感想文等 | 森絵都の「児童小説」は文句なく面白いものばかりだった。読み手は「児童」でなくてもよい。全年齢向けに対応できていた。 前回、特に「児童向け」ではなく、むしろアダルト向けを謳っていた『永遠の出口』を読んだ時は、今一つ面白みを掴み損ねた気がした。また読み返せば違う可能性が山ほどあるので再読棚には入っている。ただそんなだったので、今回の『いつかパラソルの下で』も、どうかなあ? という不安感はあった。読書するのに不安感なんておかしなものだけれども。 冒頭がいきなりセックス・シーンだったので、「大人向け」だとこうなるというのはいかがなものか、などと思ってしまった。性の描写がコバルト文庫では新鮮だった田中雅美が、アダルト小説では凡百の官能小説と何ら変わるところがなく魅力を失っていた、ああいう哀しいのはいやだなあなどと思いながら読んでいった。 杞憂というのはこういうものだねというか、あるいは、全然いつもの森絵都と変わらなくてどうなのかなというか、でもやっぱり、森絵都の作品で、森絵都の主人公たちと会えて、よかったなというのが一番正直なところか。 いつもの森絵都の主人公が、そのまま大人になっている。そんな感じで、ぐいぐい牽引されて読んでいけた。 なんとなく川原泉の部分もあるような……そういう、「生きる」のはいろいろつらいけど、まあ、ムリはしないでいいけど、とりあえず楽しめ方もいろいろあるしという……どこにもそんなふうには書かれてなどいないのだが、いつの間にか、自分の中では――。(おっぺ)
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