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エネルギー産業の自由化について(3) ネットワーク型産業における自由化のあるべき姿を描くことは難しく、その進展は、試行錯誤によるほかない。 エネルギー産業の自由化が話題になっている。 平沼経済産業大臣は、家庭用の電気まで小売の自由化を目指していると、かって発言し、物議をかもした。 電気やガスとかのエネルギーという財の自由化は、鉛筆を誰でも自由に売ってよろしいというものと少し訳が違う。 資本家が自由好き勝手に、電力設備、ガス設備を建設しようとすると、競争者を倒そうとして供給過剰になり、結局共倒れとなって消費者に不利益を被る。このことを、過当競争/破滅的競争という。このことは、歴史のレッスンである(らしい)。これは、電力・ガスのようなエネルギー産業のみならず、他のネットワーク型産業(電話、交通)にも当てはまる。よって、これらの産業には、独占を認めたほうがよい。このことを自然独占という(らしい)。学者の言葉で、少し整理すると、 (引用始め) かかったコストを全部、消費者の価格に転嫁する悪名高き?やり方(総括原価方式という)は、上記の考え方を基に、多くの国で採用されていた。 それが1980年代の後半から大きく転換し、電力ビジネスに「市場」を創出し、「競争」を導入する経済学的モデルが登場した。 (引用始め) ようするに既存のネットワークは、独占が認められていたが故に形成されたものである。よって、だれもが、使用料金を払えば第三者でもアクセス(して需要家に送ることを託送という)してもいいじゃないか、そして競争させれば価格は下がるじゃないかという考えである。 余談だが、ディベートで高名な松本道弘氏は、すでにエスタブリッシュしているもの(例えば送電線)を、飛んできて上からおいしいところをいただく(例えば託送)行動パターンを蜂に喩えられ、これはアングロサクソンのやり方であると言われていた。私も、第三者アクセスという考え方で、ネットワーク型産業の自由化が図られるなどとは想像もしなかった。今では、毎日そういう記事を読んでいるので何とも思わないが、よく考えてみると、こんなことをあっさり発明してしまう彼民族の賢さに畏怖してしまう。 閑話休題。このように、電力なら、送電系統が十分に拡充されていること”ということが自由化を開始する条件である。しかし、拡充される前は、総括原価方式あるいはもどきでも何でもやらないと、冒頭に述べた破滅的競争の歴史のレッスンがあるがために、膨大な投資をしようという動機(インセンティブ)が働かない。このことは、現在行われている自由化論議においても焦点の一つである。この点において、経済産業省の石油審議会が、昨年12月13日に自由化の最先進国である英国の王立国際問題研究所にガス事業の自由化についてヒアリングを行っている。 (引用はじめ) 一方、コスト回収というリスクの存在のため、リスクヘッジとして前回vol.14で紹介した金融技術が発達してきたのも事実である。 細かい話は除くと、ネットワーク型産業の自由化というのは、自然独占が前提であった考え方を補正しつつあるもので、発展途上である。よって、現在のところ試行錯誤で進むしかない。この意味では、自由化に反対している人は業界にも少ない。しかし、その程度に関する将来の見通しについては選択肢がある(下記の経済産業省HPの引用中の4.法律改正(規制緩和)にあたり想定される選択肢 参照)。 この自由化の制度設計のため、日本では業界の命運を決する審議会が立て続けに開かれており、喧々諤々の議論がなされている。ひとことでいって、現在のところ、誰も何が正しいのか解らない。自由化のために、どのような制度設計が望ましいかが見えない状態である(次稿以降、議論の内容を紹介していく)。 理論的な話は、とりあえずおき、具体的に、電力・ガス産業の自由化の現状および今後の展望は下記である(経済産業省のホームページより引用)。 ポイントは小売りの自由化という考えで、誰でも自由に(電力・ガス会社以外でも)電気・ガスを売って良いということで、小売の範囲は少しずつ拡充されつつある。小売のイメージを下記に示す。 (朝日新聞 2000.2.19)
電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律について 1.法律名 電気事業法及びガス事業法の一部を改正する法律 2.法律改正(規制緩和)の内容 @電気事業における小売の部分自由化の導入 Aガス事業における大口自由化の一層の促進 3.法律改正(規制緩和)にあたり想定される選択肢 (つづく)
2001/06/30(Sat) No.01
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