感想文等 | さて、原作梅安と、テレビ「必殺仕掛人」とでは、かなりの差違がある。 肝心の主人公、藤枝梅安のキャラクターからして、原作とテレビ版(緒形拳である)とでは、相当違う。相棒も、テレビ版では林与一演じる西村左内という元は辻斬りであるし。
が、それでも一応なりと「原作」なので、テレビ化された中に、原作とタイトルからストーリー展開から同じようなものがある。「秋風二人旅」など特にそうだ。
これ、実は、今回原作を読むまで、「あきかぜふたりたび」と読んでしまっていたのだが、「しゅうふうににんたび」らしい。
それはともかく、いまさっき書いたことを打ち消してしまうようだが、この作品、原作小説とテレビ版とでは、ラストの部分で大きな改編が存在するのだ。
ネタバレにはなるが、この改編の部分が、テレビ版「必殺」の大きな特徴ではなかったかと思われるので、ちょっと書いてみよう。
この「秋風二人旅」のストーリーは、主人公の仕掛人梅安が、仲間の同じく仕掛人彦次郎と旅をしていたところ、この彦次郎の妻や娘を殺害した外道と遭遇し、復讐の機会をうかがうというもの。(テレビでは、彦次郎というのは前述の西村左内の子供の名前になっていたので、彦造に変えられていた) だが、実はその外道と目した侍は無実であり、この侍の弟こそがエリートの兄と顔だけそっくりで性格は邪悪、まさしく彦次郎の仇に他ならなかったのだ。兄の侍は弟のために苦しめられ、ついに弟を殺すことを仕掛人に依頼する。そして、梅安と彦次郎は、弟を倒す。 原作もテレビもここまではほとんど同じである。
原作では、エピローグとして、2年後、梅安がこの兄の方と出会うと、兄は無法の弟がいなくなって幸せになれていた、というような話で終わっていた。
テレビ版では。。。彦次郎(テレビだから彦造だけど)の復讐も果たし、外道な弟に苦しめられていたエリートの兄もこれで救われた、、、のだが、この侍の清々しい笑顔を背景に、最後、梅安は彦造を相手に、何か割り切れなそうに言うのだ。 「彦さん。。。あたしゃ、あのお侍が一番悪いヤツだったような気がするよ」
この辺、実際の映像作品を見ていただかないと、この梅安の述懐もピンと来ないかもしれないのだけれど、こういう「疑問符」がテレビ版必殺の1つの特徴だった、と私なぞは思ったりもするのだ。
もっとも、人口に膾炙してきた「必殺仕事人」の3作目辺りからは、そういう「疑問符」があまり見受けられなくなって、『時代劇は必殺です』のキャッチフレーズ通り、「お茶の間で、家族で安心して見られる時代劇」と変わらなくなっていったような気もするが。。。(おっぺ)
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