感想文等 | これはかなり魅力的なエピソード。 まず冒頭、突然印象的なエフェクトと共に、艦内の様子が微妙な変貌を遂げる。ピカードらの艦隊制服がやや戦闘的な物と替わり、艦の様子自体もそうなる。非戦闘員の姿はどこにもなくなり。。。 ターシャ・ヤーの姿がある! エフェクトの一瞬、舞台は非常に似てはいるが微妙に異なる世界、パラレルワールドに入ったのだ。そこでは、ターシャ・ヤーは生きており、未だ保安主任の役目に就いている。ウォーフの姿がないのは、この世界ではクリンゴン帝国との戦争の最中だからなのだ。クリンゴン人のウォーフが在籍しているはずがない。 ただひとり、エル・オーリア人で超能力を持つガイナンのみが世界の遷った違和感を感じ取っている。。。つまり、単にパラレルワールドのエンタープライズ譚が語られ始めたのではなく、実際、世界そのものが遷移してしまったのだ。ピカードたち、元の世界に属していた全員が、丸ごと別の世界に上書きされてしまったのだ。 なぜそんなことが起こったのか。。。それは、ここで登場した航宙艦が解答となった。エンタープライズ-C。。。このエンタープライズは、ロミュラン人の攻撃を受けたクリンゴン基地を守ることで、惑星連邦とクリンゴン帝国との和平に貢献した歴史を持っていた。。。「元の世界」では。 しかし、その歴史が狂ったのだ。エンタープライズ-Cはクリンゴン基地を救うことができず大破し、結果として惑星連邦とクリンゴンの和平は失われ、寧ろこうした長期の戦争が続く結果となったのだ。。。 ガイナンは独り、「この現実は違う」とピカードに告げる。戦争など起きてはいない、誰も闘ってなどいない、このエンタープライズには子供たちも乗っていた。。。 そして。。。 「元の世界」では、知り合う機会を持たなかったガイナンとターシャは、哀しい会話を交わす。「私がどうかした? 長い付き合いなのに」「長くなんかないわ。あなたは。。。いない人なのよ」 「本来の世界」では、自分はすでに死んでいることを知ったターシャは、その自らの運命を糧に、「本来の世界」への回帰を果たそうとする。殉職したC型エンタープライズの艦長に代わり、この艦を駆ってクリンゴン基地救出を試みるのだ。 「君はいま生きているんだ。犠牲になる必要はない」 「ガイナンの話では、私は無意味な死を迎えたそうです。そんなのはいやなんです。仮に死ぬとしても、有意義なものでありたいんです」 そして――世界は再び変転する。。。 パラレルワールド、世界の変移、ターシャの復活と死、ガイナンとターシャの哀しい会話、ターシャとピカードの悲しい交情、そして。。。 世界が再起したとき、誰も、もう何も。。。 ただ独り、ガイナンは何もかも知っているかのような顔をして、ジョーディに言うのだ。 「それで、どんな人だったの? ヤー大尉って……」 果たしてこの時、ガイナンにはどのような記憶が残っていたのだろうか。幽かな記憶か、それとも完全な記憶か、あるいは。。。 いくつものエキサイティングな、或いは意表をつく、或いは胸をうたれる場面が輩出する、本当に印象に残るエピソードなのだった。(おっぺ)
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