感想文等 | ディオとの因縁の対決の際、ジョセフ・ジョースターはハーミット・パープルを宿敵ディオの体に巻きつけることに成功した。そして放つ、「波紋!」 が、その瞬間、ディオは傲然と叫びはなった。
「老いぼれが! 貴様のスタンドが一番! なまっちょろいぞ!」 そして、石仮面の吸血鬼としてのパワーで、一気に! ハーミット・パープルを引きちぎり、波紋の届く前に脱出する!
ジョセフ・ジョースターは愕然とした表情でそれを確認するや、身を翻し、いったん「逃げ」に入った……
いや、逃げるのはいいんですが。なんで、ピンピンしたまんま逃げるのよ、ジョジョ? スタンドが引きちぎられたんだから、あんた、おんなじように引きちぎられるんじゃなかったの? 勿論、そんなことになったら困るんだけど……(おっぺ)
「引きちぎられるスタンド」ということで突然思い出されたものがありました。それは、「運命の車輪」との戦いの中でのことです。
16巻192,193ページをご覧下さい。ジョジョ達を乗せたランクルが谷底に墜落する! とっさに花京院典明はおのがスタンドを放った。『法皇の緑』! 射程距離の長いハイエロファント・グリーンは落下しつつあるランクルから崖上でせせら笑うように在る奇怪な車めがけて延びた。
ジョセフが叫んだ。 「花京院ッ! やめろッ、おまえの『法皇』は遠くまで行けるがランクルの重量をささえきるパワーはないッ! 体がちぎれ飛ぶぞ!」 …………。 そりゃあそうだ、と思いました。もし、これでなんともないんなら、どんなスタンドでも「常に無敵のパワーを発揮できる」ことになってしまう。いくら「スタンドはスタンドでしか倒せない」といっても、本来支えきれるはずのない、そのスタンド以上のパワーを持つ何かとスタンドをぶつければ、スタンドの方が敗北しなければ話の筋道が通りません。 「史上最弱のスタンド」ラバーズを考えてみましょう。例えば、スティーリー・ダンが何かの必要に迫られて、ラバーズを使ってかなりの重量のあるものを支えるなり引っ張るなりしなければならなくなったとしましょうか。具体的な状況を設定するなら、例えばダンがやっぱり崖から落ちそうになるか何かして、あとほんの数ミリ数センチ指が届けばというところでラバーズを出し、崖と自分の指とをラバーズでつないで支えようとしたとでもしましょう。いったいラバーズは無事でいられるものでしょうか。
「スタンドはスタンドでしか倒せない」というルールだけから考えれば、「崖」と「ダン」という「スタンドでないもの」によって左右なり上下なりから引っ張られる形となったスタンド・ラバーズは、つまりは「スタンド」によって攻撃されているわけではないため、「痛手を被ることなく」ちゃんとダンの重量を支えきれることになってしまいます。いくら凄まじいほどの重量が、パワーがラバーズを襲ったとしても、それは「スタンドによるものではない」から。「スタンドはスタンドでしか倒せない」のだから、ラバーズは、ダンの重量などものともせず、ちゃんと無事にダンを支えきれることになるはずです。
でも、実際にはそんなことはあり得ない。ラバーズは、「史上最弱のスタンド」であり、髪の毛一本も支えきれない弱々しいスタンドだからです。
では、いったい、現実に先程のような状況に陥ったとき、ラバーズにどのようなことが起きると仮定されるでしょうか。 「スタンドはスタンドでしか倒せない」──なぜなら、スタンドは実体ではなく、「霊体のようなもの」あるいは「波紋と同じようなエネルギー」だからでしょう。けれども、例えばスタンドはものを掴むことができる、ものに巻き付くことができる、ものを支えることができる──このように、スタンド自体の、あるいは本体自体の意志によってスタンドの方からわざわざ「スタンドでないもの」に接触している場合というのはどうなのでしょうか。
僕は、それが即ち、ジョセフの叫ぶ、「体がちぎれ飛ぶぞ!」であり、そして、現実にディオとの戦いでちぎれ飛んだハーミット・パープルではないか、と想像するに至りました。 そして、しかしこれは「スタンドによる攻撃」ではないため、スタンドは「ちぎれ飛んだようになり消失した」──パワーの限界を超えたために──が、本体への影響は「なかった」。なぜなら、あくまでも「スタンドはスタンドでしか倒せない」、ディオの吸血鬼のパワーに敗北してハーミット・パープルは引きちぎれる「ように」消失しただけであり、「倒された」「傷つけられた」わけではないために、本体のジョセフについては別に被害を被ることはなかった──。
どうでしょうか、こういったタイプの考え方は? もちろん、だから、もし「運命の車輪」によって崖下に落とされたランクルを、花京院が無謀にハイエロファントで支えようとした場合、ハイエロファントは「ちぎれ飛ぶぞ!」となってしまうけれども、花京院自体は無事だったのではないか、と想像しているわけです。(おっぺ)
「ハーミット・パープル」は実はスタンドの一部でしかない、という説には実は傍証があります。即ち、これもいつか誰かが「謎」として言っていたと思うのですが、「何故、ディオはハーミット・パープルが使えたのか」という点です。
ジョジョたちがエジプトに旅立つため最初に「塔」のスタンドの待ち受ける飛行機に乗っていたとき、明らかにハーミット・パープルと見えるスタンド能力で、ディオはジョセフと承太郎を念写しており、それについて「スタンドは一人一体のはずだ、何故だ、何故なんだ」とどこかでどなたかが言っていたと思います。
最初、僕は、ディオのスタンドは「他のスタンド全ての能力を使えるスタンド」ではないか、と想像していました。その正体が「世界」のカードで暗示されるらしいと分かったとき、ますますその可能性を確信したのですが、ご存じの通り、これはあっけなく潰え去りました。
さて、そこで「何故ディオのスタンドは「ザ・ワールド」なのに、「ハーミット・パープル」まで使えたのか」。
考えられる答え。「ハーミット・パープル」は「一体」として数えられる「スタンド」ではなかったから。ジョセフ・ジョースターはそう思っていたが、実は、彼は自分のスタンドの能力のごく一部分のみの発現を「自分のスタンド」と考えていたために、その能力を自ら制限してしまっており、自分ではそれに気づいていなかった。
「ハーミット・パープル」と呼ばれた「あれ」は、実は、「ハイエロファント」の「エメラルド・スプラッシュ」のごとく、スタンドから放たれる「能力」でしかなかった。「シアー・ハート・アタック」とも違う。なぜなら、「シアー・ハート・アタック」なら、「エコーズ・アクト3」の攻撃により、本体の吉良にまで影響が及んだが、ハーミット・パープルを引きちぎられても、ジョセフには影響がないように見えた。従って、ハーミット・パープルを他の何かと比べるならば、やはり「エメラルド・スプラッシュ」あたりと考えられる。
となれば……ジョセフ・ジョースターには、実はまだ途方もなく巨大なスタンド能力が秘められているのではないか。
なぜ、ジョセフとの対決の際、ディオはハーミット・パープルは使わなかったのか。使う必要がなかった……それはあるだろう。ではもう一つ。何故、自らの能力でもあるはずのハーミットのことを、「なまっちょろいスタンド」などとけなしたのか? 「あの」ディオが。
ディオは、ジョセフ・ジョースターの真のスタンド能力のことに気を回していたのではないのか。自分は、「世界」のオプション機能として「ハーミット」という能力を使用できる。当然、ジョセフ・ジョースターも、ハーミットをオプションとする「スタンド」を持っているはずだ。ソレハ、イッタイ、ドウイウパワーヲモツ「スタンド」ナノカ?
ディオは、本体が意識することで、そのスタンド能力が伸びることを知っていた。承太郎が、「時の止まる」ことを認識した後、時の止まった世界に入り込んだときに、確かそういう意味のことを言っていたと思う。
ディオは、ジョセフが「ハーミットはオプションであり、実はその裏に強力なスタンドが控えている」ことを「認識する」のを用心したのではなかったのか。
……以上は、あまり論拠のはっきりしない、ほとんど「願望」から展開させたものであります。やっぱり、ジョセフ・ジョースターたるもの、まだまだこれから活躍してもらわなきゃーな、と思っていたりするわけです。
後輩ジョジョの絶体絶命に、強力なスタンドをひっさげて(なんなら、アレッシーに若返らせてもらっておいてもよい)「ジャン!」という擬音と共に登場するジョセフ・ジョースターの勇姿を見てみたいだ、と思っていたりするわけなのです。(おっぺ)
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