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里屋和彦の『エネルギー学講座』



(2003/02)

Vol.36 天然ガスと水素エネルギー
副島先生が新刊「実物経済の復活」で、

石油のあとは、天然ガスと水素エネルギーと喝破された。
(「実物経済の復活」光文社 239頁)

今回、原子力の話を一時中断して、先生の言を受けて水素エネルギーの話を若干したい。

先生の仰るごとく、近年の天然ガスと水素エネルギーへの雪崩を打つような変化に、エネルギー業界に身を置く私にもひしひしと感じる。

特に水素、燃料電池でGoogle検索すれば、数万ヒットする。
水素がこれほどまでに脚光浴びている理由は、燃料電池の実用化がすぐそこまで迫り、その燃料が水素だからである。ブッシュ政権もその観点から「水素エネルギー」に注目しだしている(「実物経済の復活」光文社 240頁)

とりわけ、近年小型でコンパクトな固体高分子形の燃料電池が開発されてからというものの、世界的な大競争時代が現出した。

そして、水素は天然ガスから作るのが現在においては最も効率的であることは証明されている。(このことから、水素は天然で存在するものではなく、他の一次エネルギー(石油など)から作られる二次エネルギーである)

そういったことから、冒頭の副島先生の喝破は、世界のエネルギー業界が向かうベクトルを一言で示したものであり、業界の大きなコンセンサスともいえる。

ただ、大きな問題点が存在する。

それは、燃料電池の信頼性が全くの未知数であることである。

エネルギー学講座vol.13では、水素をいかにつくるかにおいて決定打がなく、いまだに何がデファクトスタンダードになるかは想定できないことがネックになっていることを報告した。

しかし、もっと本質的な点として、燃料電池自体がまだ全く不安定で、故障の確率がはっきりと見定められないのである。

燃料電池をキーワードとして、いろいろなホームページで見てもらえれば分かることであるが、燃料電池は一言でいって極めてデリケートな機器である。

具体的には、燃料電池を基本構成であるセル自体が充分に耐久性が実証されていない。新品時には所定の電圧が取り出せるものの経年変化で、じわじわその電圧は落ちてくる。

現在、使われている燃料電池は、実用化段階のものではなく、すべてまだ実証プロセスの段階であり、普及というにはほど遠い。

普及数Nが、大きな数になったときの故障発生率が懸念されており、あまり大きな数字になると現場からのクレームに耐え切れない。

加えて、セル自体が故障した場合、丸ごと取り替えるより他なく、出張サービスなので修理できる代物ではなく、多大な費用がかかるため、一般の需要家がとても受け入れられない。

このように、燃料電池時代は目の前に来ているのだが、以上のような理由で少なくない確率でしばらく足踏みすることが充分予想されるのである。(以上のことは全くの私見であり、他のどこででも指摘されていないことなのであえて書いた)

vol.13でも書いたが、私自身、燃料電池の開発に斜に構えるつもりはなく、フィーバーに安易に巻き込まれないよう冷静に見極めたいと考えている。

2003/02/28(Fri) No.01

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