作者 | 監督・貞永方久 脚本・國弘威雄、貞永方久(おっぺ)
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公的データ | 「必殺仕置人」第2話。 出演・原良子 松下達夫 宮口二朗(おっぺ)
雑穀問屋の元締めが次々と殺された。そこには何故か花札が一枚 赤いかんざしに恨みを遺して死んだ女の願いを─ ろくでなしの仕置人が立ち上がった
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感想文等 | 第1話「いのちを売ってさらし首」が「結成編」「顔見せ編」に過ぎないとはとても言えない。仕置人の姿勢、被害者――「頼み人」――の姿、とてもパイロット版というレベルではない。 しかし、もしも強いて強いて第1話を「理念設定編」と考えたとすれば、この第2話はまさしくその「実践編」になるだろう。 この後も「必殺仕置人」には印象深い傑作佳作が誕生するが、「牢屋でのこす血の願い」には、外すことのできない原点が生々しいかたちで存在する。それはたぶん、「情念」という言葉で知られているものだ。 ストーリー自体も、第1話に比較すれば些か捻った形のプロットになっている。まず連続殺人事件が発生するが、その犯人を仕置するというわけではないのだ。 実は事件の犯行者は、「五瓣の椿」さながらに、「復讐」のために殺人を犯している女だった。力らしい力を持たない彼女が、ただ知恵を絞って続けていた復讐。しかし、権力者と結託した敵方によって、ついに彼女は捕らわれ、磔となる。頭のいい敵方は、逆に彼女の犯行を利用しての便乗殺人の罪まで彼女に押しつけたのだ。 「勘弁してくれ……俺にはどうすることもできなかったんだ……」 主水が磔にされる前の彼女にそう詫びたのは、捕縛の際、「敵方」たる豪商が、手下どもに命じて彼女を輪姦させるのを止められなかったからだ。豪商は主水の上司と結託しており、主水は手出しなどできなかった…… 死んでいく前に言い残しておきたいこととして、女は主水に自分の犯行の理由を語る。やむにやまれぬ復讐心から、憎い連中を殺して行こうと思ったこと。そのためならどんな犠牲も払おうと心に決めたこと。そして逆に利用され罠に落ちた無念。 この語りの場面では、音楽上の演出が冴え渡り、ひとりの女の悲劇がこの上なく鮮烈に迫ってくる。騒がしかったり、いたずらにしんみりしたり、そんなBGMは無意味なのだと思い知らされ、平伏してしまう。 情念としか言いようのない激しく熱い想い。つらさ。哀しみ。無念さ。そしてそれを重く受け留める仕置人たち。そう――だから、これは「仕事」ではなくて仕置なのだ。やりたくないことを、金のため食うためにやる「仕事」ではない。この頃の仕置人たちは、やりたくてやりたくて仕方ないことを、「仕置」だからという「言い訳」「建て前」でやることを出来得ていた。だからどこまでもパワフルで楽しげだったのだ。 「俺たちゃワルよ。ワルで無頼よ」 そう自称した主水のなんとうれしそうだったことか。 そして――この回での「仕置」もダイナミックだ。罠を掛け、雑魚の小悪党どもを斬り、突き殺す。だが、本家本元の豪商はただ殺してしまうだけには済ませなかった。前回同様、念仏の鉄が背骨を外して脊椎を損傷させ、手足の自由を奪ってしまう。そして虜囚として飲まず食わずの状態にする。 もともとはこの豪商が米を買い占め、青田買いをし、自分だけの利得を我が物とした策謀が根幹だったのだ。 「ほら食いたいか、飯だぞ」棺桶の錠や、おひろめの半次がそう言って茶碗に盛ったご飯を見せつけ、しかし決して食べさせない。 「食いたいか、だったら……」 仕置人たちは、蔵の中の米を全て市場に吐き出すことを条件とした。これで豪商は「すっからかん」となり、そうなると結託していた与力ももう庇い立てなどしはしない。 豪商は、先に死んでいった女同様に磔となった。 この結末を見届けた仕置人たちは、次はあの与力をやる番だなと話しながら帰路に就く…… 「必殺」の最もオーソドックスな型がここにある。頼み人の哀しみの語り、悪の卑劣さ、そしてその上を行く仕置人の豪快さ。 この第2話を原点として、「仕置」に彩られた「必殺シリーズ」がスタートし、様々なバリエーションとテーマを抱え込むロングラン作品となったのだった。(おっぺ)
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