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電力vsガスの不毛な対立について続けて書く予定であったが、今般ニュースとなっている東電の隠蔽問題と、自由化、原子力の問題を絡めて少し論じたい。 この東京電力の原子力発電所の点検記録虚偽記載問題は非常に気になる問題である。通産省(当時)への告発者は検査を請け負ったゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社(GEII)に派遣されていた親会社のゼネラル・エレクトリック社(GE)元社員だったというから、謀略の線も考えておかねばならないであろう。 それにしても、下記の責任の取り方の素早さ?の背景は一体何であろうか。 周知のように、電力業界は日本のエスタブリッシュメントの中核を形成している。その中核を一挙に直撃している背景には何らかの報復の線もあり得るであろう。 さらに気になるのは、またもやのプルサーマル計画の延期である。 日本は、プルトニウムの在庫を増やさない方針を1990年代初頭に国際公約しているが、日本全体のプルサーマル計画の度重なる延期は、国際公約を果たすどころか、蹂躙している印象を対外的に与え続けている。 今回の問題で、原子力発電の政策がまたしても大きく頓挫することとなるだろうが、このことは原子力発電を電力自由化論議の枠外に置こうと腐心してきた電力業界に大きなボディーブローになってくるのは必至である。 電力業界が核となった、電力自由化問題の最大のテーマである「発送電分離」についての米国からの強大な圧力をどうにかかわそうとしていた矢先だっただけに、タイミングは奇妙である。 振り返ってみると、今年になって電力自由化論議についての激しい攻防にどうやら、一定の方向性が見えてきていた。 Vol.18 エネルギー産業の自由化(6)で述べたように、電力・ガスの自由化の議論は、自由化の範囲(程度)をどうするかという問題と、自由化のための制度設計(その主な争点は「発送電分離」)をどうするかという二つの問題に別れる。 思い起こせば、日本における「発送電分離」問題は、そもそも細川連立政権からの政争の副産物のようなものであった。東電の平岩相談役は自由党の小沢一郎党首と親しいと言われ、細川連立政権が誕生した際、電力業界は旧新生党に接近した。こうした姿勢に自民党が猛反発して、電力攻略の一環として、1997年初めの佐藤通産相(当時)の「発送電分離」発言につながったと言われている。 そして、Vol.25 エネルギー産業の自由化(13)に報告したように、電力自由化についての、経済産業省 vs. 電力業界の攻防は、電力業界が、経済産業省に対して、肉を切らせて(全面自由化を認めて)、骨を断つ(発送電分離を拒否した)戦略で、電力業界の方に軍配が上がりつつあった。 (再転載はじめ) Vol.24 エネルギー産業の自由化(12)でみてきた、平成13年4月19日に行われた日本エネルギー経済研究所主催の経済産業省と電気事業連合会合同での米国カリフォルニア州電力危機調査報告講演会での両者の攻防は、結果的に電気事業連合会の方に軍配が上がりつつあったのである。 ところが、公正取引委員会による巻き返しが図られた。 (転載はじめ) この奇妙な、かってない権力分散の様相に私自身、何か違和感を感じた。電力自由化問題を論議していた電気事業分科会をはじめとして、相当の議論が積み重なられてきた結果、「発送電分離」は望ましくないという方向で、業界の世論は固まりつつあったのに一体何かあったのだろうかと。 このような状況の中、経産省(長い攻防の末、電力業界と軌を一にした)は、再度メッセージを発した。 (転載はじめ) こういった背景の中で、冒頭の東電問題が炸裂したのである。
2002/07/31(Wed) No.01
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