死刑制度を真面目に考えよう


はじめに

 昨今の世情不安定は昨年から更に加速、年少者の凶悪犯罪が話題となっ
て居ます。少年法改正を求める声が高まり、それに吊られる様に死刑制度
存続も声高になりました。全体に厳罰主義推進に傾いた様ですが、海外を
見廻しても厳罰が犯罪減少に直結したと言う確証は無いそうです。
 
 私は公教会員(カトリック信徒)ですが、宗教的観点のみで死刑廃止を言
うのでは無く、憲法に抵触する等の理由からも廃絶を訴求致します。宗旨
以前に人が人の命を奪うのは、一般的な観点からも許されません。日本国
民の四分の三が現行死刑制度を支持していると言われますが、ここでは死
刑制度の問題点と、法や道徳の問題点を真摯に論じたく思います。


参考資料(最高裁による死刑合憲判決)

ここ数年来の凶悪犯罪の傾向

 報道が両刃の剣とは良く言ったもので、テレビは言うに及ばず新聞でも
猟奇犯罪や凶悪犯罪を糧にした様な世情になって仕舞いました。少年犯罪
では報道等から法の盲点を知り得て、年少者の犯罪は罰が軽いので捕まっ
ても大した事が無いから安易に犯罪に走るとも言われます。
 成年犯罪を見ても保険金目的の事犯が目立ち、嫌疑を掛けられた者が記
者会見を開く等の不敵さが見られます。警察不祥事が堰を切った様に吹き
出し、報道材料に乏しいマスコミが時に扇情的な報道をする。バブル崩壊
から長く続く不景気による国民の不満も、犯罪を憎む思いを増速して居ま
す。しかし闇雲な厳罰主義が必ずしも奏効せず、犯罪の背景や道徳の重要
性には然程の言及がされません。

 少年による凶悪犯罪激増を観ての死刑制度存続論や、適用拡大を言う声
も大きいのですが、是は可笑しいと思います。成年による凶悪犯罪を受け
てのものならば幾分は理解出来ますが、昨今の話題に成る年少者は死刑適
用外なのです。
刑法では18歳からの死刑適用が認められています。しかし実際にマスコ
ミを賑わしている年少者は、殆どが未成年ではありませんか。ですからそ
れ等の凶行を見ての死刑云々は不適当と言えます。
 18歳と19歳への適用も余り考えられず、嘗て永山則夫が犯した樣な
連続犯行も考え難く成っています。成年に対する死刑判決によって年少者
への警鐘とすると言うならば、是は本末転倒の理論と申せます。少年犯罪
の凶悪化や続発と死刑制度は、分けて考えるのが適正かと思います。


死刑制度を肯定する意

 ここで死刑制度の存続或いは拡大適用を言う人達の、報道記事やネット
に於ける発言から目立ったものを紹介します。極論もありますが死刑に付
いて肯定派がどの様に考えているのか、論拠は適切なのかも含めて御考え
下さい。

1.死刑があるから犯罪を思い留まる効果があるので、抑止手段として強
大な効果を発揮する。

2.人を死に至らしめた者は自らも死に至るべきで、死には死を以って償
えと云う因果応報の理論。

3.死刑制度は被害者による私的報復(仇討ち等)を防ぐ為のもの。(国家に
よる復讐代行との意見もある。)

4.凶悪犯を徹底的に懲らしめないと世論が納得せぬのみで無く、犯罪に
対する誤った規範を醸成する等の悪弊をもたらす。

5.死刑を執行すれば永久に再犯の恐れが無い。(再犯率を無視出来ない。)

6.凶悪犯の存命自体が社会不安を掻き立てる事もあり得る(麻原の場合)
更に恩赦・特赦・大赦で社会復帰する可能性が残されている。

7.犯罪者にとって「終身刑」は死刑以上に残虐な刑罰に成る可能性があ
るので終身刑等は認めず、人道的見地からも死刑を適用すべきだ。

8.現行制度でも物足らりないので、更に過激な死刑執行で抑止力の増大
を計るべきだ。(例として公開処刑や、敢えての残虐刑等)

9.兎に角死刑だ。

10.その他、憂さ晴らしとしか言えない暴論。


死刑反対派や慎重派の意見

 人権団体や宗教団体を中心に、根強い死刑廃絶運動が幾つもあります。
宗教の観点から死刑廃止を求める者、憲法違反と言う見地から反対する声、
反対や慎重な運用を望む民意も高まっています。先進国中では国家として
の死刑制度は稀有に成りましたが、政府には死刑制度廃止の考えは無い樣
です。制度存在の是非を問う以前に法体系等に問題が多々あり、昨今の厳
罰至上主義はそれ等を軽んじているかも知れません。

1.死刑は残虐刑に当たり、憲法に違反する。

2.国家による報復の代行ならば、報復を禁じた憲法にも抵触する。

3.誤審や冤罪の場合に償う手段が無い。

4.摂理に反する。宗教的観点

5.人が人を殺す権利は、如何なる場合にも存在せぬ。

6.法曹界の資質も問題。浮き世離れした裁判官

7.証拠・証言・鑑定の危うさ

8.先進国中でも死刑存続国は少なくなった。国として存続させているの
は更に少数派である。


参考意見(より残虐な刑罰を課す為に、死刑に反対する)

 ネット上では死刑反対論と言うよりは報復是認論として、下記の樣な意
見もありました。真面目な討論を望んでいるとは思えず、討論の場が悪か
ったのではないかと思いますが、参考の為に敢えて掲示致します。

1.死刑を執行して仕舞えば犯人の苦しみは其処で終わるが、被害者の苦
しみは何時までも消えない。犯人を徹底的に後悔させる為には、終身刑を
適用して一生苦しめるべきだ。

2.1.にも関連して死刑を適用せずに辺境の地(南極など)に流刑し、且つ
生活支援を為さずに自給生活を送らせる。

3.死刑に成れば被害者は報復手段を無くすので死刑は反対。自分が被害
者遺族ならば、何としても犯人を殺して無念を晴らす。或いは義憤に駆ら
れた第三者にその機会を与える為にも、死刑は無くした方が良い。

4.死刑の代わりに強制的な臓器摘出や部位の切除を行う。摘出したもの
は必要としている者に提供すれば世の為になるし、犯人は片輪になって辱
めを受けると言う二重の効果がある。

参考資料(最高裁による死刑合憲判決)