To Heart SS マルチの話(結婚後編)            ものがたり                              くのうなおき  ある日、男の子が、一人の女の子と出会いました。女の子はとてもおっちょこちょ いで、あわてんぼうで、泣き虫でした。だけどとっても頑張りやさんで、優しい子で した。彼女は実はロボットでした、後に生まれるはずの彼女の妹達のためにいろ いろな事を知ってもらうために、男の子のいる学校にお勉強に来たのです。  だけど、女の子は人間に負けないくらい、あたたかく、優しいこころをもっていま した。男の子は、女の子と出会ってから、いつも女の子と一緒に掃除をしたり、遊 んだりしました、そしてだんだんと彼女を好きになってゆきました。  男の子は普段はぶっきらぼうで、なかなか人に素直に優しくしてあげられない 子でした。だけど、何故かロボットの女の子には素直に優しくしてあげることができ たのです。そして女の子も自分にとっても優しくしてくれる、その男の子が大好きに なりました。  だけど、二人にお別れのときがやってきたのです、学校でのお勉強が終った彼女 は、やがて生まれてくるたくさんの妹たちにいろいろなことを教えてあげるために ずっとずっと眠りにつかなければならなかったのです、それは、もう男の子とは二度と 会えないということでした。  男の子も女の子も、とても悲しかったのです。でも、女の子は泣きたいのを我慢して 一生懸命笑って、男の子に言いました。  「わたしは、あなたと出会えて、とっても幸せな日々を過ごすことができました。 この幸せな気持ちをわたしの妹達に伝えたいんです。」  そう言った女の子に、男の子は  「君の妹が生まれたら必ず幸せにするよ。」  と約束しました。  女の子は  「私のように、幸せにしてあげてください。」  とお願いしました。  そして、いよいよ別れる時に、女の子は今まで見たことのないくらい、とっても 素敵な笑顔で  「あなたがとっても大好きでした!!」  と言いました。  男の子は、その笑顔を、絶対に忘れない様に心に焼き付けました。  ○       ○        ○        ○         ○         ○  拭っても拭ってもあふれる涙は、見上げた空をにじませつづけた。しかし、浩之の 心の片隅に無理矢理押し込んでいる想いは、猛烈な勢いで、涙以上のものを浩之 から出させようとしていた。その流れ出ようとする想いを辛うじて塞き止めているの は、あの別れ際のマルチの笑顔だった。  『泣いちゃいけねー・・・、泣いちゃいけねえんだ・・・・・。』  浩之はそう、何度も何度も自分に言い聞かせていた。ここで泣いてしまってはいけなか った。別れ際のマルチの見せた最高の笑顔がまた、空に見えた。別れの悲しみ、辛さ を懸命に押さえ込んで見せてくれた、最高の笑顔・・・・・・・。  「マルチは泣かなかったんだ・・・、オレだって、泣いちゃあいけねーんだ・・・・。」    『大好きでした・・・・・・・!』  浩之の脳裏にまた、別れ際のマルチの言葉が響いた。  「オレだって、大好きだったさ・・・・。」  それは男と女の間の「好き」ではなく、といって友情の「好き」ともいえない「好き」 だった。マルチにしても浩之と似たような「好き」だったかのかもしれない。  しかし、二人はお互いを本当に「好き」だった、大好きだった。  また、悲しみが一層こみ上げてきた。想いがあればあるほど悲しみは一層に つのっていった。   『浩之さん・・・・・』  涙にじむ目で、見上げる空に、マルチの幻影だけはくっきりと映って、浩之に笑みを見せていた。    『浩之さん・・・・・』  『泣いても・・・いいんですよ・・・。』  そう語り掛けるマルチの笑顔は、見たことのない、慈しむような笑顔だった。まるで 浩之の悲しみをすべて受け入れるような笑顔だった。  『辛い時、悲しい時は思いっきり泣いたっていいって・・・・、いつか、浩之さんが 言ってくれたじゃないですか、だから浩之さんだって、思いっきり泣いていいんですよ・・・。』  浩之の両目からは、ぼろぼろと涙がこぼれだしていた。しかし、もうそれを拭おうとはしなか った。  「ごめんな・・・、マルチ、オレもう・・・」  マルチは微笑んでいた。もう、浩之は気持ちを押さえ付けることができなかった。    「うぐ・・・・、ぐうっ・・・・・ひぐっ・・・ぐぐううう・・・・・・・・・・」  肩を震わせ、浩之は嗚咽しだした。ありったけの想いを吐き出す様に、嗚咽は続いた。  『もう、泣かないから・・・お前のいない寂しさ、辛さも耐えて行くから・・・・、だから ・・・、だから・・・・・・今は・・・・・・・。』  屋上にいるのは、浩之ただ一人だった、まるで、誰もが浩之の邪魔をしないようにして いるかのようだった。屋上には、ただただ、浩之の嗚咽のみがいつまでも聞こえていた。   ○       ○        ○        ○         ○         ○  女の子と別れたあと、男の子は彼女を想って泣きました。彼女がそばにいた日々を思うと悲しい 思いがあふれてきました。それでも、男の子はその悲しさに耐えました、なぜなら、女の子と出会 い、一緒に過ごした日々は悲しい思い出ではなかったからです。女の子がそばにいてくれない事 はとっても、辛いし、悲しいのです、でもそれは女の子と一緒にいた時がとっても楽しく、幸せだった からなのです。  男の子は女の子との幸せな思い出を、消してしまわないように、辛くても忘れることはありません でした、そして、自分にとって大切な人達に優しくなりました。別れの悲しみが、自分のそばにいて る人達の大切さを気付かせたのです。  悲しい事は、悲しいままで終わるわけではないのです、悲しさから、新しく幸せが生まれる時も あるのです。それは、悲しい事を知った人が、悲しい思いを他の人にさせない、と思うからなんです ・・・・・。    「う・・・ん・・・・・・・・・」  マルチの声に、あかりは話を中断して、膝の上に眠るマルチを見た。どうやら寝言のようだった、メンテ パソコンの表示は、まだ充電中だった。  窓から入り込む日差しも、暖かく柔らかい昼過ぎの一時、いつからかあかりは、マルチを、充電の眠りに つく際、自分の膝の上に寝かせるようになった。マルチも最初は照れてはいたが、最近ではすっかりあかり の膝の上がお気に入りになったようだった。ここに浩之が加われば、何物にも換え難い幸せな空間ができる のだが、仕事があるのでは仕方が無いというところか。  ぽんぽんとお腹のなかで軽く叩かれたような感じがした、「あらあら、急かされちゃったみたいね」あかりは 微笑むとマルチの髪を梳くように撫でながら、再び、マルチとお腹の中の浩之との愛の結晶に語り掛けはじめた。    その後、女の子の妹達がいっぱい生まれました。だけど、男の子のもとには、あの女の子が帰ってきたのです、 それは、悲しみを耐えて、優しさを忘れることなく、身近な人達を幸せにしようと頑張った男の子への、神様の 贈り物でした。  もし、幸せな日々が突然消えてしまっても、悲しむのあまり、すべてを無かったことにはしないで。幸せ があったからこそ悲しい、ということを忘れないで。そうすれば、きっとまた新しい幸せを作り出せると思う から・・・・・・・・・・・。                                         終  後書き  「マルチin了承」ほったらかして何を書いてるんでしょうね、私は・・・・。 いえ、決してここ最近チャットで「煩悩大明神」「えろえろ野郎」とか身に覚え の無い事を言われているから、ここで一丁、汚名返上といくか!、なんて気持ち でかいたわけじゃあないんですよ。悲しみから立ち直ろうとする浩之の話を書 こうとしただけです。え?全然そうは読めん?  ・・・・・・それはひとえに私の未熟故のものであります(汗)  え~~今回から「結婚後編」「結婚前編」「四人家族編」と分けることに致しました。 これからも、私のきまぐれで時間が前後してしまうので、こうした方が混乱しないだ ろうと考えての事です。  ・・・・もっとも、そこまで読んでくれる人がどれだけいるかが問題ですが・・・。  さて、「マルチin了承」を書かなくちゃ
 ☆ コメント ☆ セリオ:「ううっ。ぐすっ。良いお話でしたぁ」(;;) 綾香 :「……くすん」(;;) セリオ:「感動の嵐ですぅ~」(;;) 綾香 :「……くすん」(;;) セリオ:「悲しみは、忘れてはいけないんですね」(;;) 綾香 :「そうね。その通りだわ」(;;) セリオ:「私も、悲しさを忘れずに生きていきます」(;;) 綾香 :「うんうん。      ところで、セリオにも忘れられないほどの悲しい思い出ってあるの?」(;;) セリオ:「もちろんです。中でも一番悲しかったのは……」(;;) 綾香 :「悲しかったのは?」(;;) セリオ:「……プレミア物のヒーローフィギュアが売り切れていたことでしょうか」(;;) 綾香 :「……………………おい」(--; セリオ:「あれはホントに悲しかったですぅ~~~」(;;) 綾香 :「そんなのを真面目に聞いてしまったあたしの方がよっぽど悲しいわい」(--;



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