後編 永遠と邂逅
目が覚めたとき、見えたのは白い天井だった。
「せっ、先生!意識が戻りました!」
近くから声が聞こえる。聞き覚えの有るような無いような、そんな声だった。
「大丈夫かね?」
のぞき込んでくる人がいる。確かな見覚えがある。間違い無い。僕の担当医の先生だ。そこで僕は、自分の置かれている状況にやっと気付いた。それと共に記憶がよみがえってくる。そう、ここは、
「病院、か・・・」
そうだ。倒れたんだったな、僕は。
「まさか意識が戻るなんてな。一時は心臓も停止したのに、まったく、奇跡としか言いようが無い」
どうやらそうとうマズイ状況だったみたいだ。まあ、僕自身ももう死ぬと思っていたぐらいだし、本当に奇跡でもおきたのかもしれない。
そこで僕は、ふとあることに気付いた。
(姉さんが、いない?)
この部屋は立ち入り禁止なのだろうか?
(聞いてみるしか・・・ないよね)
何か嫌な予感がしたが、かまわず僕は尋ねた。
「先生、姉さんは何処にいるんですか?」
僕の言葉に、先生は驚き、
「姉さん?姉がいるのかね?」
と言った。
「えっ!?」
変だった。先生が姉さんを知らないはずが無い。僕が子供の時からずっと知っているはずだ。もう少し詳しく聞こうと思った途端、全身に激痛が走る。
「っ!!」
「あ!無理しちゃいけない。危篤状態は脱したといっても、まだまだ危険であることには変わり無いのだから」
先生が僕をなだめつつ言う。
(僕は、まだ苦しまなくちゃいけないのか?)
そんな思いが頭を過る。
「先生!急患です!」
「何!!分かった、すぐ行く。氷上君。悪いが、話はまた後で、な」
先生と看護婦さんは急いで出ていった。
部屋には僕だけが取り残されている。僕の思いは止まること無く、どんどんあふれてきた。そんな世界で、僕は言葉を口にした。
「僕はなんで生きてるのかな?僕が生きていると、必ず誰かに迷惑がかかる。もう…嫌だな」
それでも僕は生きないといけない。生きることを望まれたから。でも、現実はつらい。
「もう一つ、世界が存在すればいいのに・・・」
そしてその世界に僕だけが存在する。僕の周りに人がいなければ、誰も苦しまない。
僕だけでいい。僕だけが、ずっとその世界で過ごすのだ。
やがて世界は、僕と共に滅びる。・・・僕の意思で。
「訪れる時間も、過ぎていく時間も無い。そんな永遠の世界に在りたい。そうすれば誰にも迷惑をかけず、満足できるまで生きれるのに・・・」
つぶやいた言葉。それは答えを期待した言葉じゃなかった。
いつものように、言った事さえ忘れて、そして消えていく言葉だと思っていた。
いや、そんな意識すらなかった。けど、その時僕は・・・・・・『永遠』を知った。
それは記憶だ。場所はどこかの屋上。そして僕の前で、姉さんが泣いている。
「永遠はあるよ」
それは僕の言葉。
「ここにあるよ」
姉さんが顔を上げる。
「僕は、ずっといっしょにいられる」
そして笑ってくれた。盟約が交わされる。世界は姉さんを受け入れた。
僕は今、姉さんといる。これからもずっとずっと一緒にいられる。ここはそういう世界だから。
そう・・・・ずっと・・・・ずっと・・・・二人で・・・・。
混乱は少なかった。なぜなら、すぐに情報が頭に入ってきたからだ。彼の―――『氷上シュン』の知識が。
(そうだったのか・・・)
これで姉さんのことを、先生が知らなかったのも頷ける。姉さんは、この世に存在してなかった事になっていたのだ。永遠の世界に行くことによって。
永遠の世界についても理解した。例えば、それが誰にでも訪れる世界であること。強い絆によって、その世界を終わらせることも可能だということ。そして本人がその世界を理解した時、盟約が実行されること。
(どうやら僕は、永遠を意識することによって、もう一人の僕とシンクロしたみたいだな)
そしてその結果、貴重な情報を手に入れた。
(もっとも、誰の役にも立たないけどね)
永遠の世界を知らない人に言えば、それは単なる妄想狂だし、逆にこれから知る人に言えば、それを急かしてしまうことになる。
(でも、アドバイスくらいは出来るかもしれないな)
これから消えていく人に、『君は絆を求めるべきなんだ』って。
危篤状態から脱出して、一ヶ月が経っていた。僕は驚くほど回復が早かったらしく、先生はアメリカに行く事を進めた。あっちの国で数年間治療を続ければ、治る可能性もあるらしい。けれど、僕はそれを断った。そこまでして生きようと思うほど、僕はこの世界が好きじゃない・・・。
その後は何とか退院し、たまにだけど学校にも行くようになった。
そんな過ぎていく日々の中、事件が起こった。
担任が交通事故で死んだ。
どうにも人気のある人だったらしく、生徒は大泣きで、葬儀も大きかった。
そんな中、僕は一人、気になる存在を見つけた。
特に泣いていた男子生徒。僕は彼に好奇心を煽られた。
彼は僕と同じ目になったのだ。すなわち、永遠の世界に身を置く物に・・・。
それから、僕は彼のことを調べ始めた。そして彼の名前や、幼馴染に髪の長い女子生徒と、変わった性格の女子生徒がいることを知った。ついでに言えば、髪の長い女子生徒が、彼のことを好いているのも分かった。
そして僕は彼に言った。
『君は今、異性問題に関して悩むべき立場にある。君は、絆を求めなくてはいけない』と。
その他にも色々と話してしまった。結果として、僕は彼を急かしてしまったらしい。彼は、クラスのみんなや、いろいろな人に忘れられていった。ただ一人、髪の長い女子生徒を除いて。
彼女は彼を繋ぎ止めようとしていた。けれど、彼の存在はどんどん薄くなっていった。
やがて、彼は学校に来ることも無くなった。当然だ。彼はこの世界には、存在していない人間なのだから。
学校に来ないのは、彼女も同じだった。消え行く彼を、必死で繋ぎ止めようとしているのだろう。
(でも無駄だろうな。彼は残ることを望んでいない)
そして雨の日、彼は・・・消えた。
(あの女子生徒は探すだろう。自分以外の彼を知っている存在を)
そんな時、発作が来た。僕は、再び入院した。
やがて、高校受験の時期がやってきた。僕は自分の家に近い高校を受験した。結果は合格。先生達は心配していたけど、もともと勉強は出来る方だったし、どうせ死ぬなら普通の日々を送りたかった。
部活を決める日。僕は軽音楽部に入部した。
部員数は多かった。そんな中で、僕は一人の男子生徒に興味を持った。
(僕と、同じ目だ)
名前は折原浩平というらしい。僕は彼に好奇心を煽られた。
どうやら、彼が永遠を望んだのはずっと昔だ。だが、彼は未だ永遠の世界にいく兆しも無い。
(急かしてはいけない)
僕は自分にそう言い聞かせた。けれど、どの道僕は、しばらくすると学校へ行けなくなった。
1998年冬。
ついに、彼にも兆しが現れはじめた。
僕はたまに学校へ行き、誰もいない部室で、彼を待つようになった。
僕から接触してはいけない。
12月1日。
部室で待っていれば、彼が来る気がした。
けれどそれは、単なる予感でしかなかった。
放課後。
(もうすぐ、折原君はここに来る)
予感は確信に変わっていた。
(後10歩だ)
そんなことまで分かってしまう。僕は、誰よりも深く永遠を理解した。そのことを改めて思い知る。
(後5歩)
僕の思いは・・・届くのだろうか?
(4歩)
僕は、彼に好意を持っている。
(3歩)
なぜだろう?一度しか会っていないのに。
(2歩)
答えは多分、彼に会えばわかる。
(1歩)
そして今、変則的な邂逅は始まる…。
「やぁ」
あとがき
ふう。終わった終わった。
とにかく、謎の男氷上シュンの謎を解明すべく書いた、この永遠の存在、いかがだったでしょうか?
いやー、ホントはもっとコンパクトにするはずだったんですが、書いてるうちにボリュームが出ちゃいましたね。下手のくせにそんな事するからもう大変で・・・特に三人称のとこなんか激やばっす。(一人称で氷上の性格が変わってるのには、目をつむって下さい)
中学の話なんか全然考えてなかったんですが、やっぱり書いてるうちに急に思いついていれました。あえて名前は伏せましたけどね。
それにしても二次小説だというのに、本編のキャラがあまり出てこない。ま、プレ編という事で。
しかしまじめな内容になっちゃいました。まあ、ボキャブラリーの少ない僕が書くと、こうなっちゃうんですね。
一応、もっと(氷上が消える時まで)書こうかなーとも考えましたが、断念しました。
ネタも考えたんですけどね。音楽の話では、この世界から消えると言うことに関しては同じとか。『ほんとうなら、もっと早く僕達は友達になっておくべきだったね。実際、それで僕達は互いを救うような結果になっていたかもしれない』というセリフは、恭子が消えた後、氷上にもっと生きようという意思があれば、治すことも可能だったとか。しかしホントに時間が無いので。
しかし、暗い。でも、このテーマで明るく書ける人はいるのでしょうか?
それにしても、今日00/06/11(日)は僕の誕生日。(すみません、いろんなところに書いてます)STEVENさんのところにも、Kanonの小説押し付けたし、僕もがんばってるなー。
そろそろ書くことないんで、切り上げにします。試験勉強せねば。
それでは。
えっと…………『ONE』をPLAYした人なら、理解できるでしょう(^ ^;
私は…………あは、あはは、あははははははは……はぁ。
>そして雨の日、彼は・・・消えた。
この『彼』っていうの、浩平かと思ってました。
違うんですねぇ(^ ^;
>「やぁ」
これって、実際にゲームに出てくるセリフなんですか?
……って、それすらも知らない奴(--;
ちなみに、私は「やぁ」と聞くと、『究極超人○~る』を思い出すんですけど……。
マイナーネタでごめんなさい(^ ^;;;;;
DILMさん、ありがとうございました\(>w<)/