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里屋和彦の『エネルギー学講座』



(2004/05)

Vol.47 原子力業界の大分裂(9)
再処理派、再処理見直し派、両派のつばぜり合いは、めまぐるしい状況になってきた。再処理派にとり形勢が危うい状況になってきて、再処理見直しに傾く国家中枢(主に官)の動きに対して、間髪入れず応戦してきている。

電気新聞2004.5.17より転載する。

(転載はじめ)
電事連、燃料サイクル推進を決議−藤会長「不退転の姿勢を再確認」
電気事業連合会は14日、国内での核燃料サイクル確立の決意を示す「原子燃料サイクル推進に関する決議」をまとめた。

使用済み核燃料の国内再処理を土台にした現行の核燃料サイクル政策見直し論がくすぶる中での今回の決議は、青森県六ケ所村の再処理工場操業に向けて「業界として不退転の決意で取り組む姿勢を再確認」(藤洋作電事連会長)したものといえ、原子力開発利用長期計画(長計)や長期エネルギー需給見通しの改定を巡る議論でも電事連は「経済性という短期的な観点ではなく、国家百年の計に立った戦略立案」を強く求める方針だ。

核燃料サイクル推進への業界側の総意をうたった決議は、同日の電事連・総合政策委員会で満場一致で決まった。立地地域や政府、政界にもこの決議を伝える。

六ケ所再処理工場の不良溶接によるプール水漏えい問題などで、停止していた使用済み燃料の搬入再開を青森県の三村申吾知事が容認したことや、劣化ウランを使って同工場の性能を確かめるウラン試験の安全協定についても同知事が「検討の手続きに入る」と一歩踏み込んだ発言をしたことを受けて、決議では「サイクル確立に向けた流れを確実にしていかなければならないと意を強くした」という、業界側の総意が盛り込まれた。

同日会見した藤会長は学識者や与党の一部議員からもサイクル政策見直しの声が出ていることについて、「エネルギーは長期的観点で政策判断すべき問題。経済性など短期的な判断で政策を誤ってはならない」と繰り返し強調。サイクルは直接処分(ワンススルー)より割高だとの理由から挙がっている、見直し論を真っ向から否定した。(電気新聞2004.5.17より)
(転載おわり)

里屋和彦です。
他産業のご多分にもれず、エネルギー業界においても、最終的には、業界の意向に沿う形で官業間の調整が図られてきた(従来は)。ところが、自由化の問題が浮上して以来、官(自由化推進)vs.業(自由化慎重)の対立関係が先鋭化している。

核燃料サイクルをめぐる対立も、発端は電力自由化でもあったため、両者の緊張関係(官(再処理見直し派)vs.業(再処理派))がそのまま維持されたままである。

また、自民党も電事連の動きに呼応してか、再処理派としての立場を旗幟鮮明にした(党内には河野太郎氏のように公然と再処理反対の立場の人もいるが)。
電気新聞2004.5.20より転載する。

(転載はじめ)
サイクル政策に理解示す声相次ぐ−自民合同会議

自民党は20日、石油等資源・エネルギー調査会、電源立地等調査会、原子燃料サイクル特別委員会の合同会議を党本部で開き、原子力バックエンド事業について電気事業連合会やPPS(特定規模電気事業者)のダイヤモンドパワーから意見聴取した。この中で、電事連は原子燃料サイクルの必要性を説明。

また、ダイヤモンドパワーは制度・措置検討小委員会で主張した論点を紹介した。一部議員からは核燃料サイクルに慎重な意見も出されたものの、エネルギー総合政策小委員長の甘利明議員が慎重派議員に「サイクル凍結と言うなら、その対応策を考えて発言してほしい」と要望。また、出席議員の大半もサイクル政策の重要性に理解を示す発言が相次いだ。(電気新聞2004.5.20より)
(転載おわり)

里屋和彦です。
そんな中、核燃料サイクル(その内のプルサーマル)の意義に疑問を呈するニュースが入ってきた。

朝日新聞2004.5.24より転載する。

(転載はじめ)
ウラン資源量、270年分残存 核燃料サイクルに疑問符
原子力発電の燃料となるウランの推定資源量は、発電後の使用済み核燃料の再処理をしなくても270年分あるとする国際原子力機関(IAEA)などの試算が23日、明らかになった。再処理をしてプルサーマル方式で使用しても300年分にしかならず、大差はない。日本政府と電力業界が巨費を投じて推進する核燃料サイクル計画の必要性に疑問を投げかける内容だ。

(中略)

報告書は、再処理をするか否かに分けてウランの残存年数を試算。鉱山から採取できる従来型の資源量は、再処理をせずに使用済み核燃料を直接処分する方式を取った場合、既知資源量が80年分、これを含む推定資源量を270年分とした。

一方、再処理して取り出したプルトニウムを軽水炉で1回だけ再利用するプルサーマル方式だと、それぞれ100年分、300年分だった。

(中略)

日本の核燃料サイクル計画は、高速増殖炉を前提にした構想が事故で挫折し、プルサーマル方式が主役となり、総額約19兆円とされる原発の後処理費用の中心を占めている。米ハーバード大などは、低めに見積もってもウラン価格が現在の数十倍に値上がりしてようやく直接処分と経済的に見合うと指摘している。豊富な資源量を示す数字が示された今回の報告書は、日本の計画見直しを促す可能性もある。
(転載おわり)

里屋和彦です。
これは一見インパクトの大きいニュースのようであるが、これまでいわれてきた説明によれば、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウムとウランをリサイクルすることにより、ウラン資源の消費が約25%節約できるとのことであった。
(http://www.kepco.co.jp/plu/6.htmlより)

約25%節約ということから単純に計算すると、100/75=1.33倍であるので、80×1.33=106(年)となり、特段大きく違うわけではない。(このような単純な計算ではないだろうが)要するに高速増殖炉(FBR)でなければ、準国産エネルギーといきり立つほどの節約効果がある訳ではない。

プルサーマルは、あくまで高速増殖炉による本格的な核燃料サイクル事業のイニシャチブ(とっかかりの事業)であるため、そもそも節約効果をそれほど意識しているものではないのである。

次のニュースはプルサーマルに冷や水を浴びせかけられた日本に対して、新しい選択肢ともいえる使用済み燃料の直接処分に誘導するような、タイミングを見計らったさらなる追い討ちである。
電気新聞2004.6.2より転載する。

(転載はじめ)
使用済み燃料「経済性で直接処分が優位」−米教授

原子力委員会が1日開いた「長計についてご意見を聴く会」で、米メリーランド大学のスティーブ・フェッター教授が「使用済み核燃料の再処理リサイクルと直接処分の経済性比較」について研究データをもとに説明した。同教授は再処理した場合、直接処分よりも1割程度コストが高くなると指摘するとともに、ウラン資源はこれから100年は枯渇する心配がないとし、再処理に批判的な見解を示した。これに対し、原子力委員は「日本と米国では、エネルギーセキュリティーの面で事情が異なる。経済性だけで測るのはどうか」などと反論した。(電気新聞2004.6.2)
(転載おわり)

里屋和彦です。
今後、この動きに従って、日本も直接処分のコストの検討がおこなわれていくだろう。
プルサーマルもやめろということであるなら、アメリカが推奨?している使用済核燃料の直接処分か、原子炉を止めるかしかない。



2004/05/18(Tue) No.01

Vol.46 原子力業界の大分裂(8)
下記に引用する日経の記事は、エネルギー学講座vol.45で引用した毎日新聞の内容と同根であるが、日経では、高速増殖炉実用化断念との見出しになっていた。

vol.45の毎日新聞では、全量再処理路線の見直し(全体集合)という広い枠組みでの表現であるが、日経の記事では、その部分集合の一つである「増殖炉の実用化断念」という表現まで踏み込んでいる。この表現は、これまでの政・官・学・産内の原子力村といわれるサークルからはタブーだったといえるものである。

原子力業界の大分裂の連載で報告してきたが、どうやらここにきて一気に使用済み核燃料の再処理路線が後退し、当面貯蔵する方策に軍配があがりつつあるようだ。日本経済新聞 2004.5.11より転載する。

(転載はじめ)
国の原子力委員会は原子力発電所の使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策を抜本的に見直す。

使用済み燃料から取り出したプルトニウムを燃やす高速増殖炉の実用化は当面断念し、通常の原発で使うプルサーマル発電を主軸にする方針だ。現行政策は40年近く堅持してきたが、コスト高や安全性の問題などから転換することになった。(下図参照)

(中略)

このため高速増殖炉の商用化に不可欠な実証炉の建設は見送り、基礎研究重視への切り替えを検討する。もんじゅは核廃棄物処理の国際研究拠点として活用する。(日本経済新聞 2004.5.11より)
(転載おわり)


(日本経済新聞 2004.5.11より)

里屋和彦です。
以前の講座でも言及したが、本来なら、核燃料サイクルは、高速増殖炉を含んだものが本丸を意味していた。しかし、肝心の高速増殖炉が「もんじゅ」の事故により、その開発が頓挫しているため、急場しのぎで核燃料サイクルの中心に祭り上げられているのがプルサーマル方式なのである。

したがって、高速増殖炉を核にすえた燃料サイクルを仮に「核燃料の完全リサイクル」と呼ぶなら、プルサーマル方式はいわば「核燃料の部分リサイクル」でしかない。

それで、この度の「核燃料の完全リサイクル」の当面の断念により、「核燃料の部分リサイクル」のみをまず目指していこうということになったのである。

元々、再処理の考えは高速増殖炉に備えてのものであったので、その原点からすれば、再処理の当面の意義は極めて薄くなる。将来の高速増殖炉用の再処理ですといった言い訳はきかなくなるということである。

従って、今後は六ヶ所村の再処理工場の稼動の是非、そして使用済み核燃料の長期貯蔵の問題が、そしてプルサーマルの抜き差しならぬ推進の施策がさらに一層クローズアップしてくるだろう。

また、日本の意図とは無関係であろうが、結局、電力自由化問題を梃子に、日本の核武装の目(高速増殖炉)はこれでまたひとつ摘まれたことになり、アメリカにとってみればまさに一石二鳥である。

2004/05/13(Thu) No.01

Vol.45 原子力業界の大分裂(7)
これまで、原子力業界の大分裂と称して、核燃料サイクル政策についての深刻な対立について報告してきたが、ここにきて一挙に国の最高レベルにおいて、その政策の見直しを図る動きが出てきた。

最高レベルとは、原子力委員会という組織である。原子力委員会は、組織の位置づけがわかりにくい機関であるが、政・官・業に対して重みのある発言権を有しており、少なくとも国の原子力政策に関してその骨子はこの委員会で決められる(現れてくる)。

その原子力委員会が、これまで長年一貫して堅持されてきた核燃料サイクルの政策の見直しを図る旨表明したことは、大きな驚きである。

実は、エネルギー学講座vol.41において報告したように、"2003年8月5日、原子力委員会は「核燃料サイクルのあり方を考える検討会」の議論をまとめた報告書を発表"し、核燃料サイクル堅持路線を謳ったばかりであった。

事実上の最高意思決定機関ともいうべき原子力委員会が、急速に豹変(方向転換)しだしたから驚きなのである。

しかし、後で考えるなら、これは、前回の講座で報告したように、エネルギー環境合同会議ですでに布石が打たれて、その流れの中での連携プレーであったのだろう。そして以下にあるように重要なシンクタンクもその動きに呼応していた。

以下に、新聞報道を転載する。(毎日新聞 2004年5月5日より)

(転載はじめ)
核燃料サイクル見直し、全量再処理を転換 原子力委
国の原子力委員会(近藤駿介委員長)は、国策として進めてきた核燃料サイクル政策の見直し作業を始めた。原子力発電所から出る使用済み核燃料は全量再処理する、としてきたが、原子力政策の基本を定めた原子力開発利用長期計画の改定の中で、再処理せずに地中に埋める直接処分や中間貯蔵の位置づけについて検討する。再処理で得られたプルトニウムを利用する高速増殖炉開発の停滞や、再処理事業にかかる膨大なコストなどにより行き詰まった政策を、柔軟路線に転換する。

核燃料サイクルは石油などの資源に乏しい日本の国策として、原子力開発の初期から推進されてきた。使用済み核燃料を再処理してプルトニウムやウランを取り出し、高速増殖炉や既存の原発(軽水炉)の燃料として再利用する。計画に基づき、電力業界は青森県六ケ所村に06年7月の操業を目指し、再処理工場を建設している。

しかし、プルトニウム利用の柱とされる高速増殖炉原型炉「もんじゅ」は95年にナトリウム漏れ事故を起こし、今も運転は停止している。現状では、軽水炉でプルトニウムを燃やす「プルサーマル」しか残されていない。さらに、六ケ所村の再処理工場でも水漏れトラブルが起き、操業は遅れるとみられている。

一方、電気事業連合会は、再処理工場操業から廃止までの再処理関連の総事業費を試算。1月に18兆8000億円と公表された。このうち8兆円はどこが負担するのかが決まっていない。電力自由化で競争が激化している電力業界では、再処理事業にかかる費用が経営を圧迫するとの懸念が高まっている。

このため、原子力委員会は巨額な負担を強いる核燃料サイクル政策を進めるには、国民的な合意が必要と判断した。使用済み核燃料を再処理せずに直接、地中に埋める方法の費用を算出し、全量を再処理した場合と比較、検討する。直接処分を選択肢として盛り込むかどうかについては委員の意見が分かれている。再処理実施の是非は先送りして、長期的に保管する中間貯蔵施設建設の案も議論される見通しだ。

また、六ケ所村の再処理工場に続く第2再処理工場の建設については、白紙に戻すことが検討される可能性が高い。

※原子力委員会は長期計画など国の原子力政策の基本方針を決める機関。内閣府に設置されており委員は5人。

長期計画は56年に初めて策定され、ほぼ5年に1度見直されている。原子力委員会は6月に策定会議を発足させて本格的な論議に入り、来年夏ごろまでに改定案をまとめる。【足立旬子】

核燃料サイクル
<解説>電力業界も全量再処理に対し慎重
国の原子力委員会が核燃料サイクル政策を見直す柔軟路線の検討を始めた。電力業界にも使用済み核燃料の全量再処理に対して慎重意見があり、サイクル政策からの段階的な転換の第一歩になる可能性が高い。

00年11月に策定された現行の原子力開発利用長期計画(長計)で、核燃料サイクルは「再処理し回収されるプルトニウム、ウラン等を有効利用していくことを基本とすることは適切」とうたわれている。資源の少ない日本の国策として、核燃料サイクルを推進する姿勢が堅持されてきた。

しかし、世界の高速増殖炉開発は相次ぐトラブルにより停滞した。プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料(MOX燃料)の製造や再処理で発生する高レベル放射性廃棄物の処理などを含めた核燃料サイクル全体の事業費は巨額になることが明確化し、他のエネルギー源に比べた競争力にも疑問が出てきた。安全性と経済性の両面で、核燃料サイクル政策の是非が問われる状況になった。

海外では、フランスが再処理路線を維持する一方、米国は直接処分を選択している。ドイツは脱原発路線を歩んでいる。

電力会社は再処理に備えて、使用済み核燃料を各原発の施設内に保管しているが、保管量は限界に近づいている。全量再処理をするのか、直接処分を容認するのかの路線決定は差し迫った課題であり、来年の長計改定に盛り込む必要がある。

全量再処理と直接処分のコストを公開し、論議することは画期的で、「聖域」と言われた核燃料サイクルを根本から問い直す体制がようやくできたと言える。

原発のトラブル隠しの頻発などにより、原子力政策に対する国民の目はかつてなく厳しい。6月にも発足する長計の策定会議には、サイクル路線の慎重派も含め、多彩なメンバーがそろう見通しだ。論議の進展次第では、全量再処理の見直しだけではなく、より踏み込んだ転換が図られる可能性もある。【足立旬子】
(毎日新聞 2004年5月5日より)
(転載おわり)

里屋和彦です。
この動きは、原子力産業界のシンクタンクとして機能している原子力産業会議にも現れていた。朝日新聞より転載する。(2004年04月23日(金) )

(転載はじめ)
核燃料サイクル政策、見直しへ 「長期貯蔵で対応を」

「原発の使用済み核燃料はすべて再処理する」としてきた国の原子力政策が見直しを迫られることになった。原子力関連企業などでつくる日本原子力産業会議(原産会議)が23日に東京で開いた討論会で、使用済み燃料の長期貯蔵を中心に据えるなど、核燃料サイクル政策の転換を迫る提言が相次いだ。国の原子力委員会が6月から始める原子力開発利用長期計画(原子力長計)の改定作業で、最大の焦点になりそうだ。

討論会は、電力自由化の下での核燃料サイクルの進め方について、話し合った。神田啓治・エネルギー政策研究所所長(京大名誉教授)は、青森県六ケ所村で建設中の使用済み燃料再処理工場で処理する以外は「次世代の資源として長期に保管すべきだ」と提案した。

現在の長計では、六ケ所で処理しきれない分は、将来の再処理を前提に中間貯蔵することになっている。貯蔵期間は40〜60年と想定されている。だが、神田氏は「フランスで最近、長期中間貯蔵として100〜300年が提案されている」と、事実上の半永久貯蔵」を紹介した。

長計改定を前に原子力委の意見聴取にも招かれた山地憲治・東大教授は「プルトニウムを利用するのは経済的にマイナス。全量再処理路線は転換すべきだ。将来の選択肢として(再処理なしに地中に埋める)直接処分も検討する必要がある」と主張した。

東京電力原子力本部の佐竹誠・副本部長は、再処理費用などに関する電気事業連合会の試算結果を説明する中で、六ケ所再処理工場で使用済み燃料6.6万トンのうち3.2万トンを処理、残りは中間貯蔵などで対応するとの前提を明らかにした。

(中略)

しかし、東京電力原子力本部の佐竹誠・副本部長は、今後約40年間に発生する使用済み燃料6.6万トンのうち3.2万トンを六ケ所工場で再処理、残りは中間貯蔵などで対応することを前提にしたコストを明らかにし「長計改定で取り上げられるだろうが、現時点では再処理と貯蔵が半々になるというのが現実的だろう」と話した。

原産会議で、こうした異論が相次ぐのは異例のことだ。本格的な電力自由化が進み、電力業界などが再処理にかかる費用に敏感になってきた表れとみられる。
(転載おわり)

里屋和彦です。
エネルギー学講座vol.40で紹介したように、"核兵器級と原子炉級プルトニウムの相違については、「信頼性、性能面で、原子炉級プルトニウムでは兵器級に比べ劣るが、経験のある兵器設計者であれば、十分信頼性を持つ設計が可能である。"とのことからすると、「軽水炉からの使用済み核燃料の再処理」という言葉に対して、国際社会が条件反射で持つ懸念は拭いきれないものになっている。

今回、米国等からの強い外圧を受けている電力自由化に対応するため、(自由化の進展で体力を削がれてきた)電力会社が、結果的にやむを得ず、(コストのかかる)「再処理路線にブレーキをかける」というこれまた米国が望むような事態になってしまうのは皮肉な流れではある。

しかしそういった深謀は別にしても、今回の全量再処理路線の見直し(これは、とりあえず中間貯蔵、直接処分のオプションを検討するだけのものであるが)によって、少なくともプルサーマルに必要なプルトニウムが足らなくなるのでなく、遠い将来に高速増殖炉が立ち上がったときのプルトニウムが単純に足りなくなるというものでもない。

むしろ、足らないというよりも、仮に六ヶ所村の再処理工場の稼動が遅れても、すでに30トン以上ある日本のプルトニウムの在庫からして、当分の間の余剰は避けられないのである。

核燃料サイクル政策の見直しといっても、その実、他のオプションの検討というだけのことに、ここまでこれだけの大騒動することは、月並みであるが、如何にこれまでの原子力政策が硬直化していたかの証左であろう。

2004/05/02(Sun) No.01

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