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(番外編) 石油・天然ガスパイプラインに対する政治的な見方について述べたい。 米国のアフガニスタン攻撃の背景には、米国石油資本ユノカル等のアフガニスタンにおける石油パイプライン利権の頓挫があるとの報道がなされた(噂の真相2001年11月号 30-31頁、北沢洋子氏の報告(http://www.ecolink.sf21npo.gr.jp/jubilee/yoko2.htm) また、チェチェン紛争の影にも、ロシア内部の権力抗争があると囁かれている。 このように巨大紛争の影には、エネルギーの利権があることは、逆にエネルギーの利権がそれだけ政治的に大きなものであるということの証左であろう。 エネルギーの確保について、国家をあげて取り組むことは、国家の根幹の政策である。そのため、国家のそれに対する継続的な営みは、当たり前であることから、何か空気のように感じてしまい、ついつい我々の関心事の対象から外れてしまいがちである。 一般の人のみならずジャーナリスト等にしても、かっての石油ショックのような大きな事件が起きてはじめて、その意味の大きさを知るのがせいぜいであろう。 しかし、エネルギーの確保についての大国の国の鬩ぎあいは、世界の勢力地図の下部構造を規定するものであって、国際政治の背景の解読には必須であることはいうまでもない。 その中心となる覇権国アメリカの力の源泉は、石油メジャーの力であり、軍事力を含めた広い意味でのエネルギーに対する支配力にあるのである。 こういった問題は、数々あるエネルギー問題の中で、エネルギーセキュリティの問題として論ぜられ、常に国のエネルギー政策の最上位に置かれている。 副島隆彦先生もこの点に関連して、昨今のエネルギー情勢を看破されている。 (引用はじめ) ところで、冒頭に述べたアフガニスタンのパイプラインの計画が再び軌道に乗り始めた。ここには、アフガニスタンにおける米国の利権の確立を基に、中央アジア地域の同国の覇権を打ちたてようとするグローバリスト(米国の力によって世界を支配しよう考える人達)の策動が感じられる。 (引用はじめ) 完成すれば周辺のエネルギー供給地図を塗り替えることになるが、隣接の大国ロシアやイランにとっては経済的損失となりかねず、海外資本を再び呼び込めるかも不透明。実現にはなお曲折がありそうだ。 天然ガス埋蔵量世界4位のトルクメニスタンからアフガン南部カンダハルを経由、パキスタンのムルタンに抜けるパイプライン計画は、米国の石油資本などが推進していたが、タリバンと米国との関係悪化で98年に中止された。 しかし、ロシアのプーチン大統領は今年一月、トルクメニスタンに「ガス生産国同盟」を結成を提案するなど、さまざまな手でつなぎとめを図ろうとしており、新計画をめぐる関係国の綱引きが活発化している。 一方、わが国においては、このパイプラインのインフラは極端に貧弱であることから、その整備が議論されているものの、数々の制約から困難なものになっている(この点については、「今日のぼやき」無料版「291」の拙論文をご参照下さい)。注意すべき点は、国際石油資本に翻弄されてのインフラ整備にすべきではないということである(北方海域技術研究会 講演会報告で、その実情を参照して下さい。) ここで、以下、パイプラインの彼我の違いについての基礎的な図・表を掲げる(高圧パイプライン)。米国のそれは今手元にないが、ヨーロッパと同様にインフラ整備は古くからなされている。日本におけるパイプライン網の貧弱さを感じ取って頂きたい。 現在、電力・ガス市場の自由化論議がかまびすしいが、その両方の議論(特にガス事業)の土台の一つとなるパイプライン整備がこの状況では、議論は砂上の楼閣と言わざるを得ない。
2002/04/30(Tue) No.01
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