感想文等 | 大森さんのお芝居はすてきです。
小説等で、「作品内作品」要するに「劇中劇」はしょっちゅう読んできた……が、文字どおりの劇中劇は、そもそもあまり演劇など観ないものだから、ほとんど知らなかった。 だから、この「不思議なクリスマス」の構造が、いったいユニークなものなのか……そのあたりはよくはわからない。 ただ、自分個人としては、同じ役者たちが3通りの役を重層的に演じるこの物語はとても印象強いものになった。小説ではこうはならないだろう。眼で見て文字どおり「一目瞭然」の「同じ人間」が重なり合いながら別の人間となり別の物語を演じる。ブレながら、別々の物語のはずが、いつしか重なり解きほぐれていく。 それはまるで折原一スタイルのミステリを読んでいるときの、あるいは時間物のSFを読んでいるときのような、謎解きの快感めいたものさえ感じさせてくれたのだ…… そしてもちろん、それだけではなく、大森美紀子の少年演技――それは、実際、少年チャーリー・ブラウンだけではなく、酒好きの男の役でですらそうなのだが、本当に「少年」というにふさわしい「ひたむきさ」を表現していた。 いつだって、「ひたむき」なものは人の心を打つ。単純でも、大切なことなのだから。(おっぺ)
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