感想文等 | 気軽な気持ちで読み始めて(だって何しろ殆どイラスト小説みたいに見えたので)、突然あっ、これはトリックがあるんじゃないのか、とドキリとしたのは89ページめ(講談社ノベルズ版ね)。固有名詞抜きで「妻」と書いてある、その書き方が、あれっという感触を持ち上がらせたのだ。 だとすると――もし「妻」が「スージー」じゃないとしたら……と考え始めると、パタパタと筋道は通っていく。倉知淳の「星降り山荘の殺人」のときと同じ。 なあるほど、だからスージーのところだけ一人称なんだ……アンフェアにならないように。三人称では、サエグサを「夫」と書くわけにはいかないから。 あとは読み進めながら、この感触に合致する書き方か、それとも……を読んでいくことになる。。。 と、いうわけで、森博嗣の作品では珍しく、作者のたくらみを先に感知できた。「今はもうない」以来、次々仕掛けられる大技小技の叙述トリックには、殆どことごとく出し抜かれてきたのだけど。 この可愛らしいイラストがなければ、もっと早く感づけていたかも――ということは、森博嗣としてもやはりこれは「小品」だったかもしれない。 でも、面白かったけど(笑)(おっぺ)
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