「ねえ、祐一、今日も………ね」
「ん………名雪も好きだなあ」
まあ、俺も相当好きだが。
「うぐぅ、あの楽しみを私に教えたのは祐一なんだよ」
「楽しみ言うな」
「二人とも………何の話しをしてるんです?」
顔を赤くしている秋子さん。
「ほら誤解された」
(うぐぅ、誤解じゃないでしょ)
(ゴメンなさい僕が悪かったです名雪さんちょっとだけだまってて下さらない事?)←混乱中。
俺達は声を揃え答える。「ワグナリアに行きたいなって言うお話」
………あ、お財布覗いてるよ秋子さん。
(よしごまかせた)安心する祐一「了承」
むう、時間が結構かかったぞ、名雪、イチゴサンデー我慢しておけよ。
(厳しいな祐一)
二個で。
(甘いな!)
ワグナリアへようこそ2nd(阿黒さんごめんなさい)
ワグナリアで怒る客って言うのは、結構な日常茶飯事で。
俺達はそんな客の様子を見るのが楽しみで、ここに通うわけだが。
今日は違っていた。
俺より少し年上の男女。
後で分かる事になるがその兄妹の妹さんの方の顔を見たとき、俺には分かってしまった。
何時もの様子で接客するあいつら、止めろ、お前には判らないのか?
彼女にはもう、時間が残されていない事が。
怒る兄。
それに対して誰かが言う。
通い詰めるとね、何故かはまるんだよ、ここは。
そうだな、普通の人ならそれを楽しんでもいいかもしれない。
だけど、彼女は時間が無いんだ。
あの子と同じだ。
嗚呼もし、あの時奇跡が起きなければ…。
「俺達には時間が無いんだよ!」
ただ一度の外泊許可の為に、医師が、看護婦が、栄養士他、周りが、なにより妹が。
どれだけ頑張った事か。
運命に想いを馳せる客たち。
ワグナリアはしんとして声も無い。
名雪も、俺も。
特に、俺は。
兄の悲しみが分かってしまうから。
死に別れの切なさを。
もし、あの時奇跡が起き無ければ。
俺もあの悲しみの中に叩き込まれた筈だから。
名雪が流す涙は、見たく無いから俺は。
また。
秋子さんにたよる。
何とか………ならない?
奇跡なんて…………そんなにごろごろと起きるものでも、起こすものでもないけど。
それでも。
俺はまた秋子さんに頼る。
「私には………人の生死は操れませんよ………」
「まだ」
「まだ?」
(何時か操る気ですか?秋子さん)
生死を操れるのは。
上級魔族。
「そうかルミラさんなら………!」
「呼んだ?」
「って、なんですかその恰好?」
「バイト、皿洗いの」
エプロンとゴム手袋が似合う魔族って一体(汗?)
「そして何時の日か、デュラル家の再興を!」握りこぶしを作るルミラ。
頑張って下さいと言う周りの人達。
一体デュラル家って何?とか何時までかかるやらと言うツッコミは言わない。
皆さん大人なようだ。
さて、身支度を整えて、兄の前に立ち、右手を兄の顎にかける。
「あなたの妹さんの命、私なら救えるかもしれない…、でもそれには対価が必要…わかるわね?」
「な…ルミラさん?」
俺は思わず叫ぶが、秋子さんにとめられる。
兄が、答えたから、迷いもせずに。
「なんでもする、何でも上げるから助けてくれないか、俺の大事な妹を!」
「いい子ね………私が求めるのは、若い男の子のどうて…いった~い!!」
流石に秋子さんの突っ込みが入る。
と、言うか。
兄の顔色が変わっている。
「もうどうて○ぢゃないみたいね」
肩をすくめるルミラ。
「お兄ちゃん………」
妹の目がすこし怖い。
「いいわ、あなたの血少し貰うわよ、命に別状のない程度にね」
首筋にその牙を寄せて、血を吸うルミラ。
その血に含まれたオドが。
その心に含まれた愛情が。
妹に注ぎ込まれていった。
これは奇跡などではなく。
魔力に対する報酬だから。
兄妹は特に何かを失うこともなく、妹の健康を手に入れることが出来た。
周りの人たちに祝福される二人を見ながら俺はちらりと思った。
『あの時、俺にもしあのような力があったら、あいつを苦しめるようなことも………』
だが、次の瞬間、頭を振ってその考えを振り払う。
『俺は、俺だ』
『過去は変えられない』
『人間以上の力は持てない』
それでも。
『俺はこれからも、人として精一杯、愛するものを守り生き続ける』
そして俺は、名雪の手を握り締め、歩き始めた。
あとがき
兄妹は D.Oと言う会社の 加奈~いもうと と言うゲームからとってきました。
そしてワグナリアについては阿黒さんごめんなさい。
オド 誰か書いてなかったっけ?
名雪、秋子、祐一 ごめんなさいこの3人初書きなんで台詞回しおかしいかも(大汗)。