの「二人のカーク」で、ジェイムズ・T・カーク船長は2人に分裂し、片方のカークは元通りの1人に戻ることを自らの死として感じ、恐怖した。 それから百年余り、ヴォイジャーのトゥヴォックとニーリクスは合体してトゥーヴィックスという新しい人格となってしまい、周囲の仲間たちは元の2人それぞれに戻ることを切望するが、トゥーヴィックスはそれを自分への殺害行為だと認識した。 元の2人の記憶や性格を受け継ぎながらも、独立した新しい人格の「1人の人間」として、トゥーヴィックスは自分の生き続ける権利を訴える。ニーリクスにとっては恋人であり、トゥヴォックにとっては愛弟子であるケスに、トゥーヴィックスは言う。艦長に言ってくれ、私は生きていたいんだ…… ケスにはつらすぎる問題だったのだ。 そして、ジェインウェイは決断し、トゥーヴィックスを元の2人に戻そうとする。 トゥーヴィックスは仲間たちに叫ぶ。 「私は君達を恨みやしない……みんな私の友達だ。けれど、君達はこれから一生、私を殺した記憶を背負って生きていくんだぞ!」 そして分離は成功し、トゥヴォックとニーリクスはやれやれ戻ったと喜ぶ…… はたして、これは「殺人」だったのか? ただの治療だったのか? 人格、個性、魂、そういうものが最も重要視されるものならば、いったい――。 トゥーヴィックスの心はどこへ行ってしまっただろうか。(おっぺ)
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