感想文等 | 島帰りの若者に対して、仕置人たちが今日もまた感傷たっぷりに接していく。ほんとうにこの新仕置人は不出来な「必殺」だ。ハードボイルドたるべき本格的にクールなプロの殺し屋たちの物語のはずなのに、どうしてこんなにおセンチなのか。まったくもって不出来である。 特に鋳掛屋の巳代松、この人は本当におセンチでどうしようもない。口では世間なんか信用できない、人間なんてララーラララララーラーとか言いながら、一番親身に真剣になって若者を気遣っている。実に言行不一致の甚だしい卑劣漢である。観ているこちらが胸をうたれて申し訳なくなってくる。全然ハードボイルドじゃない。 こんなだから、アンチ新仕置人派から「仲良しごっこ」だの「パワーがない」だの言われるのだ。後期仕事人と変わらない馬鹿馬鹿しさと罵られる。何もかも己代松や正八のおセンチさのせいとは言わないが、あまりに彼らが人間味たっぷりで、建前上だけでクールなことばかり言いながら、その実あまりにセンチで、弱点いっぱいで、人を見捨てたり見限ったりできず、一度関わったらトコトン最後まで気にかけずにはいられない、そんなあまりにも信じられない、あまりにもあり得ない、そんな恥ずかしいくらい魂の性根の座った連中なので、もうこれは莫迦にされても仕方がないではないか、莫迦なんだから、全然お利口さんでないのだから。世渡り上手でもエリートでもないのだから。泥まみれになりながら、それでも虚無にも絶望にも陥って外道になることを自分に肯んじないで生きているのだから。 そういえば、ハードボイルドの雄と言われるレイモンド・チャンドラー、全然ハードでもクールでもなくて、おセンチ極まりない主人公だったな、と想い出す。 本当に、この新仕置人たちは嘘つきばかりだ。人のことなんかどうだっていい、自分だけが大事なんだと言いながら、人の善意なんて裏があって信じられない、善意なんか要らないと言いながら、そんな自分たちだけは命がけで、誰かのために善意を果たしきっているのだから。 こんなの全然必殺でないのだ。そう言われたって仕方がない。 仕方がないんだけれど、これは本当に最高の必殺なんだと、個人的にはそう、信じている。。。(おっぺ)
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