桜fight97 一章
抜けるような青い空 流れる白い雲 そして、目の前に広がる大海原…って、ここ、どこ?
「ん、どうした大神ぃ?変な顔して?」
「…あんた誰?」
こけけけけっ!
まるでどこかのギャグキャラのようにこける男、なかなかの二枚目なのにサービス精神が旺盛らしい。
「そ、その冗談は面白くないぞ大神ぃ」
と、男が言う。
そうか、俺は大神っていうのか~…って、全っ然判らんっ!
「ここは…どこら辺だっけ?」
「ん?ここはインド洋、宇宙戦艦なでしk…げふげふっ!超秘匿戦艦まほろばに決まってるじゃないか」
(どどーん)なぜにバックに波が出る…。
「そして俺がお前のハニィ加山雄一に決まっているじゃあないかぁ」
(どかーん)おいこら、今度は雷かよ…。
一々芝居がかった奴め、つか、ハニィ止めれ。
俺がさらに質問を重ねようとした時。
俺の慣れ親しんだ音が。
すなわち。
破壊音、叫び声、血の匂い、が漂ってきた。
「加山、行くぞ」
俺は、手近にあったデッキブラシを手に持つと其処に向かって駆け出して行った。
彼は何も言わないが、後ろから付いて来ているのが判る、その距離感、その信頼感。
さて、戦場にたどり着いた俺は、「ぶっとぶなよっ」
(どかっ!)
挨拶代わりにデッキブラシで頭を一発殴り、離脱する。
「ラルヴァ?」
俺の口から謎の単語が漏れる。
俺のモップでダメージを受けてうずくまっている怪物、そいつは。
「降魔の新種?」
いつの間にか俺の隣に来ていた加山がつぶやいた。
…そうだ、あいつは降魔なんだ、何を言ってるんだ俺は。
降魔以外の何者でもないじゃないか。
「大神っ!」
少しぼーっとした俺に向かって降魔の爪が伸びた。
モップで弾こうとするが、あっさり折れて俺の頭に爪が当たる。
派手に血が吹き出るが、骨で止まって大したダメージは無い。
「大神~ぃっ?」
その爪は次に加山を狙う、が「やらせないっ!」
俺の体から何かが飛び出して、加山の盾になった。
ぴん・ぴろりろりろりん♪と、間抜けな音が(なぜか)鳴り。
「大神、やはり俺の事が…」という台詞には。
聞こえなかった振りをする(笑)
「大神、こいつを使え」
誰かが投げてくれた日本刀を受け取った俺は鞘を払う。
日本刀?
体に馴染んだ武器。
(何これ?武器?)
???
なんだ今の感触は?
だが俺は一瞬で気を取り直し、降魔にその刃を叩き付ける。
「狼虎滅却!無双天威!」
(なんだ?なんで俺は、こんな技を使えるんだ?)
自分で使っておきながら、そんなことを思う。
敵が滅びた瞬間、力を使い果たした上に、どくどくと吹き出す頭の血により貧血を起こす俺。
「大神ぃ、霊子甲冑もなしに、無茶を~っ!」
と、加山の言う声を聞きながら俺は気を失った。
「…で、ここ5、6年のことを殆ど忘れちまった、ってえ訳だな、大神よ」
「はぁ、どうもそういうことみたいです」
俺は困った顔をしている。
目の前の男の人も困った顔をしている。
「どうしますか?米田中将?」
加山がほとんど喋ってくれたので、俺は楽だ。
「とりあえず会ってみるか?お前の大切な隊員たちに、な…あああっ?」
「大神さん!隊長!少尉さん!隊長はん!大神隊長!お兄ちゃん!」
いつの間にか岸に着いていた屋形船。
5人分の声と共に少女たちが一気に流れ込んできた。
皆が俺に視線を向ける中、米田中将が一番下で潰れていた。
(哀れ)